プチ小説「青春の光 105」

「は、橋本さん、どうかされたんですか」
「最近、金粉やメリケン粉や青のりを塗って踊ることがなくなったので処分しようかと思うんだ」
「そうですよね、我々がこのコーナーをはじめたのも、船場さんから、『こんにちは、ディケンズ先生』の売り上げに貢献できるような派手な宣伝をしてほしいという依頼があって始めたわけですが、コロナ禍で船場さんが思うように活動できない、それもあってか『こんにちは、ディケンズ先生』もあまり売れていないという状況では、橋本さんも金粉を塗ってはしゃぎまわる気にはなれないでしょうね」
「そうなんだ、でも船場君はわれわれの雇い主だからなるべくできるだけのことはしたい。私ももうすぐ65才になって高齢者の仲間入りをすることになるから、相当なことがないことには伝家の宝刀は抜かないつもりだ」
「伝家の宝刀ですか」
「そう、裸になって金粉をつけて炭坑節を踊るんだ」
「・・・・・・」
「ところで最近は気温がぐっと下がって気候が良くなったし、コロナ禍も治まりつつある。第8波は年末年始までは大丈夫だろう」
「そうですね、だから船場さんは第7波の終息が宣言されたら、LPレコード・コンサートの準備に掛かられるそうです。まずは始めてみて、やばいと感じたら中止にすればいいんですから」
「何とか問題ないように再開したいところだね。話は変わるが明日(9月26日)から立命館大学も後期日程が始まるようで、それに合わせて平井嘉一郎記念図書館も午前8時30分開館になるようだ」
「8月3日から図書館の開館時間が午前9時からになって船場さんはのんびりしていたみたいですけど、これからは気合をいれないといけないですね」
「このまましまりなくやっているとあっという間に65才になって、何も実績を残さないで70才になってしまうだろう。70才までには何か賞を取ってほしいものだ」
「継続することと日々精進することが必要ですが、コロナ禍で難しいところもありました。それでも今はある程度規制が緩和されて準備が整ったと言えますから、船場さんに頑張ってほしいと思います」
「LPレコード・コンサート、クラリネットのレッスンという楽しみもあるし、半年に1回位は泊りがけの旅行をするのもいい」
「息抜きに京都市内を散策するのもいいですよね」
「まあ、そんなこんながよい相乗効果を引き起こして船場君が楽しい作品を書けるというのなら、是非遮二無二わき目も振らずに突っ走ってほしいところだ」
「10月8日には久しぶりに対面でのディケンズ・フェロウシップの秋季総会が、大阪公立大学であります。先生方から励ましのお言葉をいただければ船場さんの力になると思います」
「そうだ、いろんな人間関係がスムーズに働いたから船場君は電池切れにならずに走ることが出来たんだが、フェロウシップの総会、LPレコード・コンサート、クラリネットのレッスンが中断した状態だった。これからは順次再開して行く、大学図書館も来年の1月末まで平日は午前8時30分から午後10時まで利用できる。あまりに順調なのは魔が差す可能性があるのだが、適度にうまく行かないところがあるから船場君には丁度いいんじゃないか」
「ぼくもそう思いますね。船場さんには小説の執筆にしっかり取り組んでいただきたいですね。そうして少し曙光が見えたら、われわれの出番になりますね」
「そう考えると、メリケン粉は賞味期限切れなので処分するが、金粉は取っておいた方がよさそうだ」
「そうしてください」