プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 芸術を発信し続ける苦悩編」
わしが幼少の頃、図工という科目があって絵ぇ書いたり粘土で怪獣を作ったりしてた。中学に入ると美術という科目があってそれが図工の延長やった。音楽は小学校からあったけど正式な科目となったのは高学年にになってからやったと思う。高校生の時は美術、音楽、書道の三択やったから美術を取ったんやったが、そっちの方のセンスはなかった。絵ぇは相変わらず下手やったし、造形の力は皆無やった。音楽の先生が後に府下で有名になった先生やったから習っとったら人生が変わったかなと思うけど後の祭りや。小学生の作文コンクールなんかがあるけどわしは小学3年か4年の時に産経新聞の大きくなったらに掲載された。父親と同じ国鉄職員になって友達をたくさん作りたいと書いてたようやが、詳細は覚えとらん。高校2年の時に読書感想文で文集に乗せてもらえるところやったが、結局ボツになった。当時成績が最低やったからあかんかったのやと思う。こういう風にレトロスペクトで見るとわしの学生時代は芸術的活動はないに等しくその上に運にも恵まれんかった。どっかで誰かが手を差し伸べてくれたらわしの人生も他に取るべき道が見つかって好転したのかもしれんが、ずっと浮かばれんままで今に至っとる。船場はわしと同じで社会人になるまではさっぱりやったし40代半ばまでに出世は諦めてしもうた。それでも仕事は続けて、仕事以外の自分の趣味なんかで何か人に喜んでもらうことをして後世に名を残そうと40代の終わり頃に決心したみたいや。あいつはざっと上げただけでも、写真、ホームページ、音楽鑑賞、レコード収集、クラリネット演奏、登山(これは43才から51才までやが)、読書、古書収集、小説を書くことなんかがあるけど、最近は、にいさん、資金がないからお手上げですわと言うとった。あいつ、65才で人生の一番ええ頃やのにやりたいことが出来へんのやろか、いっぺん訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかー。はいはい、にいさんは私がせっかく仕事をやめて趣味で頑張ると言った割には成果が出てへんのとちゃうのかと言われるのですね。いーや、そうとちゃうで。じゃあ、何ですか、お前はお金がないという口実で何もしとらんと言っとるのや。うーん、確かにそうですが、ずっと母校立命館大学図書館に通うか家でアナログレコードをBGMにしてデスクワークすることでできることには限りがあります。読書をするかホームページを更新するくらいです。旅行に出ればそれをもとにして創作意欲も湧いてきますしたくさん写真が撮れます。息抜きになりもっと頑張ろうという気になります。残念ながら資金がないためこの秋の旅行は諦めました。でもそのおかげで前から読みたかった、『風と共に去りぬ』『赤と黒』『オデュッセイア』を9月と10月で読んで感想文を書いたので、かえって良かったのかなと思っています。ほんで11月からはどうするんや。毎年懸賞小説に応募しているのでそろそろ書き始めようかと思っています。先週読み終えた『オデュッセイア』が面白かったので、ジェイムス・ジョイスの『ユリシーズ』のようなパロディ小説をいつか書いてみようかなと思っています。そうか、意気消沈してなんもでけんと言うんではないのやね。次はどんな本を読むんや。『オデュッセイア』を読み終えたので、『イーリアス』(呉茂一訳 岩波文庫)全3巻を読もうと思っていますが、第1章をわからないまま読んだので最後まで行けないかもしれません。『ギリシア悲劇全集』(人文書院)を読んでいて少しは参考になるのですが、知識が足りないかもしれません。それを読み終えたら懸賞小説の参考になるかと思っているヴェルヌの『月世界旅行』(鈴木力衛訳 集英社ヴェルヌ全集)を読みます。その後は未定ですが、アレクサンドル・デュマ『ダルタニャン物語』をもう一度読みたいと思っています。実は11月に北九州市八幡の皿倉山から夜景を撮ろうと思っていたのですが、最低6万円位必要なので諦めました。小説賞がもらえると臨時収入で行ってみようかなという気になると思いますが、今は日々の食費のことばかり考えています。そんな状況やったら、LPレコードコンサートもどうなるかわからんなぁ。いえいえ、マスターが続けようと言って下さる限りは続けようと思っています。そのおかげで一年に4回も東京に行ける機会ができるのですから。最低4万円あれば日帰りで行けるのですから。でも私が変わったように馴染みだったものが変わりつつあります。名曲喫茶ライオンは午後からの営業になり午前11時から利用していた私には遠い存在になってしまいました。名曲ヴィオロンのLPレコードコンサートはコロナ禍後、2時間の開催となり選曲が難しくなりました。仕事を辞めてからは頻繁に東京に行けなくなり最近は阿佐ヶ谷と渋谷と新宿くらいにしか行かなくなりました。軍資金がないため新宿のディスクユニオンでもちょっとしかアナログレコードが買われません。懸賞小説で賞がもらえればこれらの欲求不満が解消されると思われますが、創作意欲が湧いてくるだけでなく他にもいいことがあります。そら、船場はお調子者やからな。きっとあっと驚くようなこともするんやと思うけど、そういうチャンスがないとあほなことしてると言われるだけで終わりになる。そうです、だからそのチャンスがいただいてさらにそれを生かせるようにとお祈りする毎日なんです。まあ、お祈りもええけど次の小説も早々に書き始めた方がええんとちゃう。あんたの小説おもろいからと言われてからすぐになんこも小説の原稿が書けるわけやないから。そうですね、日頃から地道に頑張っていないと、いいことが提示されてもニーズに応えられない恐れがありますね。頑張らなくては。