プチ小説「友人の下宿で21」

「みなさんお忙しいところお集りいただき有難うございます。本日は4人のイギリスの作曲家の作品を
 お聴きいただくということです。それでは、高月さん張り切ってどうぞ」
「ドイツやオーストリアがクラシック音楽の中心地と言えますが、オペラではイタリアが、また色彩豊かな
 管弦楽作品と言えばフランス、ロシアなどもすばらしい。ではイギリスはどうかと言えば、モーツァルトや
 ベートーヴェンのように泉のごとくに次から次へと名曲を生み出した作曲家はいませんが、心に残る曲を
 いくつか残した作曲家は何人かいます。今日紹介する作曲家は余り知られていませんが、それでも彼らの
 作品のいくつかは本当にすばらしいものなので、折りに触れて何度も聴いていただけたらと思います。
 それでは最初はブリテンの「青少年のための管弦楽入門」をお聴きいただきましょう。解説のナレーションが
 入ったりするので、クラシック入門者のための曲と思われるかもしれませんが、作曲したブリテンが自分で
 指揮したレコードは解説などは入っておらず名演ですので、今日はそれをお聴きいただきましょう」

「次は、エルガーのチェロ協奏曲をお聴きいただきます。エルガーは力強い行進曲「威風堂々」で有名ですが、
 今日はデュ=プレとバルビローリの共演で有名になったこのすばらしい曲をお聴きいただきます」

「3曲目は、ヴォーン・ウィリアムスの「タリスの主題による幻想曲」をお聴きいただきましょう。この曲を
 含めて今までの曲はじわじわと感情を高まらせて、やがて天国の境地へと至らせてくれるような、そんな曲です。
 特にこの曲はその感じがさらに強いのでお楽しみ下さい。演奏は、マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団です」

「最後は、ディーリアスの「アパラチア」です。ディーリアスはメロディーメーカーで数々の美しい旋律を
 作り出しているので、もっと多くの人に聞いてもらいたいのですが、残念ながら、ウィーン・フィルやベルリン・
 フィルが演奏することはほとんどないようです。この曲の最後は英語の歌詞で歌われますが、クラシックは
 ドイツ語と考えられている方は、ギョッとされるかもしれません。バルビローリ指揮ハレ管弦楽団の演奏です」

「百田、どうだった」
「確か、ホルストもイギリスの作曲家なので、「惑星」が聴けると期待していた。でも、今日の選曲はすばらしかった。
 クラシック音楽の奥深さを知らされたような...」
「百田、何か面白いことを言ってほしいな」
「「アパラチア」の最後のところで、オー、ハニー...と歌っていたけれど、これを直訳すれば、オー、蜂蜜といっているのかな」
「君の言う通りだとは絶対思わないが、その方が解釈としては楽しいと思う」