プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 123」

福居は毎年8月は遠出をせずに茨木辯天花火大会と京都五山の送り火だけを楽しみにしていた。夜間の撮影で威力を発揮するライカM9で思う存分写真が撮影できるからだ。機器は申し分ないが、いくつかの問題がある。一番問題なのは天候である。雨だと精密機械を濡らすわけに行かないので撮影は中止となる。次にロケーションであるが、夜間の撮影は三脚を使うので人に迷惑が掛からないようある程度の場所を確保しなければならない。福居は突然他の人のカメラの前に立ったりはしないが、その逆はありうることだった。その場合、写真を撮っているんです。前に立たれると写せないんですと言ってご理解をいただくしかない。その人たちも送り火を見るためにやって来たのだから。スマホで撮ってみたが、やはり少しブレが生じるのできちんとした写真を残したいなら三脚を立てて撮影しなければならない。福居は鳥居形の撮影を午後8時20分から始めたが、8時35分頃には鳥居形の左下の灯火が徐々に消え始めた。福居がじっと送り火の方を見ていると後ろから、エエシャシントレタカト声が掛った。後ろを見るとM29800星雲からやって来た宇宙人がニコニコ笑っていた。
「キョネンハアメデトラレンカッタケド、コトシハハレデサツエイデキテヨカッタネ」
「そうですね、去年は今年と同じように午後6時少し前に家を出て阪急桂駅までは晴れていたのですが、嵐山線に乗り換えて5分もすると雲行きが怪しくなり嵐山駅に着くと豪雨でした。しばらく待っていましたが、雨雲レーダーを見ると午後9時過ぎまでは雨雲が抜けないことがわかり帰ることにしました。今日阪急嵐山駅からここまで歩いて1時間ちょっと掛りました。仮に午後8時に雨が止んでフサイン・ボルトのように走って目的地に行ってもよい写真が撮れないと思いました」
「アラシヤマノヨルノホコウシャテンゴクヲフサイン・ボルトミタイニハシットルヒトガオッタラ、ミンナコシヲヌカスヤロネ」
「昨年はそんな天候ばかりで茨木辯天花火大会の写真も撮られませんでした。でも今年は茨木辯天花火大会も楽しく写真が撮れました。多分、さっき写した鳥居形の写真もある程度撮れていると思います」
「ソレハヨカッタ。デ、ホカニハトランノカ」
「花火大会は幼い時に楽しんだのが水都祭でこれは小学生の頃まで木造官舎の中央を貫く坂道の真ん中あたりで見ました。その印象が強く残っているので、ぼくは花火は遠くから見るのが好きなのです。30才の頃から水都祭に代わる淀川花火大会が始まりましたが、なかなかいい撮影場所が見つからず断念しました。琵琶湖花火大会は帰りが大変みたいということで今まで行ったことがありません。枚方の花火大会に行ってみたい気はしますが、今年は茨木辯天花火大会でよい写真が撮れたのでもうこれで十分と言う感じです」
「ホタラヤケイトカ、オクリビミタイナンモトランノカ」
「茨木辯天花火大会や京都五山の送り火がよいのはお金がかからないからです。これからもそういう被写体は探し続けるつもりです」
「タトエバギョウジガナイトキニヨルノマチヲトルトイウノハドウナンヤ」
「ライトアップされた名所には興味がないですが、ネオンの明かりは色とりどりで宝石みたいな輝きがあると思います。でもそういうものを撮影したいと夜の街をうろうろするのはとても危険だと思うのです。それに無闇に撮影するとクレームがあるかもしれません。やはり花火大会や行事を撮影するのが無難だと思います」
「ワカッタ、ホタラヒサシブリニクラシックノメイバンオシエテクレルカ」
「最近、日経新聞にラインスドルフ指揮のプッチーニの歌劇「トゥーランドット」のCDについてのコメントが載っていました。ぼくは何度かEMI盤を買おうとしましたがやめました。でもトゥーランドット姫が二ルソン、カリフがビョルリングで登場するRCAのCDは買って聴いてみたい気がします。歌劇「トゥーランドット」の原作はアラビアンナイトの『金剛王子の華麗な物語』で未完のオペラですがとても興味があるのです」
「ワシモオモシロソウヤトオモウワ。イッペンキイテミルワ」