プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編」
福居は週に4回実家で母親と一緒に夕食を食べるが、最近は一緒に炊き込みご飯を食べることが多くなった。年末に父親の親戚からお餅と新米を送って来たのでそのお米を使って炊き込みご飯を作るのだが、母親はその炊き込みご飯を食べて、お米がおいしいからどんな具材でも美味しいねと言っている。それで、定番のとり釜飯の素の他にも、地鶏、タケノコ、バター入り鮭、あごだし五目、ホタテ、松茸、たこ、かに、うに、さば、はまぐり、あゆなどにも挑戦したいと福居は思った。それで高槻阪急地下の炊き込みご飯のコーナーでいろいろ手に取ってみたが、高級食材のうなぎ、鯛、かき、ふぐ、のどぐろ、あわびは手が出ないなと思った。バター入り鮭、ホタテ、かにのかやくご飯の素を買おうとレジの列に並ぶと後ろからM29800星雲からやって来た宇宙人の声がした。宇宙人もレジかごに左手を通していた。宇宙人はなぜか時折右手首のスナップを効かせながら話した。
「アンタモタキコミゴハンガスキヤネンネ。ウチモソウナンヨ。フフフ。キョウノユウゴハンタノシミ」
「ああ、谷さんでしたか。でもその話し方は変なのでやめてください」
「ソウカ、ホタラ、イツモノヨウニハナスワ。トコロデアンタハドノタケノコゴハンガスキヤノ」
「たけのこご飯は好物ですが、特に柔かい先っちょばかりのがベストですね。あごだしはお出汁がおいしいので具材は何でもオーケーという感じですね。思うんですが、鮭の大きな塊とか、ぼっかけの具材とか、豚の生姜焼きなんかの炊き込みご飯があったらすぐに買うと思うんですがそういうのはないようです」
「サイキンハオイシイオダシガハツバイサレテイルカラ、グザイヲベツニコウテイレタラエエントチャウ」
「それもそうですね。あごだし醤油も発売されているからそれを使ってみようかな」
「ソウソウ、ソレニチクワヤアツアゲヤコンニャクヤゴボテンヤニヌキ(ユデタマゴ)ヤヤキトリヤステーキヲイレテリッチナキブンデタベルニガエエントチャウ」
「うちの炊飯器にはそんなに入らないですよ。でもいろいろな具材を入れてみます」
「トコロデ2026ネンノ1ガツモオワッテシモウタケド、コウインヤノゴトシッテホンマヤネ」
「特に大人になると時がたつのが早くなると言います。ぼくの場合は矢より3倍くらい早いです。谷さんは時の経過は気にならないのですか」
M29800星雲からやって来た宇宙人はつまらない質問に愛想をつかしたのか、レジが終わったのにまたレジかごに左手を通して、右手のスナップを効かせて言った。
「アンタハオデンモスキナンヤロ。コレカラオッチャントグザイヲカイニイコ。フフフ」
「いいえ、これ以上荷物を増やしたくありません」
「ホタラ、ワシモコレイジョウココニオランケド。サイゴニオススメノイッキョクダケオシエテ」
「お勧めの一曲ですか。ぼくはラフマニノフのピアノ協奏曲第3番が好きなのですが、ベストはアシュケナージの若い頃のフィストゥラーリ指揮ロンドン交響楽団との共演だと思います。後にプレヴィンやハイティンクの指揮で録音していますが、ぼくは若い頃の溌溂とした演奏に惹かれます。第2番はどちらかというと暗いイメージですが、第3番は翳りはありますが明日への希望が持てるという感じです。ですから落ち込んでいる時に特効薬になると思いますよ」
M29800星雲からやって来た宇宙人は今度は右手首のスナップを効かせるだけで言った。
「アラ、ソウナノネ、ジャア、ワシモキイテミルワネ。フフフ」