プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 いつか昔したように編」

わしは幼少の頃、暑いのが嫌いでスポーツが得意やなかったから、家で過ごすことが多かった。わしがラジオを聞くようになったのは中学生になってマイラジオを両親に買ってもろうてからで、小学生の頃家には昭和30年代に父親が購入した日立製の携帯ラジオしかなかった。テレビが一番の楽しみやったけどお昼はアニメやお笑い番組がなかったんで、しゃーないから家の近くで蝉取りやヤンマ釣りをしとった。わしが小学3年生の時の父親の冬のボーナスで携帯用レコードプレーヤーを購入したんやが、レコードはわしが「ラブユー東京」、弟が「小樽の人よ」を買うてもろただけやった。そやけど小学4年生の夏に父親の故郷に行った時に当時流行っていた歌謡曲のドーナツ盤を10枚譲ってもろうた。譲ってもろたのは、「星影のワルツ」「真赤な太陽」「ブルーシャトウ」「アカシアの雨がやむとき」「エメラルドの伝説」「伊勢佐木町ブルース」「バラが咲いた」「霧の摩周湖」「王将」「ブルーライトヨコハマ」やった。このレコードを飽きずに何回も聞いとったが、いずれも心にしみる名曲やから何べん聞いても心地よかった。わしのドーナツ盤好きはこの頃に始まったんやと思うんや。中学生になってラジオを聞くようになってからは、小遣いが溜まったらドーナツ盤をしばしば買うようになった。アメリカのポップス、イージーリスニング、映画のサウンドトラックなんかいろいろ買うたが、「イエスタデイ・ワンスモア」「涙のトッカータ」「蒼いノクターン」「エーゲ海の真珠」「アドロ」「スカイ・ハイ」「アフリカン・シンフォニー」「ストレンジャー」「燃えよドラゴン」「愛のテーマ」なんかは今でもたまにドーナツ盤を聞いたりするんや。船場は浪人時代と学生時代はFMラジオのクラシック音楽の番組ばかり聞いていたんやが、FM放送がだんだんなくなって行って自分でアナログレコードを買うようになったんやった。再生装置もええのん買うて音の良い外国盤もたくさん買いよった。クラシック、ジャズ、イージーリスニング、ポップスなんかのレコード全部合わせたら700枚近く持っているようやが、毎日2枚聞いても1年かかるしCDも400枚位持っとるから全部聞くのに3年はかかると思うんやが、あいつどうするつもりなんやろ、ちょっと聞いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかー。はいはい、土日くらいしかレコードを聞けないのになんでレコードを収集するのかということですね。そうや、あんた年に4回東京にLPレコードコンサートに行くたびに新宿のディスクユニオンで中古レコードを購入しとる。そんなに買うても、聞く時間がないんとちゃうんか。いえいえ、前回はディスクユニオンに行かなかったですしこれからも年に1、2回になるでしょう。というのは買いたいレコードがなくなったというのと資金がなくなったというのがあります。今のところ週に3~5回母校立命館大学図書館に行っているからその日はレコードを聞けないのですが、お金の余裕がなくなったら、いつでも毎日クラシック音楽を浴びるように聞きながら小説を書くという日々がやって来ると思います。ケンブリッジオーディオのフォノイコライザーを購入してからはレコードをいい音で聞けますし、CDプレーヤーも普通に聞けるようになりました。レコード、CDがいろんなジャンルでたくさんありますから、飽きることはないです。小説を書くのは聞き流せるBGMを鳴らしながらが快適です。ただ本を読む場合は気が散ります。今は本を読んで面白い話を自分なりに消化して取り込む時期だと思っています。再来年の4月までは今やっていることを続けることは可能だと思うので、効率的に読書を楽しんで小説を書きながら過ごしたいと思います。そうして充分取り込む物を取り込んだと思ったら、クラシック音楽なんかを聞きながら、小説を一日中書くようにしたいと思っています。そうか、わかったでぇ。ところであんたどんな曲が創作意欲を喚起するんか、教えてくれへんか。それは山ほどありますが、ぼくの場合、どの曲というよりどのレコードかということになります。いろいろ言いたいことがありますが、BGMに最適なクラシックのディスクとして10枚だけあげておきます。1.ペーター・マーク指揮ロンドン交響楽団 メンデルスゾーン交響曲第3番「スコットランド」他 2.ルッジェーロ・リッチ(Vn)レオン・ポマーズ(P) クレモナの栄光 3.アルフレード・カンポーリ(Vn)エイドリアン・ボールト指揮ロンドン・フィル メンデルスゾーンヴァイオリン協奏曲 ブルッフスコットランド幻想曲 4.クラウディオ・アラウ(P)ヘンリク・シェリング(Vn)ヤーノシュ・シュタルケル(Vc)エリアフ・インバル指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 ベートーヴェン トリプル・コンチェルト 5.ジョン・バルビローリ指揮ハレ管弦楽団 ディーリアス アパラチア 6.ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団 ギュンター・ヴァイス シューベルト 弦楽五重奏曲 7.アルフレッド・ブレンデル(P) シューベルト ピアノソナタ第20番D959 8.ワルター・ギーゼキング メンデルスゾーン 無言歌集 9.ヘンリク・シェリング(Vn) バッハ 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 10.シャルル・ミュンシュ指揮パリ管弦楽団 ブラームス交響曲第1番 その他にもシベリウスやチャイコフスキーの交響曲の名盤がありますが、次回と言うことで。そやな500ほどあるのを10に絞れちゅーのは酷やからな。