プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 自省の意味も込めて編」

わしが幼少の頃は節目節目に目標を立てて、それが叶うよう一所懸命に頑張ったもんやった。小学校2年生の夏休みに入る前は、学校のプールで50メートル泳げるようになろうと、小学校4年の時には中学1年生まで出場できる少年野球大会でヒットを1本は打とうと、小学6年生の時は100メートルを13秒台で走られるようになろうと誓ったもんやった。そやけどわしはどの目標も達成でけんかった。わしは根っからの運動嫌いで根気が微塵もなかったのがアカンかったんやと思う。毎日学校のプールに通っていたら先生が指導してくれたやろうし、少年野球も近所の野球の指導に熱心なおっちゃんがバットコントロールやグラブさばきのテクニックを伝授してくれたかもしれんし、クラブ活動をしとったら自然と基礎体力が付いて100メートル14秒台ということもなかったかもしらん。ほんで無気力になったわしは運動をせんと深夜放送を遅くまで聴いたり、漫画本を友人から借りて読んだり、流行の映画を映画館に見に行ったり、テレビで娯楽番組を見たりして、貴重な伸びしろのある幼少期の時間をよう生かさんかったんやった。今から思うたらほんまもったいないことやったと思う。遅くまで起きて地道に勉強したり、少年少女世界文学全集を読破したり、すぐに創作に目覚めて自分で小説や台本を書いたりしていたら、自分はこれで一生頑張るぞという目標ができていたやろし、第一無駄な時間を過ごしている暇がなかったと思うんや。その時に一念発起していたら、スポーツ選手に成れなくとも、真面目な学者や小説家やマスコミで活躍する人になっていたと思う。人間ある程度まではやれるけど一流になれるかどうかはどれだけ幼少期に集中して努力したかによるもんでもちろん上手い下手や指導者に恵まれるかどうかもあるかもしれんけど、最後は自分の頑張りやと思う。船場は仕事を引退して、懸賞小説を書くことに専念するちゅーとったけど、あいつ、自宅で冷蔵庫の掃除ばっかりしとるから、また体重が増えた言うとった。偉そうなこと言いよったけれど、何の成果も結ばんまま、年齢ばかり重ねていくんとちゃうやろか。気になるから、ちょっと訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかー。はいはい、兄さん、私が冷蔵庫の中にある、チョコレート、ゼリー、チーズそれから各種おかき、クッキーなんかを食べて、ほとんど小説なんか書いてへんやないかという叱咤激励のことですね。叱咤激励やと?船場、それは甘い。甘いお菓子ばかり喰っとるお前には厳しい結果が待っとるだけや。だいたいお前、8月になったら、大学図書館に通うちゅーとったけど、4日、5日、8日、10日しか行っとらん。しかも午後2時には帰途に着いとる。兄さんが言わはる通りなんですが、1~3日と9日は退職後の手続きのことで調べたり、母親の世話で図書館には行けませんでした。12日と15日~17日は大学図書館や学食が利用できないので、18日から本格的に図書館通いを始めようかと思っています。それに何よりこの暑さは堪えます。連日最高気温が35度以上なんですから、朝、大学図書館まで歩きますが、到着すると汗でずくずくです。もう少し涼しくなったら、帰りも歩きますから身体も軽くなるでしょう。月曜日から金曜日まで、できれば土曜日も大学図書館に通うようになれば、いろいろな誘惑を断つことができるでしょうから、もうちょっと見やすい体型になると思いますし、小説も腰を落ち着けて書けるようになるでしょう。そうして10月にはクラリネットのレッスンの再開、コロナがおさまればLPレコードコンサートの再開、小旅行や星空観察なんかもやってみたいと思っています。兄さんと同じように私も幼い頃にもっときっちり自分のためにやれることをやっといたらよかったという後悔があります。それだから猶のこと貴重な時間を無駄にしたくないと思うのです。ただ、この殺人的な暑さとコロナの蔓延は私の力ではどうしようもありません。静観するしかないのです。もう少し涼しくなったら、本格的に図書館通いを始めて、コロナが落ち着いたらいろんな楽しみを再開しようと思っているので、しばらくお待ちください。そうか、わしがちいこい頃はしばらくテレビの画面が途切れて、しばらくお待ちくださいという画面が出てたことがあった。そういう画面はすぐになくなって放送が再開されたから、船場の本格的始動もその時みたいにもうちょっと待ったるわ。そう言ってもらうと有難いですし、本当に再開後は精一杯頑張ろうという気になります。