プチ小説「青春の光 109」

「は、橋本さん、どうかされたのですか」
「前回、船場君のお母さんが快方に向かっているという話をしたが、コロナ禍も大分収まって来てマスクの着用も大幅に緩和されている。世の中がコロナ禍以前の落ち着いた状況に戻りつつある、それに加えて船場君も64才になったのだから、もう少し頑張ってほしいという気持ちもある」
「ぼくも同じです。あと10年は船場さんにいろんなことで頑張ってほしいと思います」
「そう、そこで実現可能なこと、不可能なこと、夢みたいなことをここでいろいろ取り上げて整理してみたいと思うんだが」
「大賛成です。新年度が始まってすぐですし、いい機会だと思います」
「まずは3年余り開催できなかったLPレコードコンサートの話をしようか」
「いろんな面で落ち着いて来たので、船場さんは3月18日にヴィオロンのマスターに相談しに行かれたようです」
「ヴィオロンのマスターはどのように言われたのかな」
「第3日曜日はSPレコードを聞いていただく催しがあるので避けてほしい。それ以外の日曜日、土曜日の昼間ならLPレコードコンサートを開催するのは可能。ただし時間は2時間以内にしてほしいと言われたそうです。それで開始時刻を今までと同じにして午後1時から3時まででお願いしますとマスターに言われたようです」
「今まで、午後1時から休憩をはさんで午後5時過ぎまでだったので、半分より短い時間になるんだね。そうなると今までと同じようなプログラムは無理だね」
「そうですね、今まではある演奏家(指揮者、演奏家、アンサンブルなど)で特集を組むことがほとんどだったのですが、これからは趣向を変えないといけないですね。誰々特集もありですが、例えば、「プレミアム盤を聞く ヴァイオリン編」とか「プレミアム盤を聞く デッカ編」とか「ベートーヴェンの交響曲の名盤」というふうに今までと違った特集を組むことが必要でしょう。短くなった分、密度を濃くしないとずっと続けるのが難しくなると思います」
「6月4日(日)の開催に向けて準備を進めるようだね」
「船場さんは今までは1泊2日で東京に出掛けて開催されていましたが、今後は2時間になるので日帰りにされるようです。続けていくためには、旅費を抑えることも必要と考えたようです」
「今までは、名曲喫茶ライオンに2回行ったり、新宿のディスクユニオンで2時間中古レコード漁りをしたりしていたのだが、名曲喫茶ライオンに1回行って、ディスクユニオンに1時間いるくらいしかできないな」
「名曲喫茶ライオンが今のところ午後1時から開店となっていて、以前のように午前11時の開店と同時に入店して持ち込み盤を掛けてもらい、その後名曲喫茶ヴィオロンでLPレコードコンサートを開催するというのは難しくなりました。名曲喫茶ライオンが以前と同じ開店時間に戻るといいのですが」
「船場君が名曲喫茶の音に酔った始まりはライオンだった」
「そうですね、その名曲喫茶ライオンで持ち込み盤を掛けてもらうのも大きな楽しみですからね。京都の2つの名曲喫茶もいい音ですが、ライオン、ヴィオロンは音を聴く以外の魅力がある。英気を養えるのでずっと聴き続けたいと言われてました」
「他に船場君はしたいこと、目標なんかあるのかな」
「ウイークデーのほとんどに母校立命館大学の図書館で懸賞小説を書いているので、それが報われればいいなと考えておられるようです。今のところポプラ社新人賞だけに応募していますが、たくさん書けるようになったら他にも応募しようと考えておられるようです」
「アイデアがあるなら、なるべくたくさん小説を書いて応募するのがいいと思う。選考基準を突破したら後は選ぶ人の好みも考えないといけない。なるべくたくさん応募すれば、拾う神があるかもしれない」
「それから他にも船場さんは『こんにちは、ディケンズ先生』の第3巻と第4巻をよりたくさんの大学図書館に受け入れていただけたらと思われているのですね」
「そうだ、出版したのが2020年3月4日とコロナ禍で一番酷かった時期と言える。そんな時に部外者から小説を寄贈したいと言われても対応は難しい。出身大学の図書館も再度蔵書の依頼をして受け入れてもらえたのだから、もう一度出版社から蔵書依頼の手紙を付けて代行発送してもらえばいくつかの大学図書館が受け入れてくれるのではないかな」
「そうすれば公立図書館も受け入れてもらえるようになりますね」
「やはり多くの大学図書館が受け入れている本となると扱いが変わって来る。第1巻と第2巻が100近い大学の図書館が受け入れてくれていたので、公立図書館もほとんどが受け入れてくれていたが、第3巻と第4巻は10もない。これでは船場君も動けないだろう。もう一度代行発送してもらっても受け入れてもらえないなら諦めもつく」
「LPレコードコンサートの再開は6月に果たせるでしょうし、年内には代行発送してもらっていくつかの大学図書館に受け入れてもらったら、公立図書館回りで忙しくなるんじゃないですか」
「いや、船場君はしばらくは大学図書館で懸賞小説の原稿を書くのに時間を掛けると言っていた。幻冬舎ルネッサンス新社に代行発送してもらって大学図書館に蔵書依頼するのは早い目がいいが、公立図書館回りは70才になってからの楽しみに取っておいてもいいんじゃないのかな」
「そうですね、70才まで船場さんの楽しみが持続してくれるといいですね」