プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 74」
福居は大阪府に住んでいるが、6月27日に早々と梅雨が明けて猛暑日が続いているのでバテ気味だった。まだ7月中旬だと言うのに家に帰る前に立ち眩みすることが何回かあった。今日も寿郵便局がある交差点を左折してミニストップで涼んでから帰ろうと思っていると、M29800星雲からやって来た宇宙人が福居に声を掛けた。
「アシモトガアヤシイケド、ダイジョウブカ」
「ああ、谷さん、気を使っていただいて、ありがとうございます。ほんとに今年と言うか、このところの夏の気候は身体に堪えます」
「ソラアンタモエエトシヤネンカラシャアナイケド、ハタライテイタコロトオナジヨウニゴゴ5ジヲスギテカラキタクシタラ、ヒガカタムイテイルカラヒザシモツヨクナイシエエントチャウン」
「確かに午後5時を過ぎると日差しが和らぎますから、その頃に帰るとダメージが少なくて済むのですが、帰ってからいろいろしないと行けないことがあるんです」
「アンタハブンガクショウニオウボスルショウセツヲカクタメニシゴトヲヤメタンヤロ。ホタラトショカンデオモウゾンブンゲンコウヲカイタラエエントチャウ」
「それだけなら楽なのですが、家事をしないといけないですし母親の世話もありますし」
「グタイテキニユウテミテ」
「例えば今日これから帰って何をするかですが、今日は水曜日ですが、日月水金、私は母親と一緒に食事をします。母親が食べないと体調を悪くするので工夫が必要です。その時ついでにポータブルトイレの処理をします。食材の他に母親の介護用品、日用品の購入をします。今日はKズドラックでオムツとパットを、近くのスーパーで5箱パックのティッシュとトイレットペーパーを購入しないといけません。母親の状態は今安定していますが、病院への付き添いが月に1、2回あります。また体調が悪いと混乱するので、ショートステイの初日や訪問診療の時に立ち会うために大学図書館に行くのを我慢することもあります。母親が元気で明るい性格で自分で身の回りのことをしてくれるので助かりますが、体調が悪かったり、食事ができないと言われると心配になります。最近は小説を書くことより母親の世話が私の生活の多くを占めるようになりました。長生きをしてほしいですが、懸賞の応募、私の生活、母親の介護の3つをこれからも無事こなして行けるのだろうかと思います。それから去年や今年のような暑さだとバテるのが早くて困ります」
「ショクジハアンタガツクルンカ」
「たまに肉じゃがを料理するくらいです。以前、半年ほど土曜日に昼食を作って食べさせたことがあるのですが、美味しいと言って食べることは少なく、2人分作った昼食を一人で食べることがよくありました。ぼくは残飯を残さない主義ですから自分で作った料理は全部食べます。そうしていると体重が右肩上がりに増えて行きました。これはやばいと思って、土曜日に一緒に食べる昼食を料理するのはやめました」
「マアソレデモナントカヤットルノハクラシックオンガクノオカゲカナ」
「そうですね、母親との夕食を終えてから、クラシック音楽を聞きながら1時間ほど筋トレ(腿上げと腹筋)をします。土日は大学図書館に行かずにステレオでクラシック音楽を聞きながらプチ小説などを書いたりします。旅行はお金がないので行けませんが、LPレコードコンサートやディケンズ・フェロウシップの春季総会には今のところ支障はありません。母親が元気であればあと数年は続けられると思いますが、文学賞がもらえるともう少し頑張ろうと思いますしもらえたらいいなと思っています」
「ソウヤネ、ブンガクショウヲモラッタラアカルイミライガミエルカラネ。デモソウナルトノンビリクラシックヲキイテイルジカンモナクナッテシマウカモシレンヨ」
「母親にかまえなくなるようなら、深入りしないでしょう。もう少し若かったら頑張ったかもしれませんが、66才で大作は無理だと思います。文庫本で200ページくらいのたくさんの人に楽しんでいただける小説を数冊残せたらそれで充分だとぼくは思っています」