プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 85」

福居は1970年の大阪万博は6回行ったが、2025年の万博は行かずに終わる。つくば万博も沖縄海洋博も神戸ポートピア博も愛知地球博も行かなかったから特に取り立てて言うことでないかもしれないが、近くで開催するし55年前の感動が蘇ったかもしれないので今回の博覧会は行く価値があったかもしれない。行かない理由は2つあった。ひとつは貧乏な福居にとってあまりに入場料が高かったことで、もう一つは電子決済をしたことがない福居には会場内で一切現金が使えなかったことで、まるでお前はこんでええと言われているような気がしていたからだった。それに今回の万博ではソ連(ロシア)が参加しなかったし中国やアメリカの影も薄かった。日本企業のパビリオンも目を引くものがなかった。1970年の万国博のパビリオンで今も鮮明に浮かんでくるのは、太陽の塔、日本館、地方自治館、アメリカ館、ソ連館、イギリス館、フランス館、ドイツ館、カナダ館、オランダ館、スイス館など海外のパビリオンの他、日本の企業のパビリオン、三菱未来館、三井グループ館、松下館、ガスパビリオン、富士グループ・パビリオン、せんい館、古河パビリオン、タカラ・ビューティリオン(一番最初に入ったので印象に残っている)とたくさんある。高校の一年先輩の嘉門達夫さんは大阪万博でたくさん楽しい思い出を作られたようだが、福居も家族と一緒にしか行かなかったが楽しい思い出はたくさん残した。そんなことを考えながら今晩久しぶりにすき焼きをするために具材を近くのスーパーで購入して帰ろうとしていると、M29800星雲からやって来た宇宙人が福居に声を掛けた。
「アンタハバンパクイカンカッタヤロ。ナンデヤノン」
「お金がないのが一番の理由ですね。それにああいう催しはやっぱり家族でわいわい行くのがいいんだと思います。ぼくも小学校4年から5年生の頃だったので、家族と何回か行きました。月の石を見るために2時間並んだのはよく覚えています。ソ連館も同じくらい並んだかな。三菱と三井のパビリオンが楽しかったのは覚えています。でも何と言っても記憶に残っているのは太陽の塔です。両親もそう思ったみたいで太陽の塔には2回行きました。今回の万博に行かなかった人があれこれ言う権利はないかもしれませんが、太陽の塔のようなシンボルがあったらもっとたくさんのお客さんが来られたような気がします」
「エッフェルトウモパリバンパクノトキニデキタンヤッタネ。トコロデアメリカカンノハナシガデタカラ、アメリカノクラシックオンガクハナニガエエノン」
「一番有名なのはガーシュインのラプソディ・イン・ブルーでしょう。それからグローフェのグランド・キャニオンでしょうか」
「ヤッパリソウナルンヤネ。ディーリアスガ「アパラチア」「フロリダ」トイウアメリカノチメイノキョクヲノコシトルケド、アンタスキナンカ」
「ええ、「アパラチア」と「フロリダ」はどちらも好きですよ。「アパラチア」はバルビローリ指揮ハレ管弦楽団、「フロリダ」はビーチャム指揮ロイヤル・フィルの名演があります。3ヶ月に一度は聞きたくなる素晴らしい演奏ですよ。でもディーリアスはイギリスの作曲家です」
「ホカニナイカ」
「スーザの行進曲やアンダーソンの曲がありますがあまり好きになれません」
「ソレハアンタガアンダーソンノシンコペイテッド・クロックヲハッピョウカイデウマクエンソウデケンカッタカラヤロ」
「おっしゃる通りです。他にはバーンスタインはいろいろ残していますが、クラシック音楽の作曲家ではないと思います。むしろミュージカルの作曲家という感じです。フォスターもたくさんのフォークソングを作曲したという感じです。コープランドやバーバーはクラシックの作曲家と言えますがディーリアスのような親しみやすい曲を作曲してません」
「アメリカハタミンゾクコッカデ、クラシックガスキナヒトハスクナイノカモシレンカラ、ホカノジャンルノキョクヲサッキョクスルンヤロネ」