プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編4」

最近、福居は母親からのリクエストもあって夕ご飯のおかずをこしらえるが、母親は特に豚肉のオリーブ油炒め、蒸しサツマイモ、ミートソーススパゲティは美味しいと言って食べてくれる。と言っても、ミートソーススパゲッティの麺はやわらかいうどんの方がいいとの母親の希望から、スパゲッティ麺の代わりに3パック100円のおんちのうどんを使うし、豚肉とサツマイモは母親の希望で平和堂で買っている。平和堂の「おいしい豚肉」(1パック598円プラス消費税)は味わいがあって美味しく、平和堂で購入できる茨城県産のサツマイモはほんのり甘みがあり美味しいからである。福居がそれぞれ1パックをかごに入れレジに行こうとすると後ろから声が掛かった。
「アンタトオナジモノヲ10パックズツカオウトシタケド、3ツズツシカナカッタネン。ドウシタラエエ」
「ああ、谷さん、あなたもこのスーパーで買物されるのですね。陳列されてないのなら諦めるしかないですね」
「ワシハドチラカトイウトギュウニクヨリサッパリシタアジノブタニクガスキヤネン。オリーブ油デイタメテ、シオコショウヲフルダケデモオイシイカラナ。ホンデサツマイモハホシイモデモユウメイナイバラキケンサンガイチバンヤネ。3パックダケヤトモノタランワ」
「足りないなら、おんちうどんとロース豚肉と白ネギを買って帰って焼うどんでもしたらどうですか」
「ソウヤナ、ソウスルワ」
福居がレジを出たところで待っていると、M29800星雲からやって来た宇宙人が5円の袋10袋におんちのうどん、ロース豚肉、長ネギをぱんぱんに詰めて福居の前に現れた。
「オマットサンデシタ。キョウハチョビットデイイカラ、メンデルスゾーンノメイバンノハナシヲキカセテ」
「まあ折角遠くからおいでになったんですから、近くの喫茶店に入りましょう。阪急オアシスの近くにあったと思いますし」
福居がホットコーヒーを頼むと宇宙人が、コンナニアツイノニソレデエエトオモットルノカと絡んだ。
「でも、水っぽいアイスコーヒーより多少熱くてもこっちの方がいいですね。冷たい水が欲しければお水をお願いすればいいですし」
福居は宇宙人が何を注文するのか楽しみだったが、アイスコーヒークダサイと言ったので遠慮しているのかなと思った。
「アンタハワタシガアイスクリーム10ニンマエトカイワンカッタノヲフシギニオモウトルヤロケド、ワシハミズデモダイジョウブナンヤ」
そういって宇宙人はウエイトレスにポットを持って来てもらい、自分でグラスに水を注いで立て続けに10杯飲んだ。
「コレデヨシ。ホタラメンデルスゾーンノハナシヲシタッテ」
「わかりました。メンデルスゾーンと言えば、交響曲第3番「スコットランド」、交響曲第4番「イタリア」、序曲「フィンガルの洞窟」、劇付随音楽「真夏の夜の夢」、ヴァイオリン協奏曲、弦楽八重奏曲、無言歌集が有名ですが、他に谷さんがお好きな曲がありますか」
「交響曲第1番、第2番、第5番はナンカイカキイタケド、エエトハオモワナンダ。ピアノ協奏曲第1番、第2番モオナジヤネ。カンゲンガクキョク、シツナイガクキョクモホカニエエノハナカッタワ」
「でも先程あげた曲はいずれも美しく繊細で、メンデルスゾーンは風景画も上手に描いたので、「スコットランド」「イタリア」「フィンガルの洞窟」は情景が目の前に浮かんでくるようです。谷さんもそう思いませんか」
「ソレヨリ、ヴァイオリンキョウソウキョクガエエヨ」
「メンデルスゾーンの代名詞と言えると思います。ベートーヴェン、ブラームス、シューマン、チャイコフスキー、シベリウスなどすばらしいヴァイオリン協奏曲がありますが、ヴァイオリン協奏曲でまず浮かぶのはメンデルスゾーンでしょう。ちょうどチェロ協奏曲がドヴォルザークであるように」
「ダレノエンソウガエエノン」
「私はカンポーリが好きですが、曲自体が完成されたものなので名演奏家がどのようにこの曲を解釈して演奏するかです。この曲なら、どの名演奏家の演奏でも一度聞いてみたい気がします」
「コウキョウキョクハ、3バンガマークデ4バンガミュンシュカナ」
「そうですね、ペーター・マーク指揮ロンドン交響楽団が演奏する、交響曲第3番「スコットランド」と序曲「フィンガルの洞窟」のレコードは永遠の名盤だと思います。交響曲第4番「イタリア」もシャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団のがいいと思います。劇付随音楽「真夏の夜の夢」はアンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団が最高です」
「ムゴンカハギーゼキングガエエンヤロ」
「ヴァルター・ギーゼキングの無言歌集は特に旋律が美しい曲ばかり(17曲)を集めた素晴らしいレコードです。最初の「甘い思い出」を聞いたら誰でもこのレコードの虜になると思います。「5月のそよ風」「春の歌」は有名です」
「メンデルスゾーンハエンソウカトシテモユウメイヤッタカライソガシカッタンヤロネ」
「そうですね、そうして38才の若さで亡くなってしまうのです。あと有名な歌曲「歌の翼に」がありますが、他に有名な歌曲はありません。交響曲第5番「宗教改革」もそれほど魅力的な曲ではありません。大作のオラトリオ「エリア」も評価は高くありません。シューベルトやブラームスならロマン派らしい旋律が涸れることのない泉のごとく溢れ出たのでしょうが、メンデルスゾーンはそうではなかったのでしょう。でも彼が一所懸命作曲したいくつかの曲は確実に多くのクラシック愛好家の心に響くすばらしい曲となったのです」
「ホンマ、ソノトオリヤネ」