プチ小説「友人の下宿で24」
「みなさんお忙しい中お集まりいただき有難うございます。本日は、モーツァルトのピアノ・ソナタと
ピアノが主役の音楽をお聴きいただくとのことです。それでは高月さん、張り切ってどうぞ」
「ピアノの音楽はモーツアルトが基礎を作り、ベートーヴェンが発展させたと言われています。実際、
モーツァルトはピアノ・ソナタやピアノ協奏曲の名曲をたくさん残していますが、本日後半にお聴き
いただくピアノが主役の室内楽にも心和ませる美しい曲を残しています。では、最初にピアノ・ソナタ
の名曲を3曲お聴きいただきましょう。第8番、第11番「トルコ行進曲付き」そして第15番です。
それぞれブレンデル、ホロヴィッツ、グルダの名演がありますので、お聴き下さい」
「次に室内楽の名曲ですが、まずピアノ、オーボエ、クラリネット、ホルンとファゴットのための五重奏曲を
お聴きいただきます。モーツァルトのディヴェルティメントやセレナードは大編成で演奏されることもあり、
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」などはよく知られているのですが、小編成の室内楽にもたくさんの
すばらしい曲があります。この曲もそのひとつで、各楽器がバランスよく活躍しメロディも本当に美しい曲です。
ギーゼキング他の演奏でお聴き下さい」
「もう一つのピアノが主役の室内楽曲は、ケーゲルシュタット・トリオです。ケーゲルとは九柱戯のことで
今で言うならボーリングのようなものです。モーツァルトはこの遊びをしながら作曲したと言われていますが、
曲自体は美しいメロディーに溢れ魅力的です。クラリネット、ヴィオラ、ピアノという極めて珍しい
編成のため、レコードは余り多くないのですが、ド・ペイエとメロス・アンサンブルのメンバーによる演奏は
すばらしい演奏ですので、楽しんでいただけると思います」
「百田どうだった」
「昔は沈んでいる時に励ましてくれたり深い感動を齎してくれるベートーヴェンの音楽が好きだったんだが、
最近は美しいメロディーや音楽を聴く喜びを手軽に味わうのならやはりモーツァルトを聴くに限ると思う
ようになった。最近にわかにモーツァルトのファンとなったぼくには楽しい時間だった」