プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編46」

福居は学生時代は暑いのが苦手で中年の頃は寒いのが苦手だったが、50代を過ぎるとどちらも苦手になった。特にここ数年の夏の猛暑日は体温より高くなることもあるので、しばしば限界を超える。全身から汗が出るが特に頭部が顕著で、もし40度を超えたら遠くから福居の頭部を見たら陽炎が立つのが見えるんではないかと思っている。今日も京都では猛暑日で福居は朝9時過ぎに母校立命館大学図書館に入ったが、午前11時20分頃に西側広場で昼食を食べていると35度を超えたようで全身から汗が出て来た。福居は堪らず、藤棚の下に避難した。弁当の残りを食べていると、M29800星雲からやって来た宇宙人が福居に声を掛けた。
「イツモトチガウトコロデメシクウトルノハドウイウコトヤ」
「ああ、谷さん、あなたの場合、気温が35度を超えても平気ですよね」
「ソラ、ボクントコロハ50ドヲコエルコトモアルカラネ。ダカライツモボクハレイカンシャツヲキテルネン。チキュウヤトナツノアツサシノギダケヤケド、ボクノホシデハ100ドデモヘイキナシャツヤパッチガデキトルンヨ。コレガアルトアツイトキデモアンシンシテガイシュツデキルンヨ」
「そうか、あの暑そうな長袖シャツはそういうメリットがあるんですね。着ないと損ですね」
「ソウヤデ、ミタメハアツクルシソウニミエルケド、ツカッタラナシニハオレンヨウニナルノヨ」
「でも、シャツとパッチ、いやタイツの上に着るものをどうしようかと迷うんじゃないですか」
「ソウヤネ、フツウハTシャツトタンパンヤケド、オトコノヒトガタンパンヲハクノハドウカトオモウカラフキュウシテヘンノトチャウヤロカ。ボクハキニセンカラナツハイツモレイカンシャツトパッチダケナンヨ」
「でも夏の暑さが限界を超えるとぼくたちの夏の服装も酷暑に耐えられるものに変えないといけないじゃあないんでしょうか」
「トナルト、ナツハミンナレイカンナガソデシャツトパッチデスゴスコトニナル、トコウイウワケヤネ」
「今のままだとそうなるかもしれません。そうだ、冷感シャツほど効果がないかもしれませんが、左右の腰のところに扇風機が付いている作業服があります。暑さが凌げるのなら、着てみたい気がするのですが」
「デモダイガクコウナイデキタラガクセイサンガマネスルカモシレンカラアンタハヤメトイタホウガエエントチャウ」
「そうですよね、小さな扇風機を手に持っている女子学生は可愛いですけど扇風機付きのベストが流行ると困りますね」
「デモムカシハフジダナノシタデウチワデアオグダケデスズシイナトオモウタンヤケド、サイキンハオクガイデリョウヲトロウトオモウタラアイスヤカキゴオリガヒツヨウヤネ」
「そうですね、ぼくは昨年初めて嵐山で1000円もするかき氷を食べたんですが、今年もそうしないともたないシチュエーションに出会うかもしれませんね」
「ナンカヨウジガアッテ、35ドイジョウノアツイトコロヲ30フンイジョウアルイタラ、コオリガタベタクナルヤロネ」
「ぼくの場合かき氷ではお腹が膨れないから、冷麺を食べると思います。やっぱりかき氷はお金がある人の食べ物だと思います」
「トコロデ、コウイウアツイトキニアツサヲカイショウシテクレルクラシックノキョクハナイカナ。スカットスルノガイイナ」
「スカッとするなら、チャイコフスキーの序曲「1812年」のカンゼル盤(テラーク盤)が有名ですが、むしろ冷房がよく効いたところでオペラをじっくり聞くと言うのはどうですか」
「キョクハナニガエエノン」
「ワーグナーがいいですね。タンホイザーとかローエングリンとか」
「エンソウハダレガエエノカナ」
「タンホイザーはサヴァリッシュ盤がベストですが、ローエングリンはクーベリック盤です。ローエングリンはカラヤン盤やショルティ盤も機会があれば聞いてみたいです」
「アンタ、コトシハ9ガツスギテモアツイカモシレンケドソレデモダイガクマデクルンカ」
「家でステレオを聞きながら本を読んだり小説を書くのも楽でいいですが、食べ物(おやつ)の誘惑に耐える自信がありません。それに「通学」していると気分が変わりますし出会いがあるかもしれません。暑さでめまいを起こすこともありますが、それを乗り越えればいいことがあると思って頑張りますよ。でも扇風機付き背広は出ないのかな」
「デタラエエネ。デモヤセガマンセントレイカンパッチハハヤイメニカットキヤ」