プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 ポロシャツとジャージの日々編」

わしが幼少の頃は、衣食住はほとんど親任せやった。住はどうしても親頼りになるけど、早くから親に料理を作って食べさせたりする天才料理少年少女はいくらでもいとるし、お金持ちの子息やったら百貨店で余所行きのジャケットなんか自分の好きなのを買うてもらっとる。わしは中学生になってからインスタントラーメンを自分で料理するようになったが、他の料理は社会人になるまでしたことがなかった。母親が美味しい料理を作ってくれたからな。それから服は高校1年生の時にイズミヤで500円の鶯色のTシャツを買うてそれが気に入って、首の周りが延び延びになって口径70センチくらいになるまで着ていたんやった。高校生の時は私服で通学もできたから、詰襟の制服は買わんとブラウンのサファリジャケットをイズミヤで買うてもらって3年の終わりまで着とった。さすがにサファリジャケットで卒業式に出るわけに行かんから中学生の時に着とった学生服を来たんやが肘のところが真っ白てかてかで袖のところに穴があいとったんでちょっとカッコ悪かった。社会人になって2年目に吹田から高槻に引っ越して、母親が家の近くにオーダーメイドの紳士服の店を見つけてわしにそこでジャケットやズボンを作るようにさせた。それまではスリーエムで紺色のスリーピースを作っただけやったから、2、3年で箪笥の中が賑やかになったもんやった。毎年3万円のジャケットを作っとったから、それからしばらくは背広にズボンというのがわしの普段着やった。そやからジーンズを初めて履いたのはわしは遅かった。40才過ぎてからやったと思う。ブランド物もほとんど買う機会ががなく(そらしがないわしにはそんな金逆立ちしても出よらん)40才の頃に5万円くらいでクリスチャン・ディオールの茶色のダウンジャケットを購入したくらいや。これも丈夫やったから中の綿(羽毛)が団子になるまで、15年くらい着とった。そやから40代のわしは下はエドウィンかリーバイスのブルージーンズ、上は2千円くらいのシャツの上にセーターを来て、ブラウンのジャケットを着るというのが多かった。たまに寒いなーちゅうて30代の初めに買うた裏地に綿が引っ付いたようなレンガ色のコートを着とった。50才過ぎたら着るもんにお金を使うのがもったいのーなって、若い頃に着ていたジャケットなんかをまた着るようになった。40代に比べるとかなり太ったんやが、背広なんかは前ボタンを外して腹が踊ってても問題ないから、暫くは昔買うた服を着てても大丈夫やと思う。船場は43才から52才までは山登りしててトレーニングをようけしとったから、体重も70から74キロやったが、55才を超えてからはストレスが溜まって筋トレどころやなくなった。運悪く五十肩が長引き体重はいつしか80キロを超えてしもうた。腿上げや背筋は続けとるようやが一向に体重が減らん。大学の図書館で小説を書くんやゆうとるけど、ぶくぶく太っとるから今から30年前に買うた背広を着て五千円のスラックス履いて腹出して上下左右に揺らしながらキャンパス歩くしかない。みっともないと思わんのやろか。いっぺん、訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかー。はいはい、わたしの立派なお腹のことを気にしてくれてはるんですね。ほんま、このお腹のことは、ぴったりしたMサイズのTシャツなどを着ていると恰幅のいい小学生みたいやーと母親からも言われます。母親からO(オッサン)サイズやXO(エキストラオッサン)サイズのゆったりした服を着ろと言われますが、太った年配のおばさんのようになりますのでどうしようかと迷っています。どうしようかちゅーて、わしはぴちぴちとれとれの腹回り85センチのスラックスを船場が履いているより、伸縮自在のゴムが入っとるスラックスなんかを買うた方がしんどい思いせんでええと思うんや。それから32インチの黒色のジーンズとかでもええんとちゃう。私も8月から母校の図書館で小説を書こうと決めて何回か下見に大学に行ったのです。その時私はリーバイスのジーンズに派手目のポロシャツでした。夏はラグビージャージみたいなものでもいいかと思っていたのですが、生徒さんを冷静に観察すると、ジーンズ履きはほとんどなく、綿パン、チノパン、スラックスというのがほとんどだったのです。また上の方もTシャツ1枚というのは極めて少なくボタンのあるシャツを着ている学生さんが多かったのです。それが勉学に臨む服装で、TシャツにGパン姿で門外漢がその暗黙で了解された大切な決まりを破るのは良くないと思いました。それでズボンはスラックスを大丸百貨店で奮発して、上は襟のついたポロシャツ(Tシャツではなく)というスタイルで大学に行こうと決めたのです。そうか、そやけど冬場はどうするんや。あんた10月18日も紺の半そでポロシャツを着とったけど冬になってもそれで行こと思うとるんとちゃうやろな。下にラクダのシャツを着たら凌げんでもないからな。いえいえ、そのためにジャージを購入しました。背広もいいのですが、それだと長袖シャツを購入しなければならなくなり、クリーニング代もかかります。ジャージの下に半袖Tシャツや長袖Tシャツを着るようにして家の洗濯で済ませて、お金がかからないようにしたいんです。それに背広だと駆け足に向いていません。太り気味の身体を絞るために、西院駅から大学までの行き帰りにしばしば信号のところで走ってなるべく体力を消耗するようにしたいんです。そうか、あんたの体重が早く70キロ台に戻るようにと祈っとるわ。ところであんたポロシャツもジャージも全部ウンブロじゃなかったアンブロやけどなんか理由あるのん。イギリスかぶれのせいというのもありますが、やはりデザインが好きだからですね。今日紺色のジャージを着ていますが、黒色と緑色のんも買おうかなと思います。Lサイズがぴったりなので、オッサンサイズは回避できそうです。そら、おめでとさん。