プチ小説「友人の下宿で22」

「みなさんお忙しいところお集まりいただき有難うございます。本日は古典派の弦楽四重奏曲をお聴きいただく
 とのことです。それでは高月さん、張り切ってどうぞ」
「みなさんもご存知のように、クラシック音楽で古典派と言えば、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン
 となる訳なのですが、後にブラームスが出て、古典派のような構成がしっかりしていてしかも内容も充実している
 作品を残し新古典派と呼ばれています。4人の音楽家に共通して言えるのは、交響曲の名曲をいくつか残している
 ことですが、弦楽四重奏曲について言えば、残念ながら、ブラームスは他の3人と違い名曲を残していません。
 またベートーヴェンが亡くなって6年が経過してブラームスが生まれたことを考えるとブラームスを新古典派と
 称するよりロマン派の作曲家と位置づける方が良いように思いますが、すべてわたしの独断と偏見かもしれません。
 今日は、古典派の作曲家3人の弦楽四重奏曲の名曲をお聴きいいただきます。最初にハイドンの弦楽四重奏曲第78番
 「日の出」です。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の演奏でどうぞ」

「次にお聴きいただくのは、モーツァルトの弦楽四重奏曲ですが、明るい(暖かい)雰囲気の曲想から「春」という標題が
 つけられることもある、第14番をお聴きいただきます。ウィーン・アルバン・ベルク四重奏団の演奏でどうぞ」

「最後にお聴きいただくのは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」です。当時ウィーンに
 駐在していたロシア大使ラズモフスキー公に献呈されたためこの別名がありますが、ベートーヴェンの壮年期の
 エネルギーが強く感じられる音楽です。演奏は、ブタペスト弦楽四重奏団でどうぞ」

「百田どうだった」
「ハイドンとモーツァルトは奥さんの尻に敷かれていたようだけど、ベートーヴェンやブラームスのように独身貴族で
 一生を終えるのも寂しい気がする...」
「なにを言っているんだ。まだ君は20才を過ぎたばかりじゃないか。最近、大失恋でもしたのかい」
「いいや、そうじゃないんだ。高月さんが飲み会の際に恋愛がうまくいかない話ばかりをするものだから」
「高月さん、どうですか」
「どうですかって...。ああゆう場では、肴になると思って話したんだが...」
「じゃあ、あれは作り話なんですが...」
「いや、すべて実話だ」
「......」
「......」
「......」
「......」