プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 ディケンズもアラビアンナイトが好きやった編」
わしが幼少の頃は今みたいにアニメのキャラクターが子供に大人気ということはなかったから、父母や祖父母が日本か世界の童話のキャラクターの中からおもろそうな登場人物を本屋とかで見つけて来て子供にその人物にまつわる童話の本を読んだり、おもろい話を口頭で表情豊かに子供に話して聞かせて喜ばせたもんやった。幼少の頃のわしは世界のことまで手が回らんかったから、親が聞かしてくれるカチカチ山や浦島太郎やさるかに合戦や舌切り雀や桃太郎を黙って聞くだけで、シンドバードやアラジンやアリババなんかを話してくれとリクエストをすることはなかった。それでも小学生低学年の頃までにはアラビアンナイトという物語があって、シンドバード、アラジン、アリババがその中の話というのは知っていたと思う。それはスター千一夜というテレビ番組があったのが役立ったのかもしれん。他には遊星少年パピイのアジャババや東京コミックショーの「レッドスネーク、カモン」も何となくイスラームの世界を髣髴させた気がする。アラビアンナイトの話の中で特によく知られているのは、『アラジンと魔法のランプ』でアニメと実写いずれの映画も大ヒットした。わしもDVDを買ったくらいやから相当なもんやった。アラビアンナイトの魅力はイフリート(鬼神)が人の願いを何でも叶えてくれること(『アラジンと魔法のランプ』)やどこにでもいるような人が知力で困難に立ち向かい道を切り開きたくさんの財宝を手にすること(『シンドバードの七つの海の航海』、『アリババと四十人の盗賊』)、王子と王女の純粋な恋愛からエロティシズムの極地とも言える男女の愛など、シャハラザード(シェエラザード)がシャハリヤール(シャリアール)王に千一夜続けて話す物語の内容がバラエティーに富んでいて飽きさせないことや。物語がしょうもなかったら王の怒りを買って一巻の終わりになるからシャハラザードは毎晩一所懸命趣向を凝らしておもろい話を王に聞かせたのやと思う。千一夜の間に二人の間に3人の子供が生まれたから王がシャハラザードを途中で殺してしまうことはなかったやろけど緊張状態がずっと続いて物語を紡ぎ続けたのやと思う。もしかしたら途中で二人の間に信頼関係が出来て、王は毎晩シャハラザードがおもろい話をするのを楽しんどったのかも知らん。船場は2年以上かかってこの長大な物語を岩波文庫で読んだみたいやが、あいつ、アラビアンナイトはディケンズも読んだんですよ。にいさん、知ってはりましたかちゅーとった。わしはそのあたりのことを知らんから、船場に訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかーっ。はいはい、にいさん、ディケンズがアラビアンナイトをどのように楽しんだか、お知りになりたいのですね。そうや。それはディケンズが幼い頃で豊かな生活をしていた頃のことでした。ディケンズは幼少の頃は家にたくさんの本があったのでその中にあったアラビアンナイトも楽しんだようです。そしたらわしがカチカチ山を聞かせてもらったような感じかな。いえ、そうではなくで自分でページをめくって読んだのだと思います。はしょった話を人から聞くだけでは創作活動の素材にはならないと思います。でアラビアンナイトを読んでそれが物語の素材になったんかいな。ディケンズは作家として活動するようになって2つその影響があると思われる作品を書いています。『クリスマス・キャロル』はわかるが、もうひとつは何やろか。あまり知られていない作品ですが、クリスマスの頃に楽しんでもらおうと書かれた『炉端のこおろぎ』というのがあり、この作品には妖精が出て来て大きな役割を果たします。その他にもディケンズの作品には神秘的な場面、人物、ものが登場しますが、アラビアンナイトを読んで消化して作品に取り込んだと思われます。ということはアラビアンナイトを読むと誰でもそのエッセンスみたいなものが脳に取り込まれて面白い作品が書きたくなるということやな。必ずそうなるとは言えませんが、大きな刺激になって作品の中にさりげなく神秘的なものを添えることができるようになると思います。ほたら、船場、お前もそんなことができるようになったんか。ええ、ちょっとは。こういう積み重ねが実を結ぶと信じて、いろんな小説を読んでいます。『クリスマス・キャロル』や『炉端のこおろぎ』のような作品は無理でもそんな幻想的な小説も書いてみたいと思っています。わし、幽霊さんはこわいからやめといてな。