プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編15」
福居は2020年3月から3年余りコロナ禍でクラリネットのレッスンを中断したが、中断するまで晩御飯はいつも四条烏丸交差点近くのすき家で食べていた。豚丼に卵を乗せたのか、鉄火丼の大盛りを注文していた。店内は狭く固定式の丸椅子で座り心地も悪かったが、空腹を満たしてレッスンを受けるためには都合がよいのでレッスン前は必ずここで夕食を食べていた。2020年3月にコロナの緊急事態宣言が発せられて6月にレッスンは再開したが、2022年10月まで福居はクラリネットのレッスンを自粛していた。レッスン再開後は時間に余裕ができたので、福居は地元高槻まで戻ってゆっくりと晩御飯を食べるようになった。3年半近く福居はすき家で食事を取ることはなかったが、京都四条大橋近くを歩いているとすき家の看板が目に入ったので、久しぶりに入ってみることにした。福居がメニューを見ていると、M29800星雲からやって来た宇宙人が福居に、ココハナニガエエノンと声を掛けた。
「今、メニューを見て気が付いたのですが、新商品として、ニンニク牛丼、にんにくファイヤー牛丼なんかがあります。挑戦されてはどうでしょうか。私は豚丼の代わりに牛カルビ丼を出すようになったようなので、ダブルニンニク牛カルビ丼の大盛りを頼もうかなと思っています」
「ワシハナニガエエノカワカランカラアンタトオナジデエエヨ。ホンデー、キョウモクラシックノハナシシテチョウダイ」
「わかりました。予告したようにJ.S.バッハ以外のバロック音楽をやりますが、谷さんはどんな作曲家が浮かびますか」
「ナントイッテモ、ヴィヴァルディヤロネ。アトハパッヘルベル、アルビノーニ、マルチェッロ、チマローザトカカナ」
「そうですね、パッヘルベルのカノン、アルビノーニのアダージョ、マルチェッロやチマローザなどのオーボエ協奏曲は有名ですが、ヴィヴァルディの輝きを前にすればすべてが霞んでしまいます」
「シキハニホンノキコウトモピッタリヤネ」
「「四季」の他にもたくさん素晴らしい曲があります」
「キョウソウキョクカライコカ」
「「和声と創意への試み」作品8の中に12曲のヴァイオリン協奏曲があり、最初の4つが「四季」の「春」「夏」「秋」「冬」です。残りの8曲のヴァイオリン協奏曲も一聴の価値があると思います。他にヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集としては、「調和の霊感」「ラ・チェトラ」「ラ・ストラヴァガンツァ」それから2台のヴァイオリンのための協奏曲があります」
「ヴィヴァルディモオーボエキョウソウキョクヲサッキョクシテタヤンネ」
「オーボエはソロだけでなくクラリネット、ヴァイオリン、ホルン、ファゴットと一緒に演奏している協奏曲もあります」
「フルートキョウソウキョクヤファゴットキョウソウキョクモアルネ」
「ぼくは前からランパルでフルート協奏曲を聞きたいと思っているのですがなかなか叶いません」
「ニコレトイ・ムジチモエエヨ」
「有田正広さんを聞く機会がなかったので有田さんも聞いてみたいです」
「シュウキョウキョクハエエノガアルカナ」
「グローリアを一度聞いてみたいのですが、機会がありません」
「キカイガナイトイウコトハナイトオモウヨ。ユーチューブデサガシタラ、ヒトツクライハミツカルヤロカラ」
「一度やってみます。ヴィヴァルディはたくさんのヴァイオリンの名曲を残していますが、協奏曲ばかりです。セレナード、ディヴェルティメント、シンフォニーなど違った形式やヴァイオリン独奏など違った演奏形態の曲がいくつかあれば退屈しないし飽きなくていいと思うのですが」
「ソレデモナガネンツミカサネタサッキョクギホウハジックリキケバアタラシイセカイヲミセテクレルダロウカラヨユウガアレバヴィヴァルディヲキイタホウガエエヨ。ヴィヴァルディハヴァイオリンオンガクノサイコウホウトシンジテ」
「わかりました」