プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 91」
福居の母親は摂津市内の老健施設に入所していて、福居は毎週土曜日にはお見舞いに行っている。いつもなら自宅から自転車でいくのだが、その日は雨が降っていたので阪急電車を利用して老健施設まで行くことにした。阪急電車を利用するが阪急電車に乗っているのは20分だけで自宅から富田駅まで徒歩で20分余り、正雀駅から老健施設まで30分ほど歩かなければならなかった。福居が正雀駅を出て老健施設の方へ歩いているとM29800星雲からやって来た宇宙人が福居に声を掛けた。
「オカアサンノグアイハドウナノ」
「ああ、谷さん、心配してくださるのですね。老健施設に入所したのですが、血尿が出たので昨日念のためかかりつけの病院まで介護タクシーで行って来たのです。特に問題はないようでした。ですが年明けにもう一度受診して紹介状を書いてもらって泌尿器科受診は必要です。母親は1月10日までは老健施設に引き続き入所してクラブなどを楽しむと言っています」
「ソウナンヤネ。10ガツ27ニチニシュジュツヲウケテダイガクビョウイントカカリツケビョウインニニュウインシテ、ガイライジュシンノタメニイチドタイイン。タイインチュウハアンタガセワヲシタンヤロ」
「一回だけ訪問看護師が来てくれましたが、残りの3日は何かあればぼくがすべて対応する予定でした。でもそれほど忙しくありませんでした。そうして11月20日から老健施設に入所したのですが、先週末あたりから血尿が出たと母親が訴えるようになりました」
「ソレデサクジツカイゴタクシーデカカリツケノビョウインニツレテイッテジュシンシタンヤネ。デモタイシタコトガナクテヨカッタネ。12ガツ7ニチノLPレコードコンサートヲカイサイシテソノアトハドウナルノ」
「正月に母親が施設に入所しているのでどこにでも行けるのですが、お金がないので遠出は無理です。でもライカを持ってどこか行きたい気持ちはあります。朝のニュースで京都の下鴨神社近くの紅葉は遅いからまだ綺麗と言っていたので、行こうかなと思っています」
「ニシガワヒロバノチカクノオベントウヤノオバサンカラ、ドコカコウヨウミニイカハッタカトイワレテ、コマッタンヤロ」
「そうですね、ぼくは正直だから、母親が手術したので行けなかったのですと言いました。そう言ったら、おばさんマズイことを訊いてしまったという顔をしていました」
「ヨウヤクハハオヤガオチツイタノデ、コウヨウガリニイッテキマシタトイッタラエエントチャウ」
「そうですね、そうすればおばさんの気持ちも落ち着くでしょうね」
「トコロデ、アンタショパンノマズルカサクヒン7-1ヲナラットルヤロ。ショパンノメイキョクヲオシエテクレル」
「ええ、前々回のレッスンから習っていますが、今まで、エチュード「別れの曲」やノクターン作品9-2のクラリネット用編曲の楽譜を見たことがあったのですが、マズルカ作品7-1ははじめてでした。それで頑張って吹いてみたのですが、なんと通して吹けたのでした」
「ホンマニ、フケタンカ」
「もちろん超低速ですし、前回のレッスンでは先生から、リズムが全然できていないと言われました。発表会で演奏する曲の練習が始まるまでこれ以外の曲も習いたいですしもっとこの曲が上手く演奏できるよう練習したいと言うのがあってどちらにしようか迷っています。ラフマニノフの「ヴォカリーズ」のレッスンも受けたいのです」
「ホンデホカノショパンノメイキョクハナニガアルノン」
「長い曲がない前奏曲集、練習曲集、夜想曲集で名曲をと言われるとどれにしようかと迷います。やはり夜想曲は作品9-2、練習曲は「別れの曲」、前奏曲は「雨だれ」でしょうか。長い曲だと英雄ポロネーズ、バラード全曲、スケルツォ第2番ですね。そしてマズルカですが・・・」
「ドレガエエノカナ」
「作品7-1は間違いなく名曲です。他にもいくつかあるのですが、整理できていません。ルビンシュタインとカペルのマズルカ集のCDを何度か聞いているのですが、表題もないですし推薦曲を提示しにくいのです。51曲全部聞いてもそれほど時間はかかりませんから全曲聞くのをおすすめします」
「ソウヤンネ。ポロネーズヲゼンブキケトイワレルトシンドイケドマズルカハソレホドオモクナイモンネ。アンタガイウトオリニマズルカヲゼンキョクナンベンモキイテミルワ」