プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編35」

福居は大学図書館を利用する時はソフトドリンク2本を飲み、ホリーズ・カフェでは週に2回あんバタートーストを頼むことがある。また最近は仙太郎のおはぎが好きになり機会があれば京都大丸か京都高島屋の地下食品街で買って食べようと思っていた。福居は年が明けてから体調が大分良くなり腿上げ1時間して腹筋も15分してと筋トレに励んでいたが、一向に体重が減らないため悩んでいた。
<おかしい、自分は結構歩いているし夜には筋トレをしているから体重が減らないはずはないんだが>
そう思うには思ったが、朝のうちに大学図書館で甘いソフトドリンクを1リットル近く飲んだり、ファミリーマートであんこ缶を買って帰ってあんバタートーストを2枚食べることがあった。案の定、ある日保健所から、2月15日に糖尿病予備軍の人(HbA1C値が5.6~6.4)の人を対象に教室を3日間開催するので時間があれば参加してくださいとの電話が入った。福居は働かず大学図書館に月の半分くらい通いながら母親の介護をしているので時間に余裕はあったが、初日の先生の話だけを聞くことにしてその旨担当の方に伝えた。
<昨年8月にコロナに感染してからは中耳炎、全身がしびれるぎっくり腰、肘痛、頭の天辺の粉瘤、歯肉炎があって思うように身体が動かせなかったから、運動不足になりHbA1Cと血糖値が上がったのだと思うが、身体を全快したことだし今まで通りの食事でも大丈夫だと思う。今日は午後2時からの開催なので大学図書館近くのハイライト、なか卯、松屋ではなく阪急高槻市駅の駅ビルの飲食店で昼食を取ろうと考えたのだった>
福居は阪急高槻市駅で下車しすると、改札を出て左手の方にある食堂街を歩いた。
<つけ麺のたけいもいいけど最近はラーメンを控えているからやっぱりカレーにしようかな。いつもヴァスコ・ダ・ガマでビーフカレーの大盛を食べるのだけど、今日は前から食べたかった津の田カレーにしよう>
そう考えながらお尻を突き出してメニューを見ていると、M29800星雲からやって来た宇宙人が福居に声を掛けた。
「アンタハオイシソウナタベモノガアッタラ、マワリノコトガキニナランノヤネ」
「ああ、谷さんでしたか。本当にここのカレーは美味しそうですよ。前にこの前を歩いた時に店頭のカレーの写真を見ていつか食べたいと思っていたんです。谷さんもどうです」
「オショウバンシテモイイヨ。アンタナニタベルン」
「カツカレーはカロリーが高そうですから、野菜いっぱいカレーにします。50円足したらサラダが付くからこれにしようかな。糖尿病教室を受講して下さいと保健所から連絡があったので、今から行くところなんです。その前に腹ごしらえをしようと思って。谷さんはビーフカレーにかつ3枚のトッピングですか」
「ワシノコトハドオデモエエガナ。イマタノンダノハエエトシテモ、コレカラハイッパイトカオオモリトイウノハヤメントエライコトニナルヨ」
「ええ、ぼくも37年間医療機関で働いて来たので、糖尿病の恐ろしさはよく知っています。連絡が入ってからは甘いソフトドリンクはほとんど飲んでいませんしあんバタートーストはやめました」
「ホンデモオオグイヤインシュモヤメントオナジコトヤ。ウンドウハシトルンカ」
「体調が良くなったんで、筋トレの量を増やそうと思っています。腿上げを10分増やして1時間10分に腹筋は15分から30分に増やそうと思っています」
「ソレヨリサンショクノリョウヲヘラスンガエエトオモウヨ。アンタハザンパンハゼロトイウコトデタベノコシヲセーヘンケド、ムリシテタベンノヤメタラドウヤ」
「そうですね、そのあたりのことを真剣に考えないと一生後悔することになりますよね」
「ワカッタンヤッタラ、ソレデヨロシ。キョウモクラシックオンガクノハナシヲシテクレヘン」
「わかりました。今日は今まで余り聞かなかったのですが、最近その音色と技巧に魅せられたフルーティストについてお話ししましょう」
「フルーティストチュートヤッパリフルーツガスキナンヤロネ」
「そうそうみかんにいちごにりんごにぶどうにめろん、ではなくて、はい、フルート奏者のことです」
「ソウナンヤネ、ソヤケドアンタハフルートノオンガクハニガテヤチューテタンチャウカッタ」
「今でも余り聞きません。室内楽のサポート的な役割の楽器と理解していますが、モーツァルトのフルートが主役の3つの曲は他に並ぶものがないフルート音楽の至宝と言うべきものです」
「ワテハフルートシジュウソウキョクガスキデンネン」
「そうですね、まずそれが上がります。そうして2曲のフルート協奏曲とフルートとハープのための協奏曲があります」
「フルートキョウソウキョクハメイバンガナイネ」
「断定するのはどうかと思いますが、クラリネット協奏曲に比較するとこじんまりとした印象はあります。ランパルとニコレのレコードを持っていますがあまり聞きません。ですが、フルートとハープのための協奏曲は5枚ともよく聞きます。この曲はフルートとハープが助け合って典雅な音楽を作り上げていくという本当に素晴らしい曲です」
「ヤッパリ、フルートガランパルデハープガラスキーヌデパイヤールシキノガイチバンエエンヤロ」
「そうですね、永遠の名盤と言えますし、このお手本となる名盤があるのでこの曲は永遠にクラシックファンを虜にすることでしょう。でもぼくは他にいいのがないのかと探しています。というのもこの曲のカデンツァ(即興演奏)のところが演奏者それぞれが趣向を凝らして演奏するからです」
「ランパル・ラスキーヌノホカニハドンナノガアルン」
「それでは指揮者、フルート奏者、ハープ奏者の順にあげていきましょう。1.リヒター、ニコレ、スタイン 2.ベーム、シュルツ、サバレタ 3.ペーター=ルーカス・グラーフ(指揮及びフルート独奏)、ホリガー 4.シェルヘン、ブールダン、ラスキーヌ この中で一番好きなのはグラーフのフルートの音が素晴らしい3ですが、2のサバレタの演奏も流石という感じです。ミュンヒンガー盤も聞きごたえがあるようなので、聞いてみたいなと思っています」
「ウチニコモッテステレオバカリキイテイタラカラダニヨクナイヨ。レコードヲキキナガラ、モモアゲ3ジカン、フッキン1ジカンシタラエエネン」
「そうですね、運動不足なのでそれくらいしないと効果がないですよね。レコードを聞きながらの筋トレもするように心掛けます」