プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 女性ボーカルを聴いて涙が出た編

わしの子供の頃はグループ・サウンズの全盛時代で、特にザ・タイガースとブルー・コメッツは人気があった。わしも「モナリザの微笑み」「花の首飾り」「ブルーシャトウ」「北国の二人」は大好きでよく口ずさんどった。「星影のワルツ」も大好きでよう歌っとったんやが、女性ボーカルと言えば美空ひばりの「柔」くらいやった。そやけど中学生になって幅広く音楽を聞くようになってからは女性の演歌歌手やフォーク歌手も聞くようになった。そやけどそれよりよう聞いたのは洋楽のカーペンターズやった。わしの家は貧乏やったから小遣いが少なかったし、レコードを買うためにはそれこそ相当な覚悟が必要やった。1ヶ月の小遣いの4分の1がなくなるから、厳選して買うたもんやった。その後もわしはグループ・サウンズのような数人で男が歌うちゅーのが好きで、高校生の頃は、かぐや姫とナターシャセブンばかりを聞いとった。社会人になって、女性ボーカルも聴きたいなぁと思うてたところ、サラ・ボーンちゅー人が歌ってるマイ・ファニー・ヴァレンタインちゅー曲が流れて、前に聞いたラヴァーズ・コンチェルトも良かったんで、思い切って中古レコードのベストアルバムを買うたんやが、マイ・ファニー・ヴァレンタインは入っとらんし、しゃばだばちゅうてスキャットばっかりやっとった。まあジャズを聴くのは10年早かったんやろ。最近のラジオのリクエスト番組はKBS京都のゴーゴーリクエスト以外は最近の曲(ちゅーてもわしの場合平成になって以降は最近なんやが)ばっかりやし、レコードを購入する意欲がなくなってしもうた。船場は主にクラシックレコード、CDを購入しとるが、最近はジャズのCDも購入しとるようや。あいつ、わしと同じで派手にスキャットを入れる黒人ボーカルは苦手や言うとったけど、一体何を聴くんやろか、訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかーっ。はいはい、兄さん、ぼくはジャズも好きですが、余りに範囲が広くなりすぎるんで今回はジャズの女性ボーカルだけに限らせてください。たんぽぽの「嵯峨野さやさや」は大好きなんですが今日はこれだけにしときます。20年程前に購入したカサンドラ・ウイルソンのBlue Skies は一時よう聴きましたが、やっぱり、好きな女性ボーカリストはアニタ・オデイとヘレン・メリルで、「ジス・イズ・アニタ」「ヘレン・メリル・ウィズ・ストリングス」はよう聴きました。アニタが歌う「バークリー・スクエアのナイチンゲール」「タイム・アフター・タイム」、ヘレン・メリルが歌う「ライラック・ワイン」「マウンテン・ハイ・ヴァレイ・ロウ」「ビューティフル・ラヴ」「マスカレード・イズ・オーヴァー」が好きで、「バークリー・スクエアのナイチンゲール」は聴く度に胸がジーンとしました。私は男性の歌でジーンと来ることはなく、寺島靖国さんが言われていたように女性ボーカルには癒されることもあるようです。あんた一時アン・バートンに凝ってたんとちゃうのん。そうでした、 Ballads & Burton の中の「トライ・ア・リトル・テンダネス」「いそしぎ」、Blue Burton の中の「バット・ノット・フォー・ミー」「サニー」は大好きな演奏です。それで他のアルバムも探してみたのですが、思うのがなくて...わしが促してばかりするのはようないんやが、あんたジョー・スタッフォードも好きなんやろ。そうでした、20年程前に、「ニューヨークの秋」というアルバムを購入したのですが、このレコードはどの曲も素晴らしかった。それで他のレコードをと考えたのですが、なかなかいいのがなくて。それでなかなか次が買えなかったのですが、もしかしたら、ジョー・スタッフォードが良いのはポール・ウエストン楽団の伴奏がいいのではないかとふと思ったのです。それで先週末にアマゾンで Starring Jo Stafford と Swingin' Down Broadway を購入したのですが、どちらのアルバムも素晴らしかったです。ショパンの「別れの曲」に歌詞をつけた No Other Love を聴いて思わず涙がこぼれました。それほど説得力のある美しい女性ボーカルなのです。基本的に曲の内容が分からずに心が動かされるというのはないはずなの(日本盤で歌詞カードがあるのでじっくり味わってみようと思っています)ですが、ジョー・スタッフォードの歌声は別格でした。ポール・ウエストン楽団の演奏もええからやと思うで。お前、ドリス・デイがええ言うとったんちゃうのん。「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」はサイコーですわって。ほやけどその後が続かんかった。「ケ・セラ・セラ」「センチメンタル・ジャーニー」だけやのうてドリス・デイのアルバムにはスタンダートのええやつがあるからもっと聴かんとあかんと思うよ。でも、まあ、しばらくはジョー・スタッフォードを聴こうかなと思ってます。まあ好きにして。