プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編」

福居は母親から依頼されてしばしばJR高槻駅傍の松坂屋地下1階の御座候で白あんと黒あんを数個ずつ購入するが、福居が順番待ちで並んでいると2人が並びその後にM29800星雲からやって来た宇宙人が並んだ。福居は自分の分を買い終えてその場にいたが、宇宙人が福居に、ドッチガエエンヤと尋ねたので、私は白あんの方が好きですと応えた。
「ソウカ、ソレヤッタラ、ニイサン、シロアン、ヒャクコチョウダイ」
福居は御座候の店員に迷惑が掛からないよう配慮して言った。
「普通同じ数の回転焼きを頼むものです。それにいつまでも置いておけないので、2度に分けて食べられるくらいの量がいいですよ」
宇宙人は左手を右の脇の下に右手を顎の下に持って来て、親指の腹で顎の下をこすりながらしばらく考えていたが、
「ソレヤッタラ、シロアンニヒャクトクロアンニヒャククダサイ」
と福居がさらに思い悩むような注文をした。
「そんなにたくさん購入して、どうやって持って帰るのですか、10個入りの箱が40ですよ」
「スコシソコラデクッタラ、ダイジョウブデス。アナタハ10ダケモッテクダサイ」
宇宙人は松坂屋を出ると携帯ショップに入った。
「ココナライスガアリマスカラ、スワレマス。アナタモカケテタベテクダサイ」
「ここは飲食店ではないので、御座候は食べられません。近くに〇トールがありますから、そこに入りましょう」
宇宙人と店に入り、アイスコーヒーを注文して対面して座った。
「少しくらいなら、ここで食べてもいいと思います。でもこっそり食べてください」
「ココニモオイシソウナンガアルヤン。トースト3ニンマエモタノンデ」
「トーストですか。御座候を食べて減らさなくてよろしいんですか」
「アンタハシンパイセンデヨロシ。ソレヨリコノマエチョットハナシテタ、シューマンノハナシヲシテクマセンカ」
「ええ、いいですよ。シューマンはもともとピアニストを志していたので、たくさんのピアノ曲を作曲していますが、中でも「子供の情景」「クライスレリアーナ」「謝肉祭」の3曲は親しみやすくメロディも美しいです」
「ワシモトロイメライヲキイタコトガアルヨ」
「ピアノ曲は他にも「フモレスケ(ユモレスク)」「幻想小曲集」「幻想曲」「森の情景」「交響的練習曲」などがありますが、これらを掘り下げた名盤がないのが残念です。また室内楽曲にも名盤がないのも残念なところです」
「コウキョウキョクハドウナン」
「第1番「春」、第3番「ライン」そして第4番が名曲ですが、特に第3番は美しいメロディに溢れています」
「キョウソウキョクモエエノガアルヤロ」
「特にピアノ協奏曲は素晴らしいですね。これはシューマンが奥さんクララのために一所懸命作曲したのだと思います。ヴァイオリン協奏曲も素晴らしいのですが、これは1937年録音のクーレンカンプのレコードしかいいのがないのでとても残念です。シェリングや最近のレコードもこのレコードと比較すると大きな開きがあります。難しい技巧をクーレンカンプが見事に弾いているのを聞くのは爽快です。チェロ協奏曲も名曲と言われますが、なかなかいいのが見つかりません」
「クララトイエバ、フタリガイチバンコウフクダッタトキニ、シューマンハタクサンカキョクヲツクッタンヤッタネ」
「1940年の歌の年ですね、でも代表曲の「詩人の恋」は失恋の歌ですし、「女の愛と生涯」は子供が生まれて幸せな時に夫が死んでしまうという悲しい曲です。明るい曲が多い「リーダークライス」や「ミルテの花」をじっくり聴いてみたいところですが、いいのがなくて」
「アンタノシューマンベストファイブハナニカナ」
「1.交響曲第3番「ライン」 2.ピアノ協奏曲 3.ヴァイオリン協奏曲 4.「子供の情景」 5.「女の愛と生涯」でしょうか。シューマンは、ピアノ独奏曲、歌曲、室内楽曲の中に知られていない名曲がたくさんあると思います。明るい音色で掘り下げて解釈できるピアニストが現れてシューマンの歌曲やピアノ曲の名曲を紹介してくれたらなあと思うのですが、なかなか現れてくれません」
「ワシハ、ラインヤピアノキョウソウキョク、ヴァイオリンキョウソウキョクナンカヲキクトロマンハノホウガガアチコチニタダヨッテルキガシテコウフクナキブンニナル。ホカノロマンハノガッキョクハシューマンホドコクナイ。ソヤケドシューマンバッカリキイテタラシンシンニヨクナイキガスルンヤ」
「そうですね、そういう考えにピッタリなのがショパンのピアノ曲の多くでしょうね」