プチ小説「名曲の名盤 ベートーヴェンの交響曲編」

「今日は、ベートーヴェンの交響曲ということで、9つの交響曲のたくさんのレコードを取り扱わないといけませんね」
「それはそうなんやけど、紙面も限られるし、船場はんを源流とするわれわれの知識では限られとる。第1番ちゅ-たらどんなんやったかなと考えてみても、どの楽章のテーマも思い浮かばんし、名盤の本をめくって敢えて名盤を探さんでもええんとちゃう。わしの場合、同じことが、第4番、第8番にも言える」
「では、第2番は違うのですか」
「クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団は名盤の誉れが高いし、わしもこのレコードは大好きやな。このレコードは趣向が凝らしてあるからええんやで」
「趣向と言いますと」
「おまけがええというか。〇ルビーのプロ野球選手カードつきのポテチみたいな魅力があるんやで」
「ポテチのような魅力ですか」
「いや、プロ野球選手カードが付いとるという感じや。わかりやすく言うと、ペーター・マーク指揮ロンドン交響楽団のメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」のようやちゅーことになるかな」
「なるほど、そう言えば、そのレコードは、序曲「フィンガルの洞窟」がカップリングされていて、交響曲「スコットランド」の前にしっとりしたこの曲が流れて、自然な感じで交響曲へと移行していく、ひとつの完成された曲のように。そう言うことですね」
「その通りや。クレンペラー指揮のベートーヴェンの交響曲第2番は交響曲の後にバレエ音楽「プロメテウスの創造物」という曲が入っていて、これが実にうまく行っとる」
「そうだ、交響曲第5番にもそんなのがありますよ。フルトヴェングラーの交響曲第5番「運命」のレコードに...」
「田中はんもそう思うか。「エグモント」序曲は、「運命」で高揚した感情を和らげて(鎮静させて)くれるようで1947年盤(グラモフォン盤)は丁度ええ。EMI盤はちょっと物足らん」
「他の交響曲はどうですか」
「フルトヴェングラーはベートーヴェンの音楽にいろんな加工(自分なりの解釈)を加えているから、好き嫌いが別れるところやが、わしは澄ました感じで演奏しているEMI盤のフルトヴェングラーより、ウラニアのエロイカ、ユニコーン盤の第7番なんかの方が好きやな」
「となると鼻田さんは、3、5、7はフルトヴェングラーということになりますか」
「そうやなー、第3番は、EMI盤もなかなかええよ。第9番はやっぱり歴史的名演と言われるフルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団他のEMI盤しかないやろ」
「残るところは、第6番「田園」になりますが」
「いや、もう少ししゃべらせて。3、5、7、9は、フルトヴェングラーばっかり聴いてきた。ほんでなー、最近、それがええもんかと思うようになったんや。テンポを自在に変えて、ティンパニーを矢鱈激しく打ち鳴らし、締め付けるような弦楽器で感情を高ぶらせる。マニアックなファンにはええのかもしれんけど、それはフツーの演奏から遠く離れているんやないかと思うようになったんや。カラヤンとベームをいつかじっくり聴いてみたいなぁ」
「フルトヴェングラー・ファンの方はきっとそこがええんやと言われるでしょう。第6番はどうでしょう」
「「田園」はひとつだけ、どうしても手に入れたいアナログレコードがある」
「ワルターとかベームですか」
「いや、それはずっと昔に買うとる。実は、FMラジオで聴いた、アンドレ・クリュイタンス指揮ベルリン・フィルの「田園」の音の広がりが忘れられへん。それで何とかオリジナル盤がほしいと思っとるんやがなかなか入手できん」
「フランス音楽が得意な指揮者の「田園」というのは面白そうですね。全集はどうですか」
「仮に全集を買うて、全部聞くとしたら、6時間以上かかるから、一日がかりや。それよりか、ターゲットを絞って聴いた方がええと思うわ」
「そうですよね、疲れてしまってその後放心状態になるかもしれませんね」
「まあ、ベートーヴェンの交響曲全曲を身入れて聴いたらそうなるかもしれんな」