プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 クラリネットは生涯の友編」

わしは社会人2年目までは、父親が国鉄に勤めていたこともあって吹田市内の国鉄官舎に住んでいた。父親は国鉄民営化の1年前に依願退職をして中古住宅を購入して高槻に転居したが、それから16年間わしは両親と一緒に住んどった。今のところ吹田市に26年、高槻市に38年ということになるけど、小学校も中学校も高校も大学も一つの学校に所属して6年3年3年4年で終えたから、普通考えたら、年に1回くらい同窓会があってもええと思うんやが、小学生は社会人になって数年して集まって以来していないし、高校の同窓会は社会人になってから1回もしとらん。中学校、大学はゼロや。そんなにしたいんやったら、あんたが世話役になったらええがなと言われそうやけど、同級生の友人もおらへんし自分一人で全部のことはやれそうもない。そやから吉報が届くのを待つしかあらへん。大学に苦労して入ったこともあって4年で卒業するけど内容は濃くしようと大学時代はたくさんの友人を作ったけど、一人一人少しずつ音信が途絶えていったのは寂しい限りや。60代の中頃になると大学生の頃までの友人との関係は薄れるのやろか。これはわしだけのことなんやろか。船場もわしと同じで大学生までの友人とのやり取りは年賀状ぐらい、幼馴染みで親しくした人も2、3人いたけど音信不通になってしもうたと言うとった。結婚してへんから同窓会で息子や娘の自慢話ができんのはしゃーないけど、近況報告の中に自慢できることはあるやろから同窓会はあった方がええと思うんやがあいつどう考えとるんやろ、訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかーっ。はいはい、にいさん、お互いずっと楽しい毎日を迎えたいですし、そのために友人は不可欠ですよね。そうやで、話し相手がおらんちゅーのは寂しいことや。ですけど同窓会をするしないはまったく別の問題だと思うんです。息子、娘の自慢話も同様です。小学校の時は、1年生、2年生~4年生、5年生と6年生、中学生と高校生は毎年組替え、大学生の時は1回生と2回生はプロゼミのクラス、3回生と4回生がゼミのクラスとなっていて、私もにいさんと同じように高校までの卒業前のクラスで2、3回同窓会(小学校1回、高校2回(ただし生徒のみ))をしましたが、小学校の恩師は別として中学校、高校の先生は性格的に同窓会に参加してもらえそうでなかったのです。そうか、先生が乗り気でなかったら、同窓会はでけんわな。そうです、だから小学校だけが頼みなんですが、1回したきりで30年ほど連絡はありません。そしたらこれから寂しいんとちゃうん。そうならないように小学生の頃からクラス以外でも友人を作ってきました。2人の幼馴染みとは30代半ばまでつき合っていましたが、話題が家族のことになると所帯持ちでない私はそれに関しての提供する話題がなく会話がちぐはぐな気がしました。そうして共通の話題が話せる友人を求めるようになりました。私の趣味は西洋文学の読書、クラシック音楽鑑賞でしたので、そういう愛好家団体に入れないかと考えました。そんなんあるんか。結果として、ディケンズ・フェロウシップの会員になることとLPレコード・コンサートを開催することやクラリネットのレッスンを受けることで友人を作る切っ掛けができました。ディケンズ・フェロウシップの定期総会で好きな西洋文学の話をしたり、LPレコード・コンサートで好きなクラシック音楽の話をしたり、レッスンで講師の先生にクラシックの楽曲のことを掘り下げて教えてもらえるようになりました。それぞれ足を運ぶ必要がありますが、60才を過ぎても趣味のことで熱中できる時間が持てるのは有難いことだと思っています。そやけど愛好家団体でも話題提供が必要なんとちゃう。そうですね、『こんにちは、ディケンズ先生』は4巻で一応終わりですし、会員として理事の先生に喜んでいただけるようなことをしないといけないと思っています。LPレコード・コンサートは楽しんでいただけるレコードを購入して続けることが大切です。そしてクラリネットのレッスンは自分で楽しんで吹けるような楽譜を探すことが大切だと思っています。「清らかな女神よ」(ベルリーニ歌劇「ノルマ」から)を発表会で演奏したら、次はどうするん。6月24日に発表会があるのですが、練習を始めたのは3月からだったと思います。来年の発表会も多分6月でしょうから、7月から2月くらいまでは発表会で演奏したい曲以外の希望する曲のレッスンを受けることが可能になると思います。どんな曲をやりたいんや。「清らかな女神よ」を発表会で演奏するにあたり練習時に講師の先生(谷上先生)に伴奏ピアノを弾いていただいたのですが、発表会の演奏以外でも同様の伴奏をしてもらえるのなら、楽譜を購入する→歌のところをシャープ2つつけて2度上げるという方法で他の曲にも挑戦したいと思っています。ワーグナー歌劇「タンホイザー」の「夕星の歌」、ビゼーの歌劇「真珠採り」から「耳に残るは君の歌声」、ドリーブの歌劇「ラクメ」から「若いインドの娘はどこに」なんかをこの方法でやってみたいのですが、他にもいろいろあります。まず今から40年以上前私がクラシック音楽を聞き始めた頃に聞いて感動したラフマニノフのヴォカリーズ(江守徹さんの番組「夜の停車駅」のテーマ曲)です。これはよく楽譜集に掲載されているのですが、女性独唱用の楽譜を購入して同じ手順でクラリネット用の楽譜を作り発表会でやってみたいと思っています。他にあるんか。実はなかにし礼さんがシューマンの「女の愛と生涯」に歌詞を付けた楽譜を持っています。これを一度谷上先生に見てもらって、演奏できる曲があれば、歌のところをシャープを2つつけて2度上げる作業をしようと思いますが、こちらはピアノ伴奏の楽譜がなかったかもしれません。他にもメンデルスゾーンの無言歌集にきれいなメロディがあります。「甘い思い出」「五月のそよ風」「春の歌」なんかはクラリネットで演奏出来たらいいなと思います。シューベルトの歌曲でクラリネットで演奏してみたい曲は「菩提樹」「君はわが憩い」「楽に寄す」「水の上で歌う」「水車職人の花」「しぼめる花」「セレナーデ」「シルヴィアに」「春の想い」「流れ」などたくさんあります。まあ、あんたはそれらを少しずつ演奏してレパートリーを増やしていくつもりやろうけど、発表会でしか録音は残せんし欲求不満にならへんか。いえいえ、谷上先生の伴奏に乗せて演奏するだけで充分満足しています。独奏で発表会に出演するなら誰にも迷惑は掛けませんし、これからもずっとこの方法で発表会に出たいと思っています。