プチ小説「こんにちは、N先生 104」
私は最近お昼ごはんになか卯の朝食セット食べるようになったのですが、表向きの理由は温かごはんに目玉焼きと焼いたベーコンを乗せ醤油をたっぷりかけて食べるベーコンエッグ丼(勝手に名付けました)と焼鮭が美味しいからですが、本当のところは最近飲食店で値上げが激しく定食は850円以上が当たり前なのにさらにみそ汁と味付けのりがついて580円ですから、午前11時までに食券を買う必要があるという制約があっても貧乏な私は3日に1回くらい食べないと食費がもたなくなるからです。昨年の今頃は朝食セットにそんな安くて美味しいメニューがあることを知らなかったので、天気が良くて温かければ、ファミリーマート立命館大学前店でおにぎりを3つ買って食べていました。今年の場合、2月に入って寒い日が続くようになり、そのコンビニの前にある椅子に腰掛けておにぎりを食べる気にならなかったのでした。火曜日から4月になって新学期が始まり人通りが多くなりコンビニ前のベンチでおにぎりを食べるわけに行かなくなりそうなので、本日それを決行することにしたのでした。私はファミリーマートのおにぎりでは鮭はらみおにぎり、高菜おにぎり、SPAMむすび、炙り焼ソーセージおにぎり、くんたまおにぎりなどが好きなのですが、おにぎりを食べていると店から出て来た人が私の横に座り話し掛けて来ました。それはN先生でした。
「君はようやくジョージ・エリオットの『ロモラ』を読み終えたようだが、面白かったかい」
「ああ、N先生でしたか。ずいぶんお久しぶりな気がします」
「そりゃー、『ロモラ』が2段で500ページ以上あるんだから、読むのに時間がかかるだろうとは思っていたよ」
「それにサボナローラやマキャベリが生きていた時代のフィレンツェの状況が頭の中で描きにくく、また政治(サボナローラは政治への影響力を強め神権政治を行ったと言われている)の機構についての説明のところはさっぱりわかりませんでした。マキャベリも登場しこちらはサボナローラのような悲惨なことにはなりませんでしたが、サボナローラを焚刑に追い詰めたドルフォ・スピニと親交があったことがわかるくらいで、サボナローラのようにヒロインロモラやロモラの夫との繋がりがありロモラと会話を交わすということはありませんでした」
「ということは、あまり面白くなかったのかな」
「ジョージ・エリオットの小説は今まで『サイラス・マアナー』『ミドルマーチ』を読んでいて、『ミドルマーチ』に登場するラディスロウに似てずるい手段でヒロインの心を掴んで他の人に大きな迷惑を掛けている人物だと私は思いました。ラディスロウが研究熱心な老牧師を出し抜いたのと同様に、ティート・メレーマは盲目の老学者でロモラの父バルド・デ・バルディに心にもないことを言い続けて学者にしてもらい、その死後にロモラを脅してバルドの財産を手に入れ、それらを足掛かりにしてフィレンツェの実力者になって行きます」
「ラディスロウは老学者を出し抜いただけだが、ティートは5人に恩知らずな振る舞いをしている」
「そうですね、ティートは放浪者のようなひどい身なりでフィレンツェに辿り着きました。それには訳があって、孤児同然のティートを大切に育てて学識も身に付けさせたバルダサッレの財産を奪い大きな打撃を与えたからでした。バルダサッレが復讐の鬼と化してティートを殺害しようと思わせるような大きな損害でした。バルダサッレに追われたのが原因かわかりませんが、フィレンツェに着いた時はそんな格好で身よりもお金もありませんでした。ロモラは最初のうちは愛想のよい美青年のティートに好感を持っていてそれだからこそ結婚したのですが、ロモラとその父の信頼を見事に裏切って、ロモラの父親の死後、父親が大切にしていた書物と家を売り払って自分のものにします。他にもロモラが尊敬していたおじ(教父)のベルナルド・デル・ネロはティートの謀により断頭台で死刑が執行されます。サボナローラが焚刑となったのもサボナローラの処分を検討する会議でティートがサボナローラに火渡りをさせてみて、聖人でありやっていることに非がなければ無事のはずだなどと言ったためで、そういうことがあったので火あぶりの話が早く固まったように思います」
「でも考え方によっては、ティートという憎まれ役がいたので君も読んでいて退屈しなかったんじゃないか」
「そうですね。ロモラは体格の良い忍耐強い女性に描かれていますが、どちらかというと控え目で目立たない存在です。それでも最後のところでペストで瀕死の状態にある人々を救い、村の人から神様のように思われるところはこの小説の一番盛り上がるところです」
「ティートはテッサという無知な田舎娘との間に男女の一人ずつの子供をもうける。そのことにロモラは偶然知ることとなり、ティートがバルダサッレに殺されてからは自分が面倒を見ることにする」
「ティートは民衆を煽って、ベルナルドやサボナローラを死に追いやったのですが、彼もドルフォ・スピニに煽られた民衆に追い立てられて川に飛び込み、川から上がったところにバルダサッレがいて朦朧としながらも復讐をやり遂げたので、悪いことをした人は必ず天罰が下るという受け入れやすい結末になりました。ティートに罰を与え、ロモラに少しだけの栄冠を与えたことで後味がよい小説になったと思います。2ヶ月以上かかったけど読んでよかったと今は思っています」
「そうか、それは良かった。また、世界の名作を試行錯誤しながら読んで感想を聞かしてくれ」