プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 42」

福居は本日(5月11日)高校時代のクラブの同窓会があるためお昼前に家を出たが、すぐに後悔した。
<始まるのが午後6時30分で阪急摂津市近くの居酒屋のようだから1時間もあれば充分なんだが、天気がいいから外をぶらぶらしようと思ったのだった。それにしても本当にぼくは同窓会に縁がない。小学校の同窓会を35年位前にしたのが最後だ。中学校はまったくしたことがないし、高校はぼくが浪人の時に2回したがその後連絡はない。今回は同窓会と言っても高校生の時に所属していた写真部の集まりでクラスの同窓会ではない。ぼくと同じ年の女性が東京住まいでもう大阪に来ることがなくなるから、もう一度写真部の人と会っておきたいと同級生の男性に依頼したからなんだが、ぼくの2つ年上が1人、1つ年上が2人、同じ年がぼくを合わせて4人、1つ下が1人集まる予定になっている。発案者の女性が言うように、一般的には65才になれば外出して遠くまで行くのも億劫になるだろうしこれが最後の見納めになるかもしれない。ぼくもそんなことをそろそろ考えないといけないのかと少しは考えるが、引き続き母親の介護をしながらお金の続く限りやりたいことをやろうと考えている。だってせっかくいろいろな道具を買ってそれらを使いこなせるよう日々精進して来たのだから。カメラも写真部にいた頃に買ったオリンパスOM1を長年使って来たが、今から25年前にライカM6を購入して4年前からはM9を使っている。ライカの5本の純正レンズの他、アダプターを使えばオリンパスOM1用ズイコーのマクロレンズと65~200ミリのズームレンズなどが使える。銀板カメラのM6も使いたいが、やはりすぐに撮った画像を確認できるのでM9が主力と言えるだろう。クラリネットも50才になって習い始めたから、2年7ヶ月のブランクがあったとはいえ12年以上習ったことになる。6月1日には発表会でドヴォルザークの「月に寄せる歌」をピアノ伴奏付きで演奏することになっている。2011年に最初の出版をして合計4巻出ている『こんにちは、ディケンズ』先生は全国100以上の大学図書館やたくさんの公立図書館に受け入れられてもらっているが、まだ賞をもらったことはない。それでできるだけ母校立命館大学の平川嘉一郎記念図書館に通って懸賞小説に応募するための原稿を書いているが、楽しんで書いているから落選が続いても恐らく75才までは応募を続けるだろう。ディケンズと言えばディケンズ・フェロウシップの春季総会が6月8日に福岡大学で開催されるが、北海道や沖縄で開催されない限り年1回になったからこれからも出席するつもりだ。年4回の東京阿佐ヶ谷の名曲喫茶ヴィオロンで開催されるLPレコードコンサートは東京までの往復運賃が大きな負担だけれど100回(6月2日が75回目の開催になる)までは頑張るつもりだ。お金があれば全国の夜景を撮って回りたいところだけれど難しい。それでも春季総会で福岡に行くから夜景の撮影スポットをチェックしようと思っている。皿倉山が良さそうだ。そんなことをしているとあっという間に10年や20年は過ぎてしまいそうなんだが、昔から親しくした人とはこれからもつき合っていきたい気がする、だけど年齢は大きな問題となるんだろうか>
福居がそんなことを考えながらまつのやでささみみそかつ定食を食べていると、隣の席にM29800星雲からやって来た宇宙人が座った。
「ココハナニガウマインヤ」
「前にも言いましたが、ここのカツは美味しいです。だから定食でもカツ丼でもカツカレーでもいいと思います」
「アンタガマエニソウイウテタカラ、カツドントカツカレーヲタノンダヨ」
「普通、丼とカレーを一緒に食べませんが、谷さんがお好きならぼくがあれこれ言っても仕方がないでしょう。でもカツ丼のカツをカレーソースに付けるのはやめてくださいね」
「イマカラソレヲシヨウトオモタンヤケド、アカンノカ。シャーナイナ、ホタラ、ガマンスルカラ、クラシックオンガクノハナシヲシテチョウダイ」
「わかりました。では今日は高校時代によく聞いたクラシックの名曲の話をしましょう」
「ヤッパリベートーヴェンヤモーツァルトナンヤロネ」
「いえ、違うんです。ぼくが本腰を入れてクラシック音楽を聞くようになったのは浪人になってからです。写真部のひとつ年上の先輩に冨田勲さんのファンがいてクラシックの編曲物ばかりを聞いていました。「月の光(ドビュッシーの音楽)」「展覧会の絵(ムソルグスキー)」「火の鳥(ストラヴィンスキー)」「惑星(ホルスト)」で特に「惑星」は同級生の部員と一緒に木星のあの有名な旋律を口ずさんだものでした」
「ソウナンヤネ。アンタクラリネットデヨクフクンヤロ」
「それほど頻繁に吹くわけではありませんが、習い始めて最初の発表会でこの曲を合奏したのはよい思い出です」
「デモコウインヤノゴトシトイウヨウニジンセイノサイゲツハアットイウマニスギルネ」
「そうですね、だからぼくも後世に何か残せたらと思っているんです」
「ソレガショウセツナンヤネ」
「そうです。それに応募した小説で賞が取れたら、皿倉山で夜景が撮れるなと思っているんです」
「ソウヤネソウイウノヲゲンドウリョクニシテアト30ネンクライガンバッタラエエネン」