プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 76」

福居は6月28日のクラリネットの発表会を無事終えて、来年もピアノ伴奏でクラシックの曲を発表会で演奏したいと考えた。演奏する曲の楽譜を探すために大阪駅前第2ビル2階のササヤ書店に来たが、クラリネットの楽譜が置いてある棚の前に数人の人がいてなかなか開きそうにないのでヴァイオリンの楽譜が置いてある棚でクライスラーの曲の楽譜を見ていた。しばらくそこで開くのを待っていたが開かないので今度は歌曲の楽譜の棚を見た。それでも開かないのでピアノの楽譜の棚を見ることにした。そうしているうちにクラリネットの楽譜がある棚は開いたが、発表会で演奏したいと思う曲は見つからなかった。紀伊国屋書店でクラシック音楽以外のジャンルの楽譜を買おうと思い、JR大阪駅の中央口から阪急梅田駅の2階入り口に向う通路を歩いていると後ろから声が掛った。それはM29800星雲からやって来た宇宙人だった。
「サイキンハネットデガクフヲコウニュウスルヒトガオオイノニゴクロウサンヤネ」
「ああ、谷さんですか。そうかなあ、ネットだと手に取って見られないから、自分で思っていたのと全然違うことがあります。それにたまたま隣に並べてあった楽譜の曲が気に入ることもありますし」
「「キヨラカナメガミヨ」モ「ツキニヨセルウタ」モ「ソルヴェイグノウタ」モカキョクノガクフヲアンタガクラリネットヨウニシテフィナーレトイウガクフサクセイソフトニニュウリョクシタンヤガライネンモソウスルンカ」
「たまたまここ3年歌曲の楽譜を使っただけでクラリネット以外の楽器の楽譜でもいいんです。その3曲の前にピアノ伴奏で一人で演奏した曲に「君はわが心」(レハール「ほほえみの国」から)がありますが、この曲と「清らかな女神よ」(ベルリーニ「ノルマ」より)はモーリス・アンドレのオペラのアリアをトランペットで演奏したレコードを聞いていつか演奏出来たらと思っていた曲です。「月に寄せる歌」(ドヴォルザーク「ルサルカ」から)と「ソルヴェイグの歌」(グリーグ「ペール・ギュント」から)はルチア・ポップの歌唱を聞いてクラリネットで演奏したいと思ったんです」
「ナルホド、ソノトランペットエンソウヤポップノカショウニミセラレテジブンモヤリタイトオモウタ、ソウイウワケヤネ。ホカニハソウイウノナイノカ」
「モーリス・アンドレのレコードではモーツァルトの「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」(モーツァルト「魔笛」より)をやりたいのですが、指がついて行けません。力が及びません。歌ではワーグナーの「タンホイザー」の「夕星の歌」を演奏したかったのですが、曲として易しいので見送りました」
「ジョセイノカショウガエエノカモシラン」
「クラシックファンになって間もない頃から、自分で演奏したかった曲として、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」があります。今までに2つの楽譜で練習してみましたが、アンナ・モッフォがストコフスキー指揮アメリカ交響楽団の伴奏で歌うものと同じでないので見送りました」
「デモアンタハピアノバンソウデスルンヤカラドッチニシテモチガウヤンカ」
「思い出の曲なのでいつかはモッフォが歌うように「ヴォカリーズ」を発表会で演奏したいと思っています。感情移入がしやすいので歌の楽譜を使ってシャープを2つ付けて2度上げて発表会で演奏したいと思っています」
「ホカニハドンナキョクガアルノン」
「「ヴィリア」(レハール・メリー・ウィドウ」から)もいい曲ですが、目標になる演奏がありません。歌曲ではありませんが、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番第3楽章のノクターンのクラリネットとピアノ演奏の楽譜があるので、レッスンを受けようと思っています。この前にショパンのピアノ曲をクラリネットで演奏する楽譜を購入したので、この中からいくつかレッスンを受けるかもしれません。私が好きなマズルカ作品7-1、練習曲作品10-3「別れの曲」、ノクターン作品9-2などがあるので、レッスンを受けるのが楽しみです」