プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 室内楽は楽器の魅力とハーモニーが味わえる編」
わしは船場から勧められてクラシックを聴き始めてしばらくした時、船場から、にいさん、クラシックで一番ええのは何やと思いますと尋ねられた。わしは、そら、フルオーケストラで奏でられるいろんな楽器の音色とかソリストが技巧を駆使して愛器から妙なる調べを引き出すところとちゃうんかと答えたんやが、船場は、右手の人差し指を立てて左右に振りながら、にいさん、そうやないんです。音楽の基本は映画「未完成交響楽」でシューベルトが言っているように(ホンマにそう言ったかはわかりませんが)、メロディー、リズム、ハーモニーなんです。心を時めかせる美しいメロディーを奏でること、正確なリズム、時にはその曲に合った乗りのいいリズムにして演奏すること、そうして楽器の特性を活かして(声楽ならパートの音域や声音を活かして)音を重ねて演奏するのがいいのですが、オーケストラと対峙してずっと聞くのは疲れるので、ずっと音楽を聞いていたいのなら私は室内楽曲がちょうどいいと思うんです。正直言って、ベートーヴェンの交響曲を耳を澄ませて全曲聴いたらへとへとに疲れますが、モーツァルト、シューベルト、ブラームスの室内楽なら20曲聴いても疲れませんちゅーとった。それにオーケストラで演奏される曲はBGMにするのは難しいので、勉強や事務作業のお供にいいのは室内楽曲みたいな小編成の曲がええんですとも言うとった。わしはヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタ、フルート・ソナタ、クラリネット・ソナタが室内楽曲で、ピアノ・ソナタ、ピアノ独奏、オルガン独奏、ヴァイオリン独奏、チェロ独奏が器楽曲になるというのがようわからんし、それもいっしょに船場に訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかーっ。はいはい、では最初にヴァイオリン・ソナタはヴァイオリンの音色を楽しむ楽曲なのになんで室内楽曲なのかについてお答えしましょう。それは一緒に演奏するピアノとのハーモニーを楽しむ楽曲だからなんです。モーツァルトのヴァイオリン・ソナタはピアノの方が主役ということがよく言われますし、日本ではヴァイオリン・ソナタと言われますが、外国ではヴァイオリンとピアノのためのソナタとなっています。活字で長ったらしくなってしまうからというのが本当のところかもしれません。それと室内楽曲に楽器の独奏を含めるとカテゴリーに入る曲が多くなってしまいます。そういうことで、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ、ショパンのピアノ独奏曲、バッハのヴァイオリンとチェロの無伴奏曲、バッハのオルガン曲などを器楽曲のカテゴリーに入れたのだと思います。なるほどなあ、それはわかったからついでに、室内楽曲の名曲を言ったって。うーん、あまりに多いので困るのですが、そうだ先程言いましたハーモニーが美しい曲を選んで、ピアノ三重奏曲と弦楽四重奏曲、弦楽五重奏曲以外の曲をピックアップしましょう。まずはモーツァルトです。何と言ってもわたしの大好きな、クラリネット五重奏曲をまずあげたいと思います。五重奏曲と言えば、ピアノと管楽器のための五重奏曲もいいですね。管楽器の八重奏曲 セレナード第12番「ナハトムジーク」はモーツァルトの室内楽曲の最高峰だと私は思います。フルート四重奏曲4曲もオーボエ四重奏曲もいいと思います。お前は「ケーゲルシュタット・トリオ」も好きなんやろ。ええ、もちろん。ベートーヴェンはどうや。やはり私が好きな七重奏曲をまずあげたいですね。それからヴァイオリン・ソナタ第5番「春」と第9番「クロイツェル」、チェロ・ソナタ第1番、第2番、第3番、ピアノと管楽器の五重奏曲も是非聴いていただきたい曲です。シャーベルトはようさんあるやろ。いいえ、弦楽四重奏曲を入れないのでそんなにないです。まずシューベルトから行きましょう。シューベルトは、八重奏曲、ピアノ五重奏曲「ます」、アルペジョーネ・ソナタでしょうか。ブラームスは、弦楽六重奏曲第1番、クラリネット五重奏曲、チェロ・ソナタ第1番、第2番、ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」、第2番、第3番、クラリネット・ソナタ第1番、第2番ですね。それからメンデルスゾーンの八重奏曲、フランクのヴァイオリン・ソナタも是非聴いていただきたいです。ピアノ三重奏曲、弦楽四重奏曲が多くてここにあげられへんというのはわかるけど、弦楽五重奏曲はモーツァルトの6曲とシューベルトのだけやろ。そうですね、特にモーツァルトの第3番と第4番、シューベルトの弦楽五重奏曲は聞きごたえがあります。なおモーツァルトは弦楽四重奏団プラスヴィオラ奏者、シューベルトは弦楽四重奏団プラスチェロ奏者です。