プチ小説「インパチェンスの花が咲く頃に 3」
「ねえねえ、お母さん、去年はお母さんが入院したのでインパチェンスのお花が少ししか見られなかったけど、今年はどうかしら」
「そうねえ、体調が戻らないのでお花の世話が少ししかできなかったの。だから一昨年の様には咲かないかもしれないわ。種も蒔いていないからね」
「でもインパチェンスの花は溝でも咲いているのを見たことがあるから。強い花だと思うの。だから少しは見られるかもしれないわね」
「そうね、私、そんな健気で強いお花が好きなの。あなたもそんな女の子に育ってほしいと願っているのよ」
「私、頑張るわ。でもこのお花は夏の初めから秋まで咲いているから、真夏に咲いているのを見ることがあるわ。そうだ昨日も家の前の溝で蕾を見つけたわ」
「そうなのね、でも明日台風がやって来るから、流されてしまうかもしれないわ」
「お花が咲かないうちに流されてしまうの。かわいそうだわ。助けてあげられないの」
「溝に蓋がしてあるからそれを持ち上げないといけないわ。重いからお母さんやあなたの力では持ちあげられないわ」
「重い鉄板じゃないから、持ち上げられると思うわ。やってみましょうよ」
「柵のような蓋だけど以外に重いのね。お母さんも手伝ってくれたけど駄目だった」
「そうね、インパチェンスの蕾がいくつかあるけど、台風で豪雨になったら流されてしまうかもしれないわね」
「何とか溝から助けることが出来ないかしら。直接引き抜かないと駄目かしら」
「💡 そうだわ、うまくいくかもしれない。ちょっと待っていてね」
「お母さん、納屋に何か取りに行ったけど...それパン屋さんのトングみたいね」
「これはもともと隙間にある落ち葉を拾うものだけど、これを使えばうまくいくかもしれないわ」
「そうね、やってみるわ。まずは根っこのところを柔らかくして...うまく抜けたわ。後は柵の隙間から取り出しましょう」
「うまいわ、全部取り出せたわね。今年はインパチェンスの花は見られないかと思ったけど、あなたのお陰で見られるわ」
「でもお花の種が溝に残っていて咲いてくれるなんて思わなかったわ。どこかで2度の冬を越したのかしら」
「去年も溝で花を咲かせたのかもしれないわ。そうして誰かが気付いてくれるのを待っていたんだと思うわ」
「去年は見つけてもらえなかったけど、今年は見つけてもらえたのね」
「そう、きれいな花が今年も咲かせられるよう気を付けていたから、今年は見つけてもらえた。早く咲くといいわね」
「今年はたくさんのインパチェンスの花は見られないけど、こうして頑張って咲いた花を見られるから。この花は大切にしたいわ」
「空いたプランターがあるから、そこで大切に育てましょう。あなたのお陰で幸せな気分になれたわ。ありがとう」
「私はお母さんのお陰でインパチェンスの花が見られるから幸せよ」