プチ小説「たこちゃんの願い」
ディザイア デセオ ヴュンシュというのは願いのことだけど、ぼくはもう還暦を過ぎてしまったというのに、大小たくさんの願いを今でも持っている。南こうせつさんの歌に「ねがい」という歌があるけどこの曲のようにスローテンポでもいいから自分の願いがいつか叶ったらいいなと思い続けて来た。列挙すると、やはり最初に来るのは、精魂込めて書き上げた『こんにちは、ディケンズ先生』が多くの人に認められて、西洋文学とクラシック音楽の著述で食べて行けるようになることなんだ。そのためには少なくとも自費出版した拙著が増刷されて、マスコミに取り上げられるようにならないといけない。自費出版は正規のルートとは言えないから、ほとんど市場に出回らない。それでまず大学図書館への受け入れを依頼しているが、2020年の3月に出版した第3巻と第4巻は丁度コロナ禍の始まりの頃の大変な時期で大学も寄贈図書の受け入れどころではなかったのだろう、今のところ、出身大学の立命館大学の他には京都大学、東北大学、茨城大学、阪南大学しか受け入れられていない。第1巻と第2巻が全国90以上の大学に受け入れられたことを考えると余りにも少なくて、作品自体に問題があるのじゃないかと思われるかも知れないが、私にすれば第3巻と第4巻の方が楽しんでいろんな情報を盛り込んで書き上げたので手に取って読んでいただくことを願うばかりなんだ。ディケンズ・ファンになりたい方にきっと興味を持っていただけると思うので、何かの切っ掛けができないのかと思っている。大学図書館に受け入れられないと公立図書館に受け入れてもらうのは難しい。例えば、名古屋市は第1巻と第2巻をたくさん受け入れてもらっている(鶴舞図書館以外にもいくつかの区立図書館で受け入れてもらっている)が、第3巻と第4巻は名古屋大学に受け入れられていないので、鶴舞図書館に受け入れられなかった。第1巻と第2巻が受け入れられたので、名古屋市内の区立図書館巡りを楽しんだもんだったが、第3巻と第4巻ではそれができない。今のところそれが出来そうなのは最近受け入れをしていただいた東北大学がある仙台市くらいだけど、こちらの方は今年中に仙台市立図書館に受け入れをお願いしに行こうと思っている。今年は函館に夜景の撮影で行きたいと思っているけど、やっぱり自著の受け入れを兼ねて旅行すると付加価値が付く旅行になるので心が弾む。第3巻と第4巻は30の大学図書館に出版社から代行発送してもらっているが、その受け入れがほとんどない現状では2013年から2014年に楽しんだ付加価値のある旅行がやりたくてもできない。2つ目は名曲喫茶ヴィオロンで年4回開催して来たLPレコードコンサートの再開なんだけど、現状では難しいとしか言いようがない。3つ目としてクラリネットレッスンの再開というのがあるけど、こちらも現状では難しいとしかいいようがない。コロナ禍が一日でも早く過ぎ去ってくれと願うばかりだ。駅前で客待ちをしているスキンヘッドのタクシー運転手を最近見なくなったが、今日は駅前にタクシーを停めているから最近どうしているか訊いてみよう。「こんにちは」「エス タン ペルセベランテ ケ エス カパス デ サカルロ デ デバホ デ ティエラ」「有難うございます。これからも頑張ります」「心配せんでも、ええんとちゃう。船場はんが強く願ったことでかなわんかったことはないやろ」「といいますと」「まずは浪人生活が長くて苦労したけど、何とか希望の大学の法学部に入られたことや」「そうですね。一生懸命勉学に励んだのですが、同時に受験した3つの大学の法学部に落ちたので、明日は職安に行こうかと思っていたら合格通知が届いたのでした」「出版社に何のコネもない船場はんが、自費出版した本を流通してもらい、しかもたくさんの大学図書館と公立図書館に受け入れてもらわはった。こんなこと今から13年前に想像できたか」「そうですね、プチ小説を書き始めるまでは、出版のことなんて考えられませんでした。「こんにちは、ディケンズ先生」を書き始めて、75話まで書くと1冊の本にできるくらいの分量になり、大学の頃に読売新聞に載っていた新聞広告を思い出したのでした。「あなたの原稿を出版しませんか。査定をします」という近代文藝社の新聞広告を。今は事情があって、幻冬舎ルネッサンス新社のお世話になっていますが、近代文藝社の担当者の方が頑張って下さったお陰で、たくさんの大学図書館、公立図書館に受け入れてもらえたのだと感謝しています」「そのとおりや。そやけど第3巻と第4巻の編集をしてくださったSさんにも感謝せんとあかんよ」「本当ですね。Sさんはほんとうに親切な方でした。今は退社されたようですが、いつかぼくの本が多くの人に認められたら、あなたが骨を折って下さったおかげです。ありがとうございましたとお礼をいいたいですね。本当に完璧な校正をしていただいたんですから」「そうそう、あんたが一所懸命頑張ったら、賛同してくれはった人たちがにこにこ笑って一緒に骨を折ってくれる。ホンマにそのことには感謝せんとあかんよー。それから11年かかってもクラリネットのテクニックはいまいち。そやけど人前でええ音で演奏できるようになったのは、谷上先生のお陰や。高槻のJIUGIAでヤマハのYCL650をローンで購入した時にそれが想像できたか」「音が鳴ったらいいかくらいでした。谷上先生の指導でいちから楽しく教えてもらいました。Nさんというお友達もできました」「『こんにちは、ディケンズ先生』を出版して、ディケンズ・フェロウシップの会員になったおかげで、雲の上の人と思っていた人とも親しく話が出来るようになったやろ」「そうですねたくさんの大学の先生、共通の趣味がたくさんある翻訳家の先生とお会いできるので、年2回の集まりが楽しみです。一度発表させてもらいましたが、『こんにちは、ディケンズ先生』が売れて、もう一度発表させてもらえたらいいなと願っています」「本を自費出版したおかげでいろんな縁が出来る、クラリネットが人前で演奏できるくらいになるというふうに船場はんはそれなりに夢を叶えて来たんやから、『こんにちは、ディケンズ先生』が売れて、文筆業で食べて行けるという夢も叶うんとちゃう」「でも、70才を過ぎてからでは遅すぎます。来年くらいに何とかなりませんか」「そら、あんたの日頃の精進次第や。最近、わしと会わんからうさぎ跳びとリヤカーごっこしてへんやろ。そういう場合は自分でやらんとあかんわ」「どんなふうにやるのですか」「人目につくし車が危ないから、夜中に近所のワンブロック(一区画)をうさぎとびをするとか」「リヤカーごっこはどうするのですか」「それはわしの楽しみやから、他の人とせんといて」「そうですか、リヤカーごっこだけでなくこれからもずっとご教示ください。よろしくお願いします」「船場はんやったら、朝、昼、晩いつでもオッケイやでー」