プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編30」
福居はディケンズ・フェロウシップ秋季総会に参加するため東京に来ていたが、午後3時から始まった総会と研究発表が終わり懇親会に出席した後で大阪まで帰るのは無理と思い、ホテルで一泊して帰るために予約をしていた。せっかく東京に来たのだから思う存分名曲喫茶でレコードを掛けてもらいたいと思ったが、名曲喫茶ライオンは午後1時から、名曲喫茶ヴィオロンは午後からの営業なので、午前10時に吉祥寺のホテルを出て月島のバンビで午前11時30分にもんじゃ焼きを食べて、その後にライオン→ヴィオロン→ライオンで持参したレコードをできるだけ掛けてもらうことにした。新宿から大江戸線で月島まで行き、7番出口から出ると近くにもんじゃ焼きストリートがあった。しばらく行くと右手にバンビ3号店が見えてきたが、店の近くまで行くとM29800星雲からやって来た宇宙人が福居に声を掛けた。
「ココハナニガウマインヤ」
「この店はお好み焼きや鉄板焼きもありますが、もんじゃ焼きがとても美味しいです。海鮮セットにチーズ、明太子、もち、コンビーフ、たこをトッピングすると最高です」
「デモナーモンジャヤキハミタメガワルイシ、オコゲヲタベルンヤロ。ワシガタベタトキハタマゴトカツオダシノアジダケガクチニノコッテチットモオイシクナカッタノヨ」
「そうですね、ぼくも最初はそうでした。でもお好み焼きと比較してよく考えるとわかるのですが、もんじゃ焼きはソースをかけないで食べます。ということは生地自体に味が付いていないとちっとも美味しくないということになります。そうすると塩味がする味わいがあるものを2,3トッピングするのが不可欠になります。その食材としてピッタリなのが明太子、コンビーフ、ベーコン、ウインナー、キムチ、チーズなどになります。またトッピングや生地にボリュームがないのでもちもトッピングした方がいいと思います。これらを適度に組み合わせたものにイカ、タコ、ホタテ、エビなどの魚介類を加えると味わいが増し申し分のない味になります。さらに焼く過程で随時食することができるおここげは旨味のエッセンスと言えるものでもんじゃ焼きをお好み焼きにない深い味わいにします。ぼくはお好み焼きも好きですが、この店で食べるもんじゃ焼きは他店と比較してはるかに美味しいですしこなもんの王者と言えると思います」
「ソウカ、アンタガソンナニスキナンヤッタラツキアワセテモラウケド、クラシックオンガクノハナシモシテホシインヤケド」
「いいですよ、じゃあ、今日は昔のピアニストでぼくが好きなコルトーについてお話ししましょう」
「コルトートイウトショパンヒキヤネ」
「確かに彼が録音した、前奏曲集、バラード集、練習曲集は聞きごたえがありますが、ロマン派の作曲家の曲のレコードもいくつかありますし、ベートーヴェンの室内楽曲も2、3あります」
「カザルス、ティポートイッショニロクオンシタ、ベートーヴェンノ「タイコウ」ヤティボートロクオンシタ「クロイツェル・ソナタ」ノコトヤネ」
「そうです、それからショパン以外のロマン派の作曲家の楽曲のコルトーの録音としては、メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番、ブラームスの二重協奏曲、シューマンのピアノ協奏曲、シューマンのピアノ独奏曲 謝肉祭、クライスレリアーナなどがあります」
「ワシハティボートロクオンシタフランクノヴァイオリン・ソナタガイチバンスキヤナア。アンタナカノノクラシックデコノレコードヲリクエストシタンヤロ」
「そうでした。それをすっかり忘れていました。店内にある黒板にフランク ヴァイオリン・ソナタと書いたのを覚えています。今から30年くらい前だったでしょうか」
「ハジメテ、トウキョウノメイキョクキッサトカチュウコレコードテンヲマワッタトキナンヤロ」
「そうです。レコードマップという本が出て近畿の中古レコード店を回ったら、名盤を購入できたから、東京にも行ってみよう。ついでにクラシックとライオンにも行ってみようと思ったのでした」
「トイウコトハ、ヴィオロンハソレカラ5、6ネンシテカラヤネ。ライオンデハナニヲカケテモロタン」
「それもはっきり覚えています。持参したハイフェッツとスタインバーグが共演したブルッフのスコットランド幻想曲でした。それから8年程して、ヴィオロンでLPレコードコンサートを開催するようになるのですが、すべてヴィオロンのマスターのおかげです」
「コレカラモ2、30ネンタッテカラデモエエオモイデニナッタトイエルコトガタイケンデキタラエエネ」
「そうですね、そういうことがあれば、もっと頑張れると思います」