プチ小説「名曲の名盤 ヴェルディの歌劇編」

「わしも船場はんと同じでオペラのCDを買うようになって、10年も経っとらん。そやから、偉そうなことは言えん。さっき予習で、インターネットを見てたら、ヴェルディの3大オペラは、「椿姫」と「アイーダ」と「マクベス」やと書いとった。「アイーダ」と「ドン・カルロ」と「仮面舞踏会」というのもあるし...」
「そうですね、ぼくはヴェルディの3大オペラで思い浮かぶのは、「椿姫」「トロヴァトーレ」「リゴレット」でしょうか。特にこれと言ったものがなくて、愛好家がああでもないこうでもないと考えて、意見を披露し合えばいいんじゃないでしょうか」
「それでも基準があった方がいいんじゃないかな」
「とにかくヴェルディは素晴らしい歌劇をたくさん作曲しています。思いつくだけ言うと、「椿姫」「トロヴァトーレ」「ドン・カルロ」「アイーダ」「リゴレット」「仮面舞踏会」「シモン・ボッカネグラ」「ナブッコ」「ファルスタッフ」なんかがあります。「オテロ」「マクベス」「運命の力」「シチリア島の夕べの祈り」「十字軍のロンバルディア人」はまだ聴いたことがありませんが、名曲だと言われています」
「まあ、ここはお互い無理をせずに、知っていることを話そう」
「そうですね、力量不足は申し訳ないのですが」
「まずは、ここでまず実際のところはあまり聞いていないのをお断りしようか」
「まずは、「ナブッコ」ですね、DVDを通して1回見ただけですから。有名な合唱曲「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」というのが、どんな場面でどんな風に歌われているのが知りたくて、大枚はたいて購入したDVDを1回だけ聴いたのですから」
「そうだった。それからクラウディオ・アバド指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団の名前に惹かれて購入したが、2、3回しか聞いていないのがあるね」
「ええ、それは「アイーダ」「仮面舞踏会」「シモン・ボッカネグラ」ですね。「ファルスタッフ」もヴェルディ晩年の名曲なんて書かれてあるのを見てジュリーニ盤を買ってしまいましたが、1回聞いてお蔵入りになってしまいました」
「われわれはなぜそんなにオペラに対する理解力がないのだろう」
「それは音楽の基礎的な素養に欠けると思うのです。多分分かりやすい旋律が流れるのを今か今かと待つのですが、それがあまりないので退屈してしまう。でも素養がある人はちょっとした音の流れの中に変形した旋律を聴き取ったり、興味深い音楽の技巧をとらえることができるんじゃないのかな。よく言われるのは、筋がわからないから楽しくない。DVDを見ればどんな話かが理解できるから興味を持ちやすいと言われます」
「どちらにせよ、われわれのような初心者はたくさんオペラを聴かないと駄目だと思う。そうなんだが、インスト曲の方が楽しくて効率的であることは事実だ。まあそんなオペラファンからは嫌われそうな私たちが選んだヴェルディのオペラとしては、「椿姫」「トロヴァトーレ」「ドン・カルロ」「リゴレット」の4つだけなのか」
「そうですね、では、「リゴレット」から始めましょうか」
「「リゴレット」は、マントヴァ侯爵のアリア「「女は気まぐれ(女心の歌)」が有名で、全体を通して聴きやすい。レコードとしては、セラフィン盤、ジュリーニ盤があって、私はジュリーニ盤を購入した。今思うと、カラスがヒロインのジルダを歌っているセラフィン盤を買えば良かったと思っている」
「それだけでいいんですね。じゃあ、次は「ドン・カルロ」にしましょう」
「「ドン・カルロ」はカラヤン盤のLPとほぼ同じ内容のDVDが出ていて、それを先に見た。見所満載で、いっぺんにこのオペラが好きになった。それでレコードも購入したいと思ったが、内容がほぼ同じなら、ミラノ・スカラ座の方を先に購入しようとサンチーニ盤を購入したんだ。だが...やっぱり、カラヤン盤にしとけばよかったと後悔している」
「そうですか、失敗ばかりですが、挫けないでください。「トロヴァトーレ」はどうですか」
「ジュリーニが指揮して、ドミンゴが歌ったアリア集が気に入っていたので、ジュリーニ盤を買うところだったが、踏みとどまって、名盤の誉れが高い、セラフィン盤を購入した。指揮だけでなく、歌手たちも素晴らしく、わたしのオペラの愛聴盤となった」
「それでは最後に、「椿姫」をどうぞ」
「ローレンガーという歌手がいて、スペイン歌曲集を録音している。このレコードが愛聴盤となって、ローレンガーがヴィオレッタを歌っているマゼール盤を最初に購入した。これだけでも満足したが、C.クライバー盤やセラフィン盤も購入した。音がそこそこ良くて、演奏もいいと思うので「椿姫」が聴きたいなと思ったら、マゼール盤を聴いている」
「そうですよね。やっぱり、長年聴きなれたレコードには愛着が湧きますよね」