プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 この夏なんかええことあったん編」

わしは幼少の頃から夏休みについては喜びとそうでないのとが半々やった。喜びは毎日早起きして学校に行く必要がないことやった。学校まで20分かかったし一緒に行ってくれる友達もおらんかったから、小学生の頃の通学のええ思い出はない。中学になってからは友人ができたから学校に行くのが楽しくなったが、中学校に行くのは片道40分くらいかかった。それから夏休みの宿題をちゃんとすれば後は何をしても(もちろん悪いことはやらんかった)親から物言いはつかんかった。そやけどこのとてつもなく長い何もすることのない時間をどうやって過ごすかは難問やった。小学校の水泳教室に通うというのが一番ためになったのかもしれへんけど小学6年生でやっとクロールで25メートル泳げるようになったわしには塩素の臭いが鼻につく小学校のプールに毎日通うのは最初から選択肢から外れとった。でも友人の多くは親からの勧めがあったようで8割方の生徒が水泳教室に通っとった。小学校のクラスメイトと遊ぶのが難しかったわしは近所の同じくらいの年の子と蝉取りやヤンマ釣りをするのが楽しみの一つやった。でも毎日昆虫採集をするわけに行かんから他のことを考えんといかんかった。それでわしは甲子園でやってる高校野球の中継を見るようになった。当時は18インチの白黒テレビやったが、準々決勝は朝から夕方までテレビにかじりついとった記憶がある。もっと勉強になることとか体力がつくことをやっとったら、違った人生になったと思うんやが後の祭りや。小学校から興味を持ち始めた野球観戦は巨人ファンの父親のおかげで高校の頃までは勉強をせんですむ口実となった。一緒に巨人戦を見とったら、父親は勉強せいとは言わんかった。そんな好き勝手しとったわしも小学5年生になって塾通いするようになってからは夏休みも宿題のことを考えんといかんようになってしもうた。ずぼらなわしの黄金の日々ははかなく消失してしもうたんやった。船場もわしに似て中学生の頃から野球観戦にのめり込んで、勉強よりも優先させたみたいや。船場は巨人ファンを高校2年生の時にやめてから、中日、ヤクルト、近鉄、ヤクルトと好きな球団をコロコロ変えたみたいや。あいつ今はプロ野球も高校野球もほとんど見ませんちゅーとったけど、ホンマなんかきいいてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかーっ。はいはい、にいさんは私が今でも野球観戦に興味を持っているかということですね。これは間違いなく、持っているというのが答えになります。例えば、何の気なしに高校野球中継を見出してそれが面白い場合は最後まで見てしまいます。たとえばその球団に知り合いや親戚がいるというなら、その人の喜ぶのを見たいというのは立派な理由になりますが、知らない人ばかりのチームがどうなろうとぼくには関係ないはずですが、応援しているチームが勝てば嬉しいですし負ければ悲しいです。そういうことで野球観戦はひまつぶしの王様と言えますが、30代になってから仕事を辞めるまでは忙しくて野球を見ている暇はほとんどなかったのです。昨年の夏はコロナ回復後で自分のいろんな活動を自粛していたため、夏の高校野球はしっかり見てしまいました。慶応高校が頑張っていたというのがさらに興味をもたせました。ほんで、今年はどないやったん。県立岐阜商業が興味深いチームなので最後まで勝ち残ってくれたら途切れなかったのですが、準決勝で負けたのは残念でした。実は私の母校は夏の大会の一回戦に勝って法政二高に負けました。ナインの力も充実していていい線まで行くんでないかと忙しい仕事の中思っていましたが、私が外野席から応援したのが悪かったのかあっさりと負けてしまいました。そしてこの時野球の名門校を言われる学校はいろんな経験をしているので経験が少ない公立高校のチームに負けることはない。それを期待持って見るのは時間の無駄ではないかと思うようになったのです。そうして高校野球の観戦で時間を過ごすことはほとんどなくなりました。でも県立岐阜商業のようなチームに興味を持ち出すとそのチームが出場する試合すべてに興味を持つようになります。それでこれから忙しくなることを期待していますから、高校野球の記事は極力読まないようにします。まあ、文学賞を取るとかせんと忙しくはならんやろ。それまでは見たい時に高校野球を見ればええんとちゃう。それより日帰り旅行ができるくらいの小銭がほしいです。そうすれば、時間をそれにあてますから。そう言えばそうやな。