プチ小説「ケサランパサランの謎」

最近、読売テレビの夕方の情報番組の中学生(の女の子)からの質問に番組の出演者が回答するというコーナーの中で、「ケサランパサランって何」という質問に30代くらいの男性が回答していた。私はケサランパサランというフランス語っぽい(ケセラセラに似ている)響きに何となくテレビを見続けたが、その写真が写し出された時に2つの場面が一時に頭の中を駆け巡った。私は今までにケサランパサランを2度見たことがあるのだ。
最初に私がケサランパサランを見たのは、頻繁に比良山系のトレッキングをしていた今から17、8年前のことだった。青ガレを登り切ってしばらく行くと小川があり、それを渡ると金糞峠に至る急斜面に出るがその急斜面の手前のフラットなところにケサランパサランがなんじゃこりゃといいたくなるほどたくさんいた。単体だとアイボリーの薄い色の足長蜘蛛の手足だけという感じなんだが、それが10も20も合わさって、あちこちにただよっていた。まるで生き物のように見えたが(後に説明するがケサランパサランには動物性のものと植物性のものがいて、この時に見たのは植物性だった)、動きは単調で時々自発的な動きをするように思えたが漂っているだけにも見えた。武奈ヶ岳に登って帰りにそこを通りかかった時には、ケサランパサランは1匹もいなかった。
2度目に見たのは、私が夜勤に入っている時だった。3メートル四方の部屋で委託業者の人と談笑していると突然、植物性のケサランパサランが出現し、目の前を漂い始めた。確か2匹いたと思うが、その委託業者の人は安全靴を履いていたので、これゲジゲジとちゃうんかなと言って、踏みつぶしてしまった。読売テレビのレポートの中で専門家が登場して、「ケサランパサランは幸福を齎す」と言っていたが、それを自ら抹消してしまった感じだった。詳細はわからないが、その委託業者の人は暫くして職場を移った。
そうして先月の読売テレビの放送となる訳だが、私は、専門家が出て来てケサランパサランには動物性と植物性があると言うのを聞いて、その画像が画面に出てからはテレビから目が離せなくなった。動物性は、白い犬の毛数十本を3、4センチの長さに切り取り片方を糊で束ねたようなもの(私は今まで見たことがない)、植物性は先程も述べたように足長蜘蛛の胴体の代わりに1センチ足らずの節のようなものがあるもので、そこで動きをコントロールしているように見えた。専門家は学術的なことは言わなかったが、その中学生が家で採取した10センチくらいの大きさのケサランパサランを見て、大切にしてください。そうすれば幸せになりますと言っていた。
今から思うと私が46才になった頃からお金に少しゆとりができてしかも急に体力がついたのは、めちゃくちゃたくさんのケサランパサランと出会ったからではないかと思っている。とくにその場で手を合わせて願い事を言ったわけではないが、出会いがあったので運気が上昇へと転じたのではないかと思っている。今はコロナでそれどころではないが、落ち着いたら、ケサランパサランの幸せを探しに(出会いを求めて)比良山系にトレッキングに行こうかと思っている。