心に沁みる生演奏(シューベルト さすらい人幻想曲)
今から47年ほど前、私は現役で関関同立のどこにも合格できず浪人生活を送っていました。3人兄弟で父親が国鉄職員だったため、両親は働きながらの宅浪なら認めるということで郵便配達のアルバイトをしながら浪人することになりました。浪人になってすぐにクラシック音楽を聞く喜びを知ったため(4月2日にFM大阪で放送されたシャルル・ミュンシュ指揮パリ管弦楽団のブラームス交響曲第1番を聞き、クラシック音楽の素晴らしさを初めて知りました)、10月までにはいろいろなクラシック音楽を聞くことができました。NHKFMのクラシック音楽の番組(私は、午前8時、午前9時、午後1時から始まるアナログレコードを掛ける番組を聞き、夜のライヴはほとんど聞きませんでした)とFM大阪のクラシックの番組(火曜日午後9時、水曜日午後9時(ライヴ)、土曜日午前7時から始まるを聞きました。月曜日午前0時にもクラシック音楽の番組があったのですが、浪人になったのを機に深夜族はやめていました)があったのですが、クラシックの名曲をたくさん耳にすることができました。郵便局でバイトをしているとはいえ、家にあるステレオはシャープの白馬という1960年代に購入したレコードの回転が怪しいものでしたから、レコードを購入することはあまりなく、FM放送をstudio1980でカセットテープにモノラル録音録音したものの中から気に入ったものを何度も聞いていました。
気に入ったものの中には、先程述べたミュンシュのブラームス交響曲第1番の他、セル指揮クリーヴランド管弦楽団のシューマン交響曲第3番「ライン」、セル指揮クリーヴランド管弦楽団のドヴォルザーク交響曲第8番、クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団のチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」、アバド指揮ロンドン交響楽団のモーツァルト交響曲第41番「ジュピター」などの交響曲の他、シャフラン他のシューベルトのアルペジョーネ・ソナタ、ブレンデルとクリーヴランド弦楽四重奏団員他のシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」そしてシューベルトのピアノ曲「さすらい人幻想曲」がありました。「さすらい人幻想曲」はFM大阪のライヴ音源で他はレコードでしたが、「さすらい人幻想曲」はブレンデルの演奏が素晴らしく、演奏が難しい曲をYAMAHAのピアノで軽々と演奏するのに最初は驚き、何度も聞くうちにブレンデルはテクニックだけでなく叙情的な演奏もすばらしいと思うようになりました。特に歌曲「さすらい人」のメロディが弾かれるところ(6:22以降)は心に沁みて聞き入ったものでした。
浪人期間が長くなり他に手段がない私は結構FM放送のエアチェックをしましたが、大学に入って昼間のクラシック番組が聞かれなくなり小金が出来た私はレコードを購入するようになり、FM放送を録音することがなくなったのですが、上記の名盤の他、ブレンデルの日本のどこかの演奏会場でYAMAHAのピアノでの「さすらい人幻想曲」の演奏は機会があれば何度でも聴いてみたい気がします。そんなことを思いながら、先日YOU
TUBEの演奏を検索しているとブレンデルがシューベルトの「さすらい人幻想曲」を無人の会場で熱演するを見つけることができました。当時の私の心境になって演奏を聞くのは難しいと思われますが、ここに挙げた演奏を一度聞いてみたいと思われる方は是非次に上げるリンクをクリックしてみてください。