プチ小説「名曲の名盤 COLUMBIA盤編」

「前回はオランダのPHILIPSレーベルを取り上げましたが、今回はいよいよアメリカですね」
「アメリカのオーケストラでは、ニューヨーク・フィル、ボストン交響楽団、シカゴ交響楽団、フィラデルフィア管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団、ロサンゼルス・フィルなどがトップクラスのオーケストラと言えるんやが、やはり伝統があるヨーロッパのオーケストラと違って、一時的に隆盛となるが、その時期が過ぎると難しい局面となるようや」
「そ、それはどういうことですか」
「例えば、ブルーノ・ワルターという名指揮者がアメリカに定住してどんどんどしどしレコーディングをするということになった時、レコード会社は、コロンビア交響楽団というワルターの演奏活動のオーケストラを用意した。「ワルターさんが指揮をするんやったら、わしも入団するわちゅーて、それこそ世界中から腕に自慢のある演奏家がやって来た。これは、ジョージ・セルがクリーヴランド管弦楽団の常任指揮者に就任した時も同じやった。そうして1962年にワルターが亡くなるまでは、その最高水準の演奏が可能なオーケストラを指揮して、たくさんの名盤を残した」
「どんな曲がありますか」
「まずは、誰もが一番に上げるブラームスの交響曲第4番がある」
「日本盤のジャケットでは、山の夕焼けの写真だったですね」
「ベートーヴェンの交響曲では、やはり第6番「田園」だろう。モーツァルトの交響曲も後期交響曲は名演と言える」
「ワルターは、マーラーのお弟子さんだったですよね」
「そう、それだから、第1番「巨人」は渾身の演奏となったが、わしはそれよっか、ウィーン・フィルを指揮した交響曲「大地の歌」(DECCA)の方が好きやな」
「他には、ありますか」
「とにかくコロンビア交響楽団を指揮していろんな曲を入れとって、わしは、ブルックナーの交響曲、第4番、第7番、第9番なんかを聴いたんやが、ウィーン・フィルのような弦楽器の美しさがないんで、やっぱり、ワルターでも名盤にはならんかった」
「カラヤンもブルックナーの交響曲第7番の最後の録音はウィーン・フィルを指揮していますね」
「ワルターの名盤に「ミラベルの庭園に」というのがあって、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」とオペラの序曲とフリーメーソンの音楽他を録音しとるのを知っとったか」
「美しい庭園のジャケットのレコードですね」
「他にも、シューベルトの「未完成」と「ザ・グレイト」が名演と言われるけど、弦楽演奏に物足りなさをわしは感じるなぁ」
「他のアーティストはどうでしょうか」
「まずは、わしが好きな、ユージン・オーマンディやな。詳しいことは言わへんけど、オーマンディは、ヴァイオリニストやったんやけど、天啓を受けたみたいに突然指揮者になった人や。オーケストラを纏めるのが上手で、彼の演奏はオーケストラが一体になっているのがようわかる。シベリウスの交響曲第2番、チャイコフスキーの弦楽セレナーデ、ホルストの「惑星」、レスピーギのローマ三部作それからテラークから出ているサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」もええよ」
「ゼルキンなどとの共演でも名演がありますね」
「ゼルキンは、ブラームスのピアノ協奏曲第2番、ルービンシュタインはラフマニノフピアノ協奏曲第2番(RCA)、ルービンシュタインとは気が合ったみたいやわ。オイストラフとはシベリウス、それからメンチャイ(メンデルスゾーンとチャイコフスキー)のヴァイオリン協奏曲で共演しとる。ラフマニノフとはピアノ協奏曲第3番で共演しとる。あんまり知られてへんけど、オットー・クレンペラーもようけコロムビアで録音しとる。これはモーツァルトのがええわ」
「セルもブラームスの交響曲第3番など名盤があります。ピアニストでは、グレン・グールドがいますね」
「いや、それより、ディヌ・リパッティがいてるよ。ショパンのワルツ集、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番、シューマンのピアノ協奏曲はいつ聴いてもええなぁ」
「グールドでは、どのレコードがいいですか」
「やっぱり、バッハのゴールドベルク変奏曲、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」、ブラームスの間奏曲集なんかやろな」
「他に何かありますか」
「実は、コロムビア盤で一時よく聴いたのが、ジノ・フランチェスカッティのクライスラー作品集とサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番やねん。どっちも一度聴いたら、病みつきになること間違いナシや。両方とも6つ目ラベルで、音がええからかもしれんけんど」
「ありがとうございました」