プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 67」

福居は昨年8月に室生寺と長谷寺に行ったがあまりに暑くて特に長谷寺は観光どころではなかったので、それぞれ花の頃にもう一度訪れたいと思っていた。室生寺はシャクナゲ、長谷寺はボタンがその季節が来れば境内を華やかに彩るのだが、ゴールデンウィークの後半で間に合うと福居は考えていたがそうではなかった。どちらも4月20日頃が見頃で5月3日では満開から数日過ぎていた。福居は満開でも萎んだ花が混じっていると撮影を躊躇するので、満開を過ぎているとわかったら花を写しに出掛けることはしない。そういうことで今年の撮影最適日を10日以上過ぎていたので、今年は室生寺のシャクナゲと長谷寺のボタンの撮影は諦めようと思った。そんなことを考えながら、福居が大学図書館からの帰りに西大路通を歩いているとM29800星雲からやって来た宇宙人が福居に声を掛けた。
「コトシハゴールデンウィーク二トオデセエヘンノカ」
「そうですね、お金がないのでどうしようもありません。仕方がないので、母親が喜ぶ丹波屋の和菓子を円町で買って帰ろうかと思います」
「ムロウジトハセデラヘイキタカッタントチャウン」
「花が一番美しい時を過ぎてしまいましたからね。来年にします」
「ムロウジノシャクナゲモ、ハセデラノボタンモマダサイテルヨ。オハナミハマダデキルトオモウケドナア」
「谷さんの場合、ご家族なんかとわいわい言いながら観賞するだけですからね。私はライカで撮影して許可を得てからホームページに掲載しますから。室生寺は掲載可能ですが、長谷寺はまだ確認していません。でもボタンを撮るだけなら許可してもらえるんじゃないでしょうか」
「デモコトシハムロウジモハセデラモイカンノヤネ。シャクナゲヤボタンノシャシンヲノセタラエエヤン」
「この前造幣局の桜の写真を楽しんで撮影しましたが、それは花が一番きれいな頃だったからです。それを近くで好きなように写真撮影できたのですからこれ以上言うことありません。室生寺は五重塔当たりのシャクナゲが一番きれいな時に撮影したいと思いますが、シャクナゲはなかなか撮影しにくいです。比良山系の堂満岳のシャクナゲも4月下旬ごろが見頃で2、3回満開の時に登りましたが、あたり一面に咲くのでとても撮影しにくいのです。濃淡のピンクの花はとても美しいのですが。そういうこともあってシャクナゲの頃に室生寺に行っていい写真が撮れるだろうかと思うのです。きっと観光客も多いでしょうし。長谷寺のボタンはさらに撮影しにくいですし、屋根付きの階段の両横にボタンが咲いているのをみんなでわいわい言いながら見て回る方がいいような気がします。だから今考えているのは4月20日頃に美しい花が撮影できるところがないかということです。来春に室生寺とそこに行こうと考えているのです。当麻寺はボタンがきれいなようですよ」
「タイマデラハカンボタンナノデミゴロハ1ガツミタイヤヨ」
「ああそうなんですね。上野東照宮では寒牡丹も春牡丹もあるので、当麻寺でも春牡丹が見れると思いました。そんな感じで来年の4月までに室生寺ともうひとつ花の撮影が出来る寺を探しておこうと思っています」
「スキニシテ。トコロデ、ゼンカイクラシックノハナシガキケンカッタケドキョウハキカシテクレルンカナ」
「いいですよ。ぼくは以前からチューバという楽器に興味があって、いくつかCDを買いました。ジョン・フレッチャー(以下ジョン)、ロジャー・ボボ(以下ボボではなくロジャー)、サム・ピラフィアン(以下サム)の3人ですが、ジョンとサムは1枚、ボボじゃなくてロジャーは3枚です。サムはジャズなので、コルトレーンと共演したレイ・ドレイパーのCDのようでじっくりチューバの音を聞けませんでした。ジョンはアルバムの半分の曲がクラシックの有名な曲の編曲なのですが、チューバの音に感動するということはありませんでした。でもボボじゃなくてロジャーはチューバのために作曲された曲ばかりですが「Bobissimo」と「Tuba Libera」は聞いていてとても気持ち良かったです」
「ソウカロジャーガキモチヨカッタンヤネ」
「だから機会があったら、ロジャーをたっぷり味わってください」
「ウン、ロジャーヲソウスルワ」