プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 山登りを続けるかどうかそれが問題だ編」
わしが小学生やった時に、何度か北摂のあたりに遠足に出掛けたことがある。名前がおもろい高槻にあるポンポン山は関西らしい逸話があるんで個人的には好きなんやが、アクセスが悪くて眺望もあまり良くないんで勧められん。天王山と摂津峡は桜を楽しめるところなんで、わしは小学生の頃に遠足で行ったことがある。特に摂津峡は清流に沿って歩きながら渓谷美が楽しめるんでハイキングには持ってこいや。ほんでー、兵庫県には兜山があってここも小学生の脚には手頃な難易度と距離やからわしも小学生の時に登った。それでも六甲山、摩耶山、金剛山、葛城山、比良山なんかはアクセスが余り良くなく難易度も高いので遠足の目的地となることもなく、中学生までは存在すらわしは知らんかった。わしが山に興味を持ち始めたのは高校生の頃で、クラブ活動で摩耶山に登り夜景を見てからや。高いところから夜景を見ると強い光が重なり合ってライトの周りの光が滲んで来るから宝石箱の中の宝石のような輝きやった。山登りをしてええことは他にも、身体を鍛えられること、高山植物撮ったり見たりできること、急峻な山道を上り下りするスリリングな体験ができることなんかがある。わしは60才を超えたら、体力の衰えを自覚して身体の限界を超えるような登山は控えて、夜景や高山植物を撮るために主に乗り物を利用して目的地まで行き撮影を始めるのがええと思う。そやけど船場は63才やのに伊吹山に登ってきよった。ええ年してようやると思うわ。だいたい伊吹山は1377メートルやからそんなに高い山やない。そやけど周りに山がないからアップダウンがなく、登り始めたらひたすら登り下り始めたらひたすら下らんといかん。それに下界の景色もいまいちでいちいち振り返ってみんとアカンから、きれいな景色を見ることでやる気を起こさせてくれるという期待がでけへん。あいつ、久しぶりの登山で全身筋肉痛ちゅーとったけど、もう回復したんやろか聴いてみたろ、おーい、船場ーっ、おるかー。はいはい、兄さん、伊吹山登山無事帰って来たかと心配してくれてはるんですね。そうや、3日経っても一向に太腿の痛みが引かないで困っとると聞いとるんやが。おっしゃられる通りです。伊吹山は手強いです。それに自分で墓穴を掘ったというのもあります。季節限定のバスが走っていると勘違いして山頂に到着してから1時間20分程うろうろしていました。路線バスが止まる駐車場の側にある喫茶店の店員さんにバスのことを尋ねると、今は運行していないと言われて慌てたのでした。そやけど気が付いて山頂に戻って下山を始めたんが、午後2時40分になってからやろ。登りで4時間掛ったから、暗くなるまでに降りれるんやろかと心配にならんかったんか。ええ、それがとても心配でした。それに降りていて気付いたんですが、伊吹山の山道は石が多くて急峻でとても走ることができません。下山するためのバスが走っていないので自分で痛みを堪えながら下山することにしましたが、8合目を過ぎたあたりから膝の痛みが出て来たので涙をちょちょぎらせながら下りました。それに5合目まで降りても4人しか会わなかったので心細かったです。ほんな状況でよう帰還できたな。そうですね、この調子で最後まで行ってたら、午後6時30分くらいにはなっていたでしょう。最終の近江長岡行きのバスは午後6時10分ですから、駅まで如何していこうかと悩んでいたと思います。ですが、5合目近くでお会いした79才の男性に助けられました。この男性は滋賀県在住の方で、お遍路さんにしばしば行かれる方ですが、山登りは55才でやめた。80才になってもお遍路さんを続けるかどうか決めるために伊吹山に登ったと言われていました。160センチ40キロくらいの華奢な方で70才まで司法書士をしていたと言われました。5合目で一緒に休憩して10分程話したのですが、引き続き話をしながら下山しましょうということになり、この男性のペースに合わせて下りました。私にはかなりきつく、痛みで涙がとめどなく流れました。それでもこの方のお話が楽しく適切なスピードで下りたので、午後6時少し前に登山口の三之宮神社に辿り着くことができました。しかもこの男性は長浜駅まで一緒に行きましょうと行って高級車に乗せてくださいました。ほんとうに感謝しています。船場は全然予定していないことをやらかすからわしはいつも呆れるんやが、なんで最近全然行かんかった登山をやろうと考えたんや。実は、私が60才を過ぎた頃から母親が比良山登山は危険だから行くなと言うようになりました。それで登山は諦めていたんですが、伊吹山は登りも下りも道がわかりやすいという話を母親にしたところ、ややこしくないんやったら行ってもええよということになり、中級者向けの山に久しぶりに登ったのでした。これを切っ掛けに比良山でのトレーニングを経て、槍・穂高に再挑戦するのかということですが、いっぱいしたいことがあるので、比良山でのトレーニングをするようになったら、わかりやすい槍登山を考えるとだけ言っておきます。そうした方がええんとちゃう。無理して遭難したら一巻の終わりやから、慎重に行くことや。