プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編65」
福居は大学を卒業して社会人になると年中行事を一人で楽しむことが多くなった。小学生の頃までは正月はもちろん、豆まき、クリスマスなども家族と一緒に楽しんだ。最近は家族と一緒になるのは元日くらいだった。最近、年中行事で一番気になるのは節分だった。というのは豆まきはもう50年以上したことがないが、年が明けるとすぐにコンビニに張り出される恵方巻の広告にはいつもツッコミを入れたくなったからだ。なんで1ヶ月も先の恵方巻の予約を年明けすぐに取るの。2週間前くらいでええやん。そんなことをするから1年があっという間に過ぎるんとちゃうんと。それでもコンビニや百貨店やスーパーが趣向を凝らした恵方巻には興味があって立ち寄って手に取ってみたりするのだった。今日も手頃な値段で晩ごはんとして食べられる恵方巻がないかと近所のファミリーマートと平和堂に立ち寄ったが、平和堂に行くと恵方巻のコーナーで買い物かごを左腕に掛けて右腕で顎鬚を抜いているM29800星雲からやって来た宇宙人がいた。福居は10種類の海鮮が巻き込まれた恵方巻と近江牛のすき焼きが巻き込まれた恵方巻のどちらにしようかと迷っている宇宙人に声を掛けた。
「谷さんは豪勢な夕ご飯でいいですね。ぼくの場合、こだわりの太巻きハーフ3本セットを買うくらいしかできません。無理せず、いつもの助六にしようかなと思っています」
「ネンニイチドノコトヤカラネ。ソレニニクヤイロンナショクザイヲノリマキニシタリ、エホウヲムイテツツジョウノタベモノニカジリツクトイウノハウチュウジンノワシデモオモロイカラタコクノヒトハドウオモウノカナトキニナルネン」
「多分、業界の人が作った神話だと思うんですが、ちらほら恵方巻という言葉を聞くようになってしばらくの間はホンマにそんなことやっている人がいるのか調べてほしいと思ったものでした。かっぱ巻きや沢庵巻きの太さならおちょぼ口の女性でもそのまま食べられるでしょうが、15種類の海鮮や200gの牛肉巻きを大きな口を開けて全部食べる人を想像するとそれだけでその人を尊敬してしまいます」
「ヤスクデタベラレルンヤッタラ、エエントチャウ。ワシハオウミギュウヲタベルキカイガナイカラ、コノキカイニタベトコカナトオモッテネ。デモマイニチノショクジダイノバイモスルンヤッタラヤメトコカナトアゴヒゲヲヌキナガラカンガエトッタンヤ」
「私のおふくろも縁起物が好きで大金を出して今年の干支の白蛇の置物を買いましたが、現状維持のために高額なものを買うのは惜しい気がします。高額な縁起物を買った時は何かいいことがあってほしいと願うばかりです」
「カミダノミハタイセツヤトオモウカラ、アンタモチカバノミワジンジャサンデスマスンヤノウテ、タマニハキョウトシナイノゴシャメグリモシタホウガエエトオモウヨ。トコロデカミサンガデタカラ、キョウハシュウキョウキョクノメイバンヲオシエテホシイワ」
「やはり第一はバッハのマタイ受難曲でリヒターの旧盤(1958年録音)でしょう」
「バッハハカンタータノエエノンガアルネ」
「第140番「目覚めよと呼ぶ声あり」と第147番「心と口と行いと命もて」が有名ですが、世俗カンタータの第202番「消えよ、悲しみの影(結婚カンタータ)」も好きです。第140番と第147番はアーノンクール盤が素晴らしいです。結婚カンタータはやはりリヒター盤ですね」
「ワシ、ブラームスノ「ドイツ・レクイエム」ガスキナンヤケド、エエノンアル」
「私はずっとクレンペラー盤です。カラヤンなどいろいろ聞きましたが、重厚で深い味わいは別格です。クレンペラーは時に誰にも真似ができないような演奏をすることがありますがこれもそのひとつです」
「モツレクトイウアイショウデヨバレルモーツァルトノレクイエムハドウンン」
「ワルター盤ヤベーム盤を持っていますが名盤と言えないと思います。最近、ドヴォルザークの交響曲第8番、同第9番を買って好きになったケルテスがアメリンクと録音しているので、一度聞いてみたいと思っています」
「ホカニナニカアル」
「ヴェルディのレクイエムは一度じっくり聴いてみたいのですが、大曲なのでなかなか聞けません。ベートーヴェンの荘厳ミサはクレンペラー盤を5回以上聞きましたがいつもガッカリするので駄作なのかなと思います。リヒターのバッハ カンタータ全集の26枚組CDを購入して一度通して聞きましたが、第140番と第147番以外は同じ曲に聞こえたので敢えて他の曲を聞く必要はないのかなと思いました。最近、ヘンデルの「メサイア」のアーノンクール盤を購入してよかったのでガーディナー盤を聞きたいと思っています」