プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 118」
福居は午後2時過ぎの炎天下の中、母親の衣服をクリーニングしてもらうために自宅から10分程のところにあるクリーニング店に向っていた。愛知、静岡、岐阜、三重ほどの気温の上昇はなかったが、北摂地域でも午後2時だと38度近くはあった。福居は辺りに建物がない中、日傘もささずに歩いていた。福居が喘ぎながら歩いていると後ろからやって来た人が2人用日傘のもう一つの持ち手を持つようにと言った。それはM29800星雲からやって来た宇宙人だった。
「コウイウトキハタノシイコトヲシテアツサヲヤリスゴスノガスゴクイイヤリカタヤトオモウネン」
「ああ、谷さん。谷さんはこういう熱帯地方のような天気でも平気なんですか」
「ソラワシハウチュウジンヤカラ、200ドデモナントモナインヤケド、ヤッパリソノトチノヤリカタニアワセタホウガモンダイガオコランデエエトオモウンヨ」
「そうなんですね、ところでこの傘はどこかで買われたのですか」
「ズットムカシニカイスイヨクジョウデウッテイタノヨ。ムカシハダンジョノナカヲトリモツヨウナスゴクイイシナモノガカイスイヨクジョウデウッテイタノヨ。イマハナイケドネ」
「最近はユーモラスな品物は受けないようです。効果がすぐに出ないと駄目みたいです。だからファン付きのベスト、小型で風力のある扇風機、首筋を直接冷やす保冷剤首巻なんかの人気がありコンビニでは冷凍したペットボトルが人気です。でも2人用の傘も持ち手は一つのはずだけど」
「マアソレガイッパンテキヤケド、コノダミーモチテツキノフタリヨウヒガサモスゴクエエトオモウンヨ」
「そうですか、傘の口径を大きくすれば同じだと思いますが」
「フタツトンガッタトコロトフタツノカサヲガッタイサセタヨウナミタメガスゴクイイノヨ。コトシコノヒガサハヤランカナ」
「そう言えば谷さんのジャケットも変わっていますね」
「アアコレハネジャケットノスミカラスミマデチューブガハイッテイテソコヲホレイザイガジュンカンスルノヨ」
「へえ、ぼくもほしいな」
「デモコレハチューブガイッパイデウデガマガランノヨ。ダカラベストノホウガスゴクニンキガアルンヨ」
「早く地球でも普及してほしいな」
「トコロデキョウオンガクノイズミデリムスキー=コルサコフノシェエラザードガカカットッタケド、マナツハロシアトカフィンランドトカノオンガクガスゴクエエントチャウ」
「そうですね、ベートーヴェンやブラームスはちょっと暑苦しい気がします。爽やかな曲もありますが、ベートーヴェンの「運命」とかブラームスのピアノ協奏曲第1番なんかを夏に聞くのはしんどい気がします」
「ホタラ、チャイコフスキートシベリウスノマナツニキイタラスゴクイイトオモウキョクヲオシエテクレヘン」
「いいですよ、じゃあ、まずチャイコフスキーですが、交響曲第1番「冬の日の幻想」と幻想組曲「テンペスト」がいいと思います。どちらも重厚な音楽ですが、聞き終わるとスッキリした気持ちになります」
「イッカイキイテミルワ。ホンデシベリウスハドウナノカナ」
「すごくいいのは「悲しきワルツ」ですが、それだけでは物足りないので、カレリア組曲とか交響曲第1番もいいと思います。冷房が効いた部屋でバルビローリやコリンズのシベリウスの交響曲第1番や第2番を聞くのは真夏のすごくいい贅沢だと思います」
「ワシモスゴクソウオモウワ」