プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編37」

福居は2週間に一度の割合で松坂屋高槻店地下1階の食料品売り場に行って、鶏肉ステーキ、サラダ、蓬莱の豚まん・餃子、御座候、菓子パンなどを購入するが、福居がデリカテッセン売り場でガーリックソースがかかった鶏肉ステーキを購入して、どのサラダにしようか迷っているとM29800星雲からやって来た宇宙人が福居に声を掛けた。
「ココハナイガウマインヤ」
「鶏肉ステーキ、ハンバーグ、焼豚、ローストビーフも美味しいですし、サラダも美味しいです。サラダはシーザーサラダ、ポテトサラダ、生ハムサラダ、セロリとリンゴのサラダ、スモークサーモンと野菜のサラダも好きですが、最近は栗とさつまいものサラダ、茄子と白ネギとニンジンのサラダをよく買います」
「ソウカ。ソシタラ、オバチャン、スモークサーモンノサラダ、ナマハムノサラダ、コールスローヲ1キロズツチョウダイ」
「谷さん、それはいけません。普通、50グラムか100グラムです」
「フツー、100グラムトイウガ、ワシハソンナンデハハラフクレヘンネン。モウチョットナニカクイタイネン」
「そうですか、個人的には蓬莱の豚まん、餃子、焼売も好きですが、焼き鳥やとんかつのコーナーもあるのでグルメの谷さんにはそちらの方がいいのかもしれません」
「ワシハワガシガスキヤカラハニタンドラヤキ20コモコウテカエロトオモウトルンヤ」
「じゃあ、この後和菓子のコーナーに行きましょう」
福居とM29800星雲からやって来た宇宙人が百貨店の外に出ると宇宙人は言った。
「コノチカクニモンジャヤキガタベラレルミセガアルヤロ。イマカラソコイコ」
「でも生ものを持って入るのはどうかと思います。保冷材は入っていますが」
「ソレハキニセンデエエンヨ。18フンイナイデモンジャヤキヲタベタラ、2フンデウチマデカエレルカラ」
「そうなんですね。宇宙船に乗れば2分でM29800星雲まで帰られるんですね」
「ソウヤデ、アルイテタカツキシエキマデイッタラ10フンハカカルケドナ。ウチュウセンニノッタラハヤイモンヤ」
「じゃあ、もんじゃ焼きを一緒に食べましょう」
二人が店に入って福居が店員に注文していると宇宙人は、ニイチャンセカシテワルイケドモンジャヤキ10フンデタベサシテと言った。店員が魚介類を生焼けで食べていただくわけに行かないので、トッピングがごはん、もち、チーズ、温泉タマゴ、チキンラーメンだけのもんじゃ焼きなら対応できますと言った。福居はそれだけでは味が薄いので岩塩もトッピングしてくださいと言った。
「トコロデナニカクラシックオンガクノオモシロイハナシシテクレヘンカ」
「今日は華やかさに欠けますが、玄人好みと言われる弦楽四重奏曲についてお話ししましょう」
「ピアノヤカンゲンガクトノキョウエンデナク、ゲンガクサンジュウソウ、ゴジュウソウ、ロクジュウソウデモナイシツナイガクキョクノコトヲハナソウ、トコウイウワケヤネ」
「そうです、シンプルなだけにきれいなメロディが際立っている気がします。そう言う意味で、アンダンテカンタービレが第2楽章になっているチャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番がまずあげられます」
「ワシハシューベルトノゲンガクシジュウソウキョクダイ14バン「シトオトメ」ガスキナンヨ」
「クライキョクヤケド、ワシハダイスキヤ。しまった谷さんのものまねをしてしまいました」
「エエンヨ、キニセントッテ。アトハコテンハノサッキョクカノサクヒンヤネ」
「そうですね、ずばり、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンになりますね」
「アンタ、ボロディンガヌケトルントチャウカ」
「エエンヨ、キニセントッテ。す、すみません、またまねしてしまいました」
「オモロイネ、ワシニモソレヤラセテ」
「ココハナニガウマインヤ」
「マタヤリヨッタ。ヤッパリニンゲンセツドガナイトアカントオモウワ」
「すみません、羽目を外してしまって。では戻りましょう、ハイドンはやはり第77番「皇帝」と第78番「日の出」でしょうか。でもぼくは実力のある弦楽四重奏団がライフワークとして取り組めばきっと他にもすばらしい曲が見つかると思うのです」
「タシカニソウヤガ、ハヤリノエンソウカガユウメイナキョクヲエンソウスルノヲタイシュウハキキタガルンヤ。ソヤカラマアムリヤロ」
「否定はしません。お客様、聴衆、ファンの支えがあってはじめていろんなことができるのですから、その人たちが乗らないことを無理強いすることはできません」
「ソヤネン、ダカラ、コウギョウスルホウハエラソウニシテルヨウニミエルカモシレヘンケド、ジツハオキャクサンノハンノウガスッゴク、スッゴク、スッゴックン」
「ス、ゴックンですか」
「キニセントッテ」
「では次にモーツァルトの弦楽四重奏曲ですが、最近、ぼくは「春」という標題を持つ第14番がますます好きになったのです。春の季節にはぴったりですし。その正反対の出だしがとても暗い第15番も素晴らしいです。標題のある曲は第17番「狩」、第19番「不協和音」がありますが、モーツァルトの弦楽四重奏曲の頂点と言えるのは、第21番「プロシア王第1番」だと思います。バリリ四重奏団もいいですし、ウェラー四重奏団、アルバン・ベルク四重奏団も心に沁みる名演奏です」
「プロシアオウハダイ2バン、ダイ3バンモエエネ。ベートーヴェンハヤッパリチュウキノガエエンヤロネ」
「ぼくも谷さんが言われることに賛成です。第12番から第16番の後期の弦楽四重奏曲は全体的に暗く鎮静しています。美しい旋律、感動出来そうな旋律はありますが、曲全体を通してというものではありません。ところどころでそういう旋律に出くわすという感じです、中期では第7番の「ラズモフスキー第1番」、第10番「ハープ」なんかは曲を通して美しい旋律に満ちています」
「エンソウカハダレガエエノン」
「第7番は昔からよく聞いたブダペスト四重奏団、第10番はウェラー四重奏団かウィーン・コンツェルトハウス四重奏団です。ラズモフスキー第2番と第3番も名曲だと思います」
「ヤッパリ、ゲンガクシジュウソウキョクハエンソウケイタイガゲンガッキバッカリデジミヤカラウツクシイセンリツガヒツヨウナンヤロネ」
「そうです、ですからメロディメーカーの作曲家でなければいい作品ができないのでしょう」
「クライノガオオイケド、ワシハダイスキヤ」