プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 56」

福居は集英社世界文学全集第87巻の『風と共に去りぬⅡ』を自宅で読み終えると丁度午後5時だったので、買出しに行くことにした。福居は倹しい生活をしていたので、生活必需品は1万円を捻出してまとめて買うことにしていた。
<まとめて買えばついでにいらないものを買わないで済む。今日は、整腸剤のビオフェルミンS錠520錠入り、BOSCOオリーブオイル456g、アースジェット2本パック、単三電池と単四電池8個パック、ヤマサ昆布つゆと昆布ぼん酢、帯広豚丼3食パック、炊き立てごはん10食パック、サロンパス、アンメルツ、HAMAYAフローラルブレンドコーヒーそれから冷凍さぬきうどん5食パックとグラニュー糖も買っておこう>
福居は主に平和堂で買物をするが、HAMAYAコーヒーだけは阪急オアシスでしか買えないので、先に自転車で買いに行くことにした。支払いを終えて、自転車置き場に行くとM29800星雲からやって来た宇宙人が福居に近づいて来た。
「ココハナイガウマインヤ」
「ここはスーパーですから、基本的には買い物をするところです。だから谷さんと肩を並べておいしいものを食べるわけには行かないんです。そうだ、そこに千房があるから、豚玉と焼きそばでも食べましょう」
「リョウホウトモオオモリガエエナ」
「じゃあ、ぼくは焼きそばだけ大盛りにしようかな」
「トコロデキミハサッキ『カゼトトモニサリヌ』ノダイニカンヲヨミオエタヨウダガ、ドウダッタ」
「とにかくこの物語のヒロインの生き方は破格です。自分が社会的地位を維持して生きること、家族にひもじい思いをさせないこと、これを守るためだったらなんでもすると言っています。それは自分で知識を身につけたりとか意義ある人間関係を築いてというのではなく、競争相手を出し抜いて困らせ窮地に追い詰めて自分だけがいい思いをするというやり方です。みんなで1億円あるお金を山分けにするという考えではなく、権謀術策を弄して1億円全部を自分のものにするやり方です。最初に被害を被ったのは、昔からスカーレットに恋心を抱いていて妹のスエレンの婚約者だったフランク・ケネディです。スカーレットはそれまで地道に働いてようやく会社を始めようとするフランクを騙して自分と結婚させました。フランクに妹が別の男性と結婚するといううその情報を流し、それが妹に漏れないようにして関係者が知らないうちに結婚したのです」
「デモソレハフランクノザイサンガヒツヨウダッタカラデ、ソレデタラガメツボウセズニスンダカラヨカッタントチャウン」
「そう、確かに、タラを救ったというのは良かったのですが、この自己顕示欲にまみれた女性はそのあと夫を出し抜いて会社を自分のものとし、夫が困った顔をすると顔色を変えて無能扱いします。ところどころでレット・バトラーが現れてスカーレットがやっていることを揶揄しますが強い𠮟責ではないので全然平気のようです。むしろ昔アトランタからタラに行く途中で置き去りにされた(タラの手前でレットが入隊すると言って別れたこと)ことをしつこく非難します。第3巻ではフランクが亡くなりレットと結婚するようですが、この二人にいろいろ難癖をつけてどれほどひどい仕打ちをスカーレットがするのかと思うとつらいので読まないのがいいのかなと思ったりします。それとアシュレ、メラニー夫妻への当てつけも酷いのでもうこりごりです」
「マア、ヨミハジメタンヤカラ、サイゴマデヨムノガエエントチャウ。トコロデキョウモクラシックオンガクノオモロイハナシシテクレヘン」
「今日はアメリカの作曲家の作品をいくつかご紹介しましょう。最初はやはりガーシュインでしょう。ガーシュインが作曲したジャズ・スタンダード、サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァ―・ミーとサマータイムは好きですが...」
「アイ・ガット・リズムハスキヤナイノン」
「その曲はなぜか感情移入がし難くいので嫌いです。スワニーも同じです。クラシック音楽では、「ラプソディ・イン・ブルー」は好きですが、「パリのアメリカ人」、歌劇「ポーギーとベス」は何度か聞きましたが好きになれません」
「グローフェモアメリカノサッキョクカヤネ」
「「グランド・キャニオン」はたくさんのレコードが出ていますが、やはりオーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団がいいと思います。たまに冨田勲盤を聞きますが」
「ホカニナイノン」
「シンコペイテッド・クロックで有名なルロイ・アンダーソン、行進曲で有名なスーザ、ミュージカル「ウエストサイド物語」で有名なバースタインの曲はオーケストラで演奏されますが、あまり好きでなく興味が持てません」
「ソンナジブンカッテヲイウタラスカーレットミタイニキラワレルヨ」
「他にコープランド、アイヴズはまだ聞いたことがありません。バーバーの「弦楽のためのアダージョ」はオーマンディのレコードを持っていてたまに聞きます。コープランドの曲は興味がありますがヨーロッパのオーケストラやアメリカの一流オーケストラが取り上げてくれるかです。バーンスタインや自分で指揮したもの以外でいいのがあったら聴いてみたいと思っています」
「アンタハバーンスタインヲキカンノヤネ」」