プチ小説「青春の光 102」

「は、橋本さん、どうかされたんですか」
「船場君が8月から心機一転頑張るということをこの前話していたんで、われわれでいろいろ考えて助言してあげようと思ったんだ」
「ぼくは大賛成ですが、この前お会いした時に船場さんご自身が抱負をいろいろと語られたのではなかったですか。諸般の事情があって7月までで現在の仕事を止められる。その後は主に母校の図書館で小説を書き、長らく開催できなかったLPレコードコンサートを再開しクラリネットのレッスンも始める。切り詰めた生活になるが、函館に行って夜景の撮影をることと星のくにでの天の川銀河のガイド撮影は9月までにしておきたいと言われていましたね」
「そうなんだが、そのガイド撮影のことがまず気になってね」
「どういったことですか」
「船場君は、今週の金曜日に湖国バスが企画した「伊吹山星空観光バス」に参加する。これは午後5時40分に米原駅西口発のバスに乗って伊吹山の山頂近くに行き、駐車場(スカイテラス)で1時間30分程の間星空を眺めて、午後9時40分に帰って来るというものだが、まずこの日は月齢が23なので空が明るくて天の川銀河も霞んでしまうような気がするんだが」
「ぼくが船場さんから聞いたのは2つ理由があってその一つは初めて参加するので、新月の頃(7月29日や30日、8月26日や27日)は混むだろうから避けた方がいいと言われていたんです」
「なるほど」
「そうして半月に近い星空でガイド撮影が出来そうなら、三日月の頃でも充分にガイド撮影ができることになり、参加できる日が増える(選択肢が増える)ことになります」
「そうかなあ、今、運行期間を見てみたが、三日月までとするなら、さっき上げた4日だけのようだ。小、中学生対象のようで、月齢に関係なく組まれていて8月5日から13日までが休みなしに運行していて13日は満月の日なんだ」
「そうですか、それは船場さんに言ってあげなくてはいけませんね。それからもうひとつはどれくらいの荷物の持ち込みが可能で1時間半足らずの間にどんなことが出来るか試してみたいと言われていました」
「多分、上手くやればスカイテラスでガイド撮影ができるのではと船場君は考えているんだろうが、まずスカイメモと周辺機器だけで10キロくらいになる。これをどうして運ぶんだい。まさかあの2キロほどあるプラスチックケースで運ぶんじゃあないだろ」
「10年ほど前まで登山で使っていた大型リュックサック(カメラバッグ)に入れて運ぶつもりのようです。M9だげでなくM6も持って行きたいと言われていました」
「それはなぜ」
「M9だとバッテリーの予備がないと30分しか撮影できません。新品のバッテリーをもう一つ買うとすると1万4千円かかりそこまでしてM9に拘るより、M6を使った方がいいかなと船場さんは言われていました」
「しかし...大型三脚もカーボン製だが2キロはあるし、レンズ付きカメラが2台で3キロくらいそれにスカイメモが10キロ近くあるからせっかく最近かったスニーカーも底がすり減ってしまうだろう」
「でも船場さんは槍・穂高に登っていた時は13キロくらいの荷物を背負っていたと言われていましたし、LPレコードコンサートの時は(家から持って行くレコードとディスクユニオンで購入したレコードを合わせて)5キロほどのアナログレコードを持って東京都内をウロウロされていたと聞きますし15キロくらいなら運ばれるでしょう。ただ13キロの荷物を太ももに乗せて1時間半近くじっとしているのは辛いので下調べをしたいのだと思います」
「高速バスのように出発時に荷物が預けられるといいのだが」
「とにかく船場さんの星空観察はこけてばかりで、こんどの金曜日も雨のようですから、今年もあかんかったわと言われそうな気がします」
「まあ、星のくにの宿泊予約は伊吹山がどうなるかで左右されるのだろう。7月22日の観察会で船場君がやる気を出すのをわれわれは祈ることにしよう」
「そうですね、最初の企画がうまく行くか。大事だと思いますよ」