プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 121」

福居は毎年八月に楽しみにしていることがある。どちらも写真の撮影だが、茨木辯天花火大会と京都五山の送り火である。茨木辯天花火大会は高校生の頃から知っていたが、最近まで撮影したことはなかった。仕事からの帰りにしばらく立ち止まって見上げるくらいだった。淀川の花火大会を30代の頃に一度撮影したことがあったが、撮影場所がなく機材も200ミリ望遠レンズと三脚くらいだったので思うように撮影できなかった。茨木辯天花火大会の撮影をしようと考えたのは10年くらい前からで、見物人が多くて撮影場所が確保できない(有料の観覧場所は花火を見上げるので福居は不適と思っている)淀川花火大会の撮影を諦めてからだった。茨木辯天花火大会もなかなか撮影場所が決まらずコロナ禍もあったので腰を据えて撮影しようと考えたのは昨年からだった。昨年は機材も揃い撮影場所も決まっていたが、家を出ようとすると突然激しい雨が降り出した。昨年は今年以上に天候が変わりやすかった。ライカは頑丈なカメラだと聞くが、精密機械なので豪雨を浴びて故障したら修理代が高くつくと思い昨年は諦めた。そうしてようやく今年の茨木辯天花火大会の日となったが、午後7時30分開始なので福居は午後6時30分に家を出た。福居が撮影場所に着くとかなり多くの人が花火の打ち上げ会場の方を見ていたが、しばらく歩くとM29800星雲からやって来た宇宙人が家族と一緒にそこに来ているのに出会った。奥さんと3人の男の子と来ていたが、前と同様にみんな同じ顔をしていた。
「ヤットキタネ。ワシントコハ5ニンナンデバショヲサガサントイカンカラ、アンタヨリスコシハヤクココニキタンヨ」
「そうですか。でもぼくが花火の撮影でここに来るのは初めてなんですよ。谷さんは何度かここで花火を見られたことがあるんですか」
「ココハミハラシガイイカラネ。ワシライツモ5ニンデクルケド、ワリトオチツイテミラレルカラネ。アンタシャシンヲトルジュンビセントアカンノトチャウン」
「ええ、それは話をしながらでもできます。谷さんのご家族も始まる前に何か準備をされるのですか」
「ウン、アンタホド、ジカンハカカランケド、ワシラノクニデハハナビヲミルトキノサホウガアッテネ、ソノトオリニシナイトオチツイテタノシメンノヨ」
福居はカメラと三脚を繋げてレリーズを取りつけ、三脚の足を伸ばして自分の前に置いた。セッティングが終わって福居がM29800星雲からやって来た宇宙人とその家族の方を見るとみんな花火が打ち上げられる方を背にして立っていた。花火の一発目が上がると観客は花火に釘付けになり他のことは気にならなくなった。それを見計らってかM29800星雲からやって来た宇宙人は家族に合図して同じタイミングで足を開いてその間から花火を見始めた。福居は周りの人が聞き取れないような声でM29800星雲からやって来た宇宙人に話し掛けた。
「谷さんのお国での作法と言うのは花火を股のぞきすることなんですか」
「ソウナンヨ、ワテラトコハミンナナンビャクネンモコウシテキタカラネ。マッスグミルダケデハモノタランノヨ」
「そう言うもんなんですか。でも僕は落ち着いて正面に打ち上がる花火を見るのがいいですね」
「ソウイウケド、アンタノシャシンハイップウカワットルカラヒトノコトハイエンノトチャウン」
「確かにそういうところはありますね。王道は大型三脚にニコンかキャノンのズームが付いた高級カメラを取りつけて撮影のチャンスを待つのが良いのでしょうが、私の場合、ライカのM9とライカの交換レンズは使いますが、三脚は小型でM9をやっと乗せられるくらいです。しばしば雲台が揺れますので思わぬ写真が撮れたりします」
ウンダイガウゴクトオモロイシャシンガトレルンヤッタラミセテクレヘン。ココデハオモロイヤツダケニシテ。エエヤツハ、ランダムシャシンシュウヤライカハスバラシイニケイサイスルンヤロ」
「仰る通りです。では無事撮影出来たら、この小説の末尾にこっそり掲載することにします」
「オモロイヤツヲタクサンノセテミタラエエネン。ワシモヤッテミタイトオモウヒトガデテクルカモシレンヨ」
「じゃあ、面白いのばっかり載せましょう」
「チョットノハナビヤカラチョビッテヨンダラエエントチャウ」