プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 50」
福居は以前よく四条通を烏丸から河原町まで歩いたり河原町通りを四条から三条まで上がったりしたが、最近はその近辺に行くことはほとんどなくなった。十字屋三条本店で楽器を見たりCDを購入するくらいだけになった。20年程前までは河原町三条近くに駸々堂書店があってそこから四条河原町までの間に福居が好きな音楽が流れる名曲喫茶やジャズ喫茶があった。福居がよく行ったのは名曲喫茶では築地、築地館、ミューズ、夜の窓、ジャズ喫茶ではブルーノートで、お金がかかった装置を置いているわけではないが、音楽を聞きながら本を読んで長い時間が過ごせる心地よい喫茶店だった。福居は1994年頃から東京志向となり、神田で購入した古本を名曲喫茶ライオンや名曲喫茶ヴィオロンで読んだり、レコードマップを頼りに中古レコード店巡りをした。神田のカレーショップと同じ建物の2階にあったクラシックレコード店、ニコライ堂近くのクラシックレコード店、池袋駅近くのムードミュージック専門のレコード店は今はないと思うが、店内に入った時のワクワク感は今でも覚えている。そう考えると中古レコードを買うなら新宿のディスクユニオン、名曲喫茶に行くなら、渋谷のライオンか阿佐ヶ谷のヴィオロンしか考えられなくなった今より選択肢がたくさんあってワクワク感もあり昔の方が良かったんではないかと思う。2年前までは働いていて東京に遠征した時は新幹線代と宿泊費込みで7、8万円は使っていたのが、今は日帰りで新幹線代の他は昼食代、中古レコード代、帰りの新幹線の弁当代を合わせて1万5千円以内にしている。これでは午後からの開店となった名曲喫茶ライオンに行けないだけでなく、足を伸ばして別のところに行くこともできない。そんなことを考えながら、なか卯から母校の図書館まで歩いていると後ろから声が掛かった。
「アツイノハヨウワカルガ、ソンナオコッタヨウナカオヲシテアルイテルトロクナコトガナイヨ」
「ああ、谷さんでしたか。でもこれだけ厚いとにこにこした顔で歩いていると体調がおかしい、頭がおかしくなったと思われるんじゃないかと警戒するんです」
「デモキハモチヨウデタノシイコトヲカンガエトッタラタノシイジカンガアットイウマニスギテイドウノジカンモミジカイトカンジルカモシレンヨ」
「谷さんが言われる通りだと思います。楽しいことを考えながら歩くようにします」
「タダソレガカオニデタラ、オマエオレノコトヲワロウタヤロトイッテドツカレルカモシラン」
「それは困りますから、やっぱり今まで通りで行きます」
「トコロデキノウラジオデイウトッタンヤケド、7カイニナルッテホントナンカ」
「高校野球のことですね。だいたい発案されたら遅かれ早かれ実施されるでしょうから、5年くらいで夏だけは7回にしようとなるんじゃないでしょうか」
「ナツダケナンカ」
「多分、将来40度以上になると思われる気温の中で野球を長時間することが可能かどうか検討されたんだと思います。何もしないでこのまま行って、体力がない野球部員や観客が熱中症で倒れたら開催する人の責任が問われると考えたんだと思います」
「デモソウナッタラ、イママデノキロクガカコノモノニナッテシマウンヤネ。ソレニダイタイヤキュウハ8カイトカ9カイガヤマバヤカラ、モリアガルトコロガネコソギナクナルンヤネ。スルトヤキュウジタイガオモシロクナクナルカモネ」
「野球はプロになってからでも社会人になってからでもやれますし、高校時代は基礎的な力を身につければそれでいいんじゃないですか。スキーが地球温暖化で廃れたように、野球も地球猛熱化で廃れるのは仕方がないんじゃないでしょうか。将来的には川の水や海水が干上がってマリンスポーツができなくなって水泳や潜水の必要がなくなるとか、今予測できないことが起こるかもしれません」
「オンダンカデスイメンガジョウショウスルノカヒアガルノカハワカランケドドチラモタクサンノヒトガコマラハルヤロネ」
「もし毎年気温が1度上がり続けたら20年したら夏は50度以上になる日もあるんじゃないですか。そうなったら後の祭りのような気がします」
「サイキンハユウダチヤナクテイチチホウノシュウチュウゴウウニナルノモキニナルネ」
「昔ぼくの家もクーラーはありませんでした。それは扇風機で過ごせたからです。でも今、夏の暑い時期は一晩中クーラーなしでは過ごせません。今でも家にクーラーがないお家もあるでしょう。そのような環境で毎日を過ごさないといけない人はどうなるのでしょうか」
「モウスコシシタラアキニナルヤロカラ、ソレマデノガマントチャウン」
「今の暑さは1ヶ月は続くと言われており、今の暑さは猛暑日が続くという暑さです。それが過ぎたら落ち着くかもしれませんが、夏は毎年やって来ます」
「イマハキキテキナジョウキョウヤトイットッテモアキニナッテスズシクナッタラ、アツカッタコトハワスレテシモウテムリセンデエエトオモウンヤ。ソヤカラアツクナッテホンマニオシリニヒガツカントカイシンハムリヤロネ。トコロデコンナワダイニアッタクラシックオンガクハアルンカ」
「35度以上の猛暑の中で聞く音楽はありませんが、タイトルに冬という言葉が付く曲はほんの少し涼を呼ぶ気がします」
「ドンナンガアルノン」
「チャイコフスキーの交響曲第1番「冬の日の幻想」、シューベルトの歌曲集「冬の旅」、ヴィヴァルディの「四季」から「冬」でしょうか。この中では「冬の日の幻想」が断然お勧めです」
「ソレハナンデヤノン」
「「冬の旅」は陰に籠るし、「四季」の「冬」も最後のところでさぶくなります。「冬の日の幻想」はエネルギッシュで力が湧いてきます。暑さに負けないで頑張ろうと思うなら「冬の日の幻想」を聞いてみてください」
「ヨシ、ワカッタ。ヤッテミルワ」