プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 49」

福居は先週初めて家の近くにあるミートモリタ屋に行ったが、その時に買った牛肉が安くて美味しかったので今日はまたそれを購入して帰って母親とスキヤキを食べることにした。牛肉の他、白菜、白ネギ、エノキダケ、糸ゴンニャク、厚揚げ、ウドン、タマゴを購入してレジの列に並ぶと、M29800星雲からやって来た宇宙人が福居の後ろにすぐに並んだ。
「ああ、谷さん、谷さんのお家も今日はスキヤキですか」
「ソウヤネン。コノクソアツイトキニセンデモエエヤロチューヒトモアルヤロケド、スキヤキハセイガツクカラエエンヨ」
「そうですね、牛肉とタマゴだけでも精が着きますからね。ところでどのような方が卓を囲むのですか」
「タクヲカコムイウタラチュウゴクハッショウノゲームミタイヤケド、メンツハワイフトオトウチャントオカアチャンナンヨ」
「どんな物を入れるのですか」
「ヤハリキホンハハクサイトシロネギキクナエノキダケノヤサイルイニ、オデンノネタノイクツカヲクワエルノガシュヤクノギュウニクサンノアジヲオトサンデエエントチャウ」
「うーん、菊菜も好きですが最近スーパーで見掛けないですね。私の場合、他に糸ゴンニャク、厚揚げ、うどんは欠かせないですね」
「トウフ、ガンモドキ、モチイリキンチャクモショウユアジノオダシニハピッタリヤカライレタイトコロヤネ」
「それを生卵につけてたっぷり食べて最後にうどんを入れて食べる。考えるだけでお腹が空いてきました。昔はガスコンロを炬燵の台の上に置いてスキヤキ用の鉄鍋で焼いて食べたものでした。最初の牛肉がちゃんと焼けるのが待てなくて、しょうゆと砂糖がついた牛肉を食べたことがあります」
「ソウイウオサナイヒノバンサンノキオクハココロニノコルモンナンヤネ。ワシモオナベノダシガオイシイチューテホトンドノンデシモウテエライオコラレタコトガアルンヨ」
「昔はスキヤキの場合しょうゆと砂糖を微妙に調整して美味しいスープにしていましたが、最近はヤマサとかが美味しいお出汁を開発していて助かります」
「ホンマヤネ、ウチデモヤマサノダシヤワ。チョビットニホンシュヲイレルトオイシインヨ」
「どのくらい入れるんですか」
「ウチハギュウニクヲ4キロタベルカラ、オサケハ1ショウクライヤネ」
「家はカレー鍋で調理したものを2回に分けて母親と食べるのですが、谷さんはどうされるんですか」
「ウチノバアイハチュウカナベガチョウドエエンヨ。サイゴニウドンヲイレルノハアンタトオナジヤケドソノマエニフヲイレルネン」
「麩ですか」
「オツユニイレルノヨリチョットオオキイフトカモミジフトカナマフトカヲイレルンヨ」
「オイシソウデスネ。思わずカタカナで言ってしまいました」
「トコロデ、クラシックオンガクデショクジチュータラ、テレマンノターフェルムジークトイウコトニナルンヤロネ」
「そうですね、テレマンのターフェルムジーク(食卓の音楽)は有名ですが、残念ながら聞いたことがなくCDも持っていません。バロック時代のの有名な作曲家というだけです。例えばヘンデルがチェンバロ用の「調子のよい鍛冶屋」を作曲したように数分の器楽独奏用の名曲を残していれば、作曲家と名曲が結びついたですしクラシック好きの小説家が小説に取り上げたかもしれません」
「ソウヤネ、ディケンズガトリアゲテイタネ」
「『大いなる遺産』でピップの友人として登場するハーバート・ポケットが、ピップの実家が鍛冶屋だからピップをヘンデルというあだ名で呼ぶと言っています」
「ホカニオモロイハナシハナインカ」
「「調子のよい鍛冶屋」の決定盤と言われているのがワンダ・ランドフスカのSP盤ですが持っていません。多分、富士レコードやストレイト・レコードで探せば見つかるでしょうが、3千円から1万円はするでしょう。古のチェンバロの響きは一聴の価値があるでしょうが」
「アンシンシテ、ネットデキケルカラ」
「YOU TUBE で聞けますよね。でもマニアのぼくとしては名曲喫茶ヴィオロンのクレデンザでSP盤を聞きたいところです」
「キットナツカシイオトガスルンヤロネ」