プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編64」
福居は昨年12月頃から食事代節約のためしばしば午前11時前に食券を購入してなか〇の朝食セットを食しているが、組み合わせで悩むことが多い。こだわり卵定食に銀鮭と焼ベーコンを付けるのがいいのか、目玉焼きベーコン定食に銀鮭を付けるのがいいのか、それから納豆や牛小鉢を食べないで夕ご飯までもつのかと考えていて午前11時が過ぎてしまい、朝食セットを食べそこなったこともあった。食券の販売機の前で福居が悩んでいると、M29800星雲からやって来た宇宙人が声を掛けた。
「ナマタマゴカメダマヤキノチガイダケヤカラソンナニナヤマンデモエエントチャウン」
「いいえ、きっとこだわり卵とありますから、生卵の方がおいしい気がします。それに生卵の方にはお漬物も付きます」
「ホタラ、ナマタマゴニシタラエエガナ」
「いいえ、ベーコンエッグはそれに打ち勝つだけの旨味があります。ごはんにベーコンエッグを乗せて醤油をたっぷりかけて食べるのは牛丼よりずっとおいしいです」
「ホタラ、ミソシルトアジツケノリヲヤメテゴハン2ハイトベーコンエッグトナマタマゴヲタノンダラエエガナ」
「そうか、それなら幸せが2倍になりますね」
そう言いながら、福居はM29800星雲からやって来た宇宙人のアドバイスを元に並盛のご飯を2つとこだわり卵とベーコンエッグを頼もうとしたが、朝食メニューのセットでしか頼めないようだった。午前11時を過ぎてしまったので福居は仕方なく、鶏から丼とハイカラうどんで我慢した。M29800星雲からやって来た宇宙人は牛あいがけカツ丼と和風牛あいがけカレーを頼んだ。二人はテーブル席に向かい合って座った。
「ごはん2杯とベーコンエッグと生卵というのは魅力的で頼みたい人が続出するので、歯止めがかかっているのかもしれません。ベーコンエッグ丼で2杯というのの方がぼくにはもっと魅力的ですが」
「トコロデサイキンニナッテキュウニオペラニキョウミガデテキタンヤッテネ」
「そうですね、ウェーバー「魔弾の射手」のカルロス・クライバー盤を聞いてから、いろいろ聴いてみたいと思ったのです」
「ジュウセイガ3パツナルヤツヤロ」
「そうですね、ぼくは銃声が嫌いでなかなか聞けなかったのですが、我慢して通して聞きました。すると2時間10分ほどのこのレコードが魅力たっぷりな名盤ということがわかったのです。カルロス・クライバーのオペラのレコードはヴェルディ「椿姫」を持っていて、こちらはしばしば聞いていていつもヒロインヴィオレッタをローレンガーが歌うマゼール盤の方がずっといいなと思っていました」
「アンタハヴィオレッタヲステルラガウタットルセラフィンバンノレコードモモットルンヤロ」
「ええ、セラフィンは大好きで、プッチーニ「ラ・ボエーム」、ヴェルディ「トロヴァトーレ」はよく聞きますよ。カラスがヒロインを歌っている「ノルマ」はあまり聞きませんが。デ・サバタ盤のプッチーニの「トスカ」もヒロインがカラスの名盤ですが、暗い内容なのであまり聞きません」
「アンタハホカニモオペラノメイバンヲモットルンヤロ」
「何度も紹介したことがあるのですが、まずはスイトナー盤のモーツァルト「魔笛」です。それからサヴァリッシュ盤のワーグナー「タンホイザー」です。この2つはどなたにもお勧めできる名盤です。最初に見たオペラのDVDがアバドが指揮してレコードも出ているロッシーニ「セビリャの理髪師」でした。ヒロインを演じるテレサ・ベルガンサが好きになり、ヴァルヴィーゾ盤の「セビリャの理髪師」、アバド盤の「シンデレラ(チェレネントラ)」も購入しました。アバド盤のビゼー「カルメン」も買いました。でもカルメンの性格は許せません。ナバロ盤のファリャ「はかなき人生」、ベーム盤のモーツァルト「皇帝ティートの慈悲」、プラッソン盤のオッフェンバック「ラ・ぺリコール」、ヴァルヴィーゾ盤のロッシーニ「アルジェのイタリア女」も買いましたがこれらはほとんど聞いていません。ベルガンサは出ていないのですが、ロッシーニではガルデルリ盤の「ウィリアム・テル」も購入しました。忘れてました、グイ盤の「セビリャの理髪師」も持っています」
「アバドトジュリーニハドウナン」
「アバドは他にヴェルディ「アイーダ」「シモン・ボッカネグラ」そしてこれは神戸の中古レコード店ディスク・ガーデンの店主の強い推薦があって購入したのですが、ロッシーニの「ランスへの旅」はいずれもほとんど聞いていません。ジュリーニはヴェルディの「リゴレット」「トロヴァトーレ」があります。「トロヴァトーレ」の方はマンリーコをドミンゴが歌っているのでたまに聞きます。シャイーが指揮したマスネー「ウェルテル」もディスク・ガーデン店主の強い勧めでしたがこちらも・・・」
「ソウヤ、オペレッタノホウハキイトルンカ」
「喜歌劇ではやはりヨハン・シュトラウス2世の「こうもり」ですが、ベーム、アッカーマンのレコードとカルロス・クライバーのCDがあります。レハール「メリー・ウィドゥ」はアッカーマン盤を持っています。他にはクレンペラーとベームの「魔笛」、ムーティ盤のベルリーニ「清教徒」、ベーム盤のモーツァルト「コシ・ファン・トゥッテ」と「後宮からの逃走」、サンティーニ盤のヴェルディ「ドン・カルロ」、ジュリーニ盤のモーツァルト「フィガロの結婚」、メレディス・デイヴィス盤のディーリアス「村のロメオとジュリエット」は購入しましたが、オペラは聞くのに時間が掛かるのでなかなか聞く気になりません」
「ソンナニヨウケアルンヤッタラ、ホカニカワンデモエエガナ。シバラクハイチドキキタイトオモッタオペラヲキキナハレ」
「そうですね、折角買ったんですから、もったいないですよね。頑張って聞くことにします」