プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編27」

福居は今年は中秋の名月と満月が重なり赤みがかったきれいな月が見られるとテレビのニュースで聞いたので、松坂屋の地下でお月見団子を購入して帰ることにした。高槻市にはいくつか和菓子屋があるがはにたん(高槻市のマスコットキャラクター)どら焼きを販売している店で買うことにした。この店のお月見団子は外観は赤福餅に似ているが、あんが海苔巻きおにぎり(俵おむすび)のように中央にしかなく福居はあんを節約しているとつまらない詮索をした。でも食べるとおいしいからまあいいかと思い直して4個パックを購入することにして支払いをしていると、M29800星雲からやって来た宇宙人が福居に声を掛けた。
「ココハナニガウマインヤ」
「はにたんどら焼きもおいしかったです。今日は中秋の名月なのでお月見団子を購入して帰ろうと思っています」
「チュウシュウノメイゲツナンヤネ。ソヤケドワシガキオクシテイルツキミダンゴトチョットチガウキガスル」
「そうですね、大体お供え物を載せる台(三方)に5段重ねくらいに丸い白い団子が乗っているというのが多いですね。でもあんが乗っていない砂糖味だけの白団子だけでは2、3個食べたら飽きてしまいます」
「ホタラ、ソノオダンゴサンハジッサイヲエガイテイナイト、コウイウワケヤネ」
「そういうわけですが、三方に乗ったおだんごさんにあんが乗っていたり、みたらしが塗りたくられてあったりするとごてごてしていてお供えのおだんごさんのようには見えません」
「ソウカモシレンガ、ジッサイニタベルノハソノノリマキミタイニアンヲマイタダンゴヤサンコクシザシノミタラシダンゴナンヤ。ワシラウチュウジンニハヒトメミテワカランカラスンナリウケイレラレヘンノヨ」
「そうかもしれませんが、ぼくは透明のパックに並んだ串刺しのお団子よりも三方に5段重ねになったお団子の方が月見団子らしく見えると思います。ましてそこにあんこをかけたりすると最悪です」
「ソレモソウヤネ。ワカッタ、アンタノイウコトヲウケイレルワ。ホンデ、キョウモクラシックオンガクノハナシヲシテクレルンカ」
「もちろん、いいですよ。今日はフランス人指揮者の十八番という話をしましょう」
「フランスオンガクイウタラ、ドビュッシー、ラヴェル、サン=サーンス、フォーレ、ビゼーナンカカナ」
「そうですね、あと入れておきたいのはベルリオーズとフランクですね。ショパンは新天地を求めてパリに出ましたが、やっぱりポーランドの作曲家に入れておきます。サティ、オネゲル、プーランク、イベールなどの作曲家は有名なオーケストラ曲がないので取り上げません。ところで谷さんはフランスのオーケストラ曲つまり交響曲と管弦楽曲ですが、どんな曲が浮かびますか」
「ヤッパリベルリオーズノゲンソウコウキョウキョク、フランクノコウキョウキョクソレカラサン=サーンスノコウキョウキョクダイ3バンノオルガンツキガサイショニクルカナ。ソノツギニドビュッシートラヴェルノカンゲンガクキョクカナ。フォーレヤビゼーノカンゲンガクキョクモエエトオモウヨ」
「そうですね、フランクは厳密に言うとベルギー出身の作曲家ですが活躍したのはフランスでした。幻想交響曲はベルリオーズが作曲した最も優れた曲でフランス音楽の最もすばらしい曲だと思います。5楽章あって自由な形式で書かれていて楽章ごとに標題が付けられていて想像力を刺激します。私は幻想交響曲とサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」をフランス音楽の優れたものと考えます。その次はやはりドビュッシーとラヴェルの管弦楽曲でしょう。こちらはたくさんありますのでひとつずつあげるとすれば、ドビュッシーは小組曲、ラヴェルはマ・メール・ロアでしょうか」
「ワシハドビュッシーヤッタラツキノヒカリトアマイロノカミノオトメガエエナ」
「今挙げられたのはいずれもピアノ曲で「月の光」はベルガマスク組曲、「亜麻色の髪の乙女」は前奏曲集第1巻に入っています。この2曲はオーケストラ用に編曲したものがよく演奏されます。フォーレの歌曲「夢のあとで」、合唱曲「パヴァーヌ」も管弦楽演奏されます。ビゼーは「アルルの女」組曲のメヌエットが有名ですが、個人的には歌劇「真珠採り」の中の「耳に残るは君の歌声」が好きですね」
「トコロデ、ドンナシキシャガエンソウシテルノ」
「グラモフォンでシャルル・デュトワがほとんどのフランス音楽を録音しましたが、私は買わなかったです。デュトワの音は典雅で大らかな感じのフランス音楽らしくないと思ったからです」
「ホタラ、アンタハダレガエエノ」
「ミュンシュ、クリュイタンス、マルティノンあたりでしょうか。他にはスイス人のアンセルメもたくさんフランス人作曲家の曲をレコーディングしています。ポール・パレ―もラヴェルの曲を録音していて、「マ・メール・ロア」はすばらしい演奏だと思います」
「ワシハラヴェルノボレロガダイスキナンヤケド、ダレノンガエエノカナ」
「クリュイタンス、ミュンシュでしょうか。アンセルメやパレ―も面白いかもしれません」
「ゲンソウコウキョウキョクハモントゥーシキサンフランシスココウキョウガクダンノガエエノカナ」
「それとミュンシュの2つのレコード、ボストン交響楽団とパリ管弦楽団を指揮したものでしょうか。フランス人指揮者でしたらやはりクリュイタンスとなります。ぼくのおすすめはモントゥー盤です。一度聞いたら病みつきになる魅力を持っていると思います」