プチ小説「名曲の名盤 J.S.バッハの器楽曲編」
「バッハ(ヨハン・セバスティアン・バッハ)の音楽は大別して、宗教曲と器楽曲ということになります。ぼくは、宗教曲はたまに「マタイ受難曲」をカール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団の演奏で聴くとか、カンタータ第140番や第147番をニコラウス・アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの演奏で聴くくらいでしょうか。器楽曲となるとそれこそいろんな楽曲があり、名盤も数多あります」
「管弦楽曲で言うと、管弦楽組曲第1番から第4番、協奏曲はヴァイオリン、オルガン、チェンバロ、オーボエ、フルート、オーボエとヴァイオリンなどなどいろいろあるけど、ブランデンブルク協奏曲とヴァイオリン協奏曲だけに絞るとしよう」
「管弦楽組曲はどれがいいですか」
「長年、トレヴァー・ピノック指揮イングリッシュ・コンサートのCDを聴いてきたが、最近はオットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の演奏が気に入って聴いている。G線上のアリアという名曲が第3番にあるが、他の曲で目立ったものはなく、どちらかと言うと退屈な曲だ。ブランデンブルク協奏曲と比較するととても地味な曲と言える。ブランデンブルク協奏曲は、パイヤール盤、リヒター盤、バウムガルトナー盤を持っていて、バウムガルトナー盤はオリジナル盤だが、最近は、イ・ムジチのCDが気に入ってよく聴く。フェリックス・アーヨ、モーリス・アンドレ、フランス・ブリュッヘン、マクサンス・ラリュー、ハインツ・ホリガーなど名手ぞろいだからだ。何とかオリジナル盤を手に入れたいものだ。ヴァイオリン協奏曲は第1番、第2番、2つのヴァイオリンのための協奏曲が1枚のレコードに一緒に入っているが、第2番と2つのヴァイオリンのための協奏曲の第2楽章が美しい。以前、名曲喫茶ヴィオロンのマスターから、2つのヴァイオリンのための協奏曲の名盤を教えてもらったが、失念してしまった。今年は、ヴィオロンに行って、何でしたかと尋ねたいところだ」
「「音楽の捧げもの」や「フーガの技法」は名盤がありますか」
「「音楽の捧げもの」はオーレル・ニコレが主役のカール・リヒターがチェンバロと指揮をしている(アンサンブルでミュンヘン・バッハ管弦楽団ではないようだ)レコード、「フーガの技法」はカール・ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団のレコードを購入したがほとんど聴くことはない。どうもわしはバッハのオーケストラ曲とは縁がないようだ」
「オルガンやチェンバロの鍵盤楽器独奏はどうですか」
「オルガン奏者ヘルムート・ヴァルヒャの10枚組CDを購入して全部聴いてみたが、全部楽しめたわけではない。トッカータとフーガニ短調やフーガト短調などを楽しめばいいんじゃないかと思う。スヴャトスラフ・リヒテルの平均律は日本盤で第1巻と第2巻、メロディア盤で第1巻を持っているが、たまに通して聴きたくなる。手軽で聞いていて楽しいのは、ゴールドベルク変奏曲だが、これはやはりグレン・グールドの旧盤がいいんじゃないのかな」
「弦楽器の独奏はどうですか」
「無伴奏チェロ組曲は、パブロ・カザルスとヤーノシュ・シュタルケルのレコードを持っているが、第1番くらいしか聴かない。無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータは、パルティータばかり聴いている。ヘンリク・シェリングがベストやけど、最近、リュートで無伴奏チェロ組曲全曲と無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲を演奏したCDを購入した。ホプキンソン・スミスというリュート奏者で、余り知られていないが、素晴らしい演奏をする。リュートという楽器を身近なものにしてくれた。もしアナログ盤があったら、聴いてみたい気がする」
「他に何かありますか」
「無伴奏チェロ組曲全曲をギターで演奏してみたり、ゴールドベルク変奏曲をオルガンやハープで演奏したりと楽しい編曲もたくさんある。管弦楽組曲、「音楽の捧げもの」「フーガの技法」の名盤を探すより、無伴奏チェロ組曲全曲と無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲のレコードやその編曲をしたレコードを探した方が、いいものがあるように思う」
「そうなんですか」