プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 116」

福居は4年前に37年余り続けた仕事をやめたが、規則正しい生活を続けたいと思って毎日午前5~6時の間に起床して週に2~4日は大学図書館に行くことにしている。大学図書館に行く目的は懸賞小説に応募する原稿を書くことと「古典」と呼ばれる本の名訳を読んで感想文を書くことで、今読んでいるヘロドトスの『歴史』(青木巌訳)を読み終えたらセルバンテスの『ドン・キホーテ』(牛島信明訳)を読もうと思っている。
<モンテーニュの『エセー』をずっと前に買ったけど歯が立たなくてそのままになっている。チャールズ・ラムの『エリア』も風光書房で購入して15年以上になるが、まだ内容を見たことがない。今までは歯が立たない本は中断してそれ以上読まなかったが、トゥキュディデス著『戦史』をわからないながらも最後まで読んで今まで知らなかったことを少し知ることができた気がしたから、もしかしたら古典の場合はすべてを理解できなくても少しでも何か端緒になるものが掴めたらそれで良いのじゃないかと思うようになった。だから今年中に『エセー』と『エリア』を理解できなくても最後まで読み終えたいと思っている。大学図書館へ行くと本がたくさん読めるし、行き帰りの市バスや阪急電車の中でも結構読書が出来る。だからなるべく大学図書館に行きたいが、真夏はそういう気持ちもなくなる>
福居は阪急富田駅で下車すると真っ昼間のような空を仰いだ。
<もう5時になるのに涼しくなる気配がない。日光が後ろから照らして地面に焼き付けているように影が真っ黒だ。今のところ梅雨明け以降猛暑日はなくて、33度どまりだが、体感では36度くらいに感じる。昨年は駅までの行き来が暑すぎるので日傘を買おうか迷ったが、今年はその迷いが命取りになるような気がする>
福居がそんなことを考えながら、農協の時計兼温度計を見ると20℃となっていた。福居は、まさかと思ったので目をこすってからもう一度時計兼温度計を見ると31℃となっていた。
「20ドノヒョウジデスコシハスズンダカナ」
「あっ、もしかしたら、谷さんが・・・」
「ソウナノヨ、アンタガヒソウナカオヲシテアルイトッタカラ、オンドケイヲイジッテミタノヨ」
「お気遣いいただきありがとうございます。谷さんのお陰で少し涼しくなった気がします」
「ソレハヨカッタ。デモワシオモウンヤケド、ナンデマタウチカラ20フンイジョウモカカルトコロニアンタノイエガアルノ」
「たまたまそういう場所にいい家があったから購入したというだけですが、駅まで5分というところに住んでいたら、運動不足になっていたかもしれません。私は甘いものが大好きなので、糖尿病になっていたかもしれません。それからずぼらなわたしのためには家は駅から遠い方がいいのかもしれません」
「デモアンタガイツモイキタエダエニウチニムカウノヲミテイルトナントカナランノカイナトオモウワ」
「そうですか、周りの人を不快にさせているのだったら、楽しいことを考えながら歩くことにします」
「タノシイコトッテナンヤ」
「高槻市のスクラム商品券で母親と一緒に食べるケーキをドエルで買うとかですかね。LPレコードコンサートに大学時代の恩師が来られたら、毎回楽しみになるのでしょうが・・・。それからディケンズ・フェロウシップの春季総会にS先生やU先生が来られたら・・・」
「モットミヂカデ、オオキナヨロコビニナルモノハナイノカナ。ソンナチッコイガンボウデヨウガマンシテルトオモウワ」
「でも夢が叶えられたら、急いで次の夢を探さないといけません。実現が難しい夢をいくつか持っているとあたふたしなくていいと思います」
「ソンデエエンヤッタラ、ワシハソレイジョウナンモイワンヨ」