プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 93」

福居は高槻市に転居してから40年近く通院している歯科医院での治療を終えて帰宅するところだった。六叉路の信号で青に変わるのを待っているとM29800星雲からやって来た宇宙人が福居に声を掛けた。
「マダムシバチリョウヤッテンノン」
「ぼくは浪人時代から就職してしばらくするまで8年程歯医者に行かずにセイロガンで我慢していました。それで就職1年目に半年かかって5本の歯を治療したのです。それに懲りて歯をしっかり磨くようになりました。毎回5分間は磨いています。お陰さまで、治療の後はたくさんあるのですが、何とかやっています」
「ホンデムシバハナクナッタン」
「半年から1年に一回くらいになりました。私の場合、🍬が大好きでしっかもストレスが多かったので黄金糖や純露やカンロ飴をよく嚙み砕いていました。きっとそれが良くなかったのでしょう。もちろんソフトキャンディも大好きです」
「ソウナンヤ、セメントヤクラウンヤブリッジガタクサンアルノネ」
「実は今日歯医者にかかったのはセメントが取れてしまったからなんです」
「セメントユウタラダイブマエノチリョウトチャウノン」
「確か高校2年生の時だったと思います。そうだとすると50年近く埋まっていたわけです」
「ソンナニナガモチシタンヤッタラネウチアッタネ」
「そうかもしれません。それが取れてしまったので、ブリッジを仕直すのかなと思っていたら、親知らずを治療した後だからそれはしないと言われて、鋭利になっているところを削ってセメントで埋めてもらいました。一日で終わったのでホッとしました」
「デモアメヲカミクダイテイタラ、イツマデタッテモムシバニナルトオモウケドナァ」
「そうなんです。もうこれ以上酷くなったら、ブリッジでは対応できなくなると言われて、それで一時🍬ちゃんをやめたんですが、他のお菓子では高くつくのでやめました。ケーキやチョコレートも虫歯になる可能性は同じくらいありますし」
「デモタベタアトハミガキシタラエエントチャウノカナ。コマメニハミガキヲスレバエエントチャウノン」
「ぼくが歯磨きをするのは朝と夜だけです。🍬を食べるのは朝も昼も夜もありです。舐める度に歯を磨くのは難しいです。もともと痛い目に遭わないと改心しないというぼくの性格が悪いんだと思います」
「カラダニワルイシコウヒンニフケルノヤバクチニノメリコムノントオナジナンヤロネ。マアアンタノジンセイナンヤカラスキニシタラエエントチャウ」
「そんな、見捨てないでください」
「ミステヘンカラ、ネンマツニジックリキクノガエエキョクヲオシエテ」
「わかりました。多分、谷さんは歌劇や宗教曲やピアノ・ソナタ全集のことを言われているのだと思います。歌劇や宗教曲は聞きたい曲は一通り聞いて自分の好き嫌いがわかりました。やはりロッシーニ「セビリアの理髪師」、ヴェルディ「トロヴァトーレ」「椿姫」、プッチーニ「ラ・ボエーム」、モーツアルト「フィガロの結婚」「魔笛」、ワーグナー「タンホイザー」「ローエングリン」「ニーベルングの指輪」以外はなかなか興味が持てないのです。宗教曲もバッハのマタイ受難曲とカンタータ第140番と第147番くらいしか興味が持てません。ということで谷さんにはそれらをお楽しみいただくか、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集をケンプかグルダか、モーツァルトのピアノ・ソナタ全集をヘブラーで聞いてみられてはということしか言えません」
「ソンナケイッテモロタラジュウブンナノ。ライネンモヨロシクオネガイシマス」
「こちらこそお願いします」